クラシック戦線では及ばぬ第二グループにとっての出直しといった位置づけになるラジオNIKKEI賞だが、今年は別路線からが主力を占める。その最たるが堀厩舎の2頭ということになろう。
特に、スケールが違うといったこれまでの2戦から、グレイトオーサーには相応のランクづけが必須。
軽く吹かした程度のデビュー勝ちから高速決着での逃げ切りと現時点でも幅が広い。何せ、重心が低くて全体にパワーを感じさせながら、一旦ギアアップとなればシャープな捌きに。
この中間にも余すことなくそれを見せつけているし、流しただけといったイメージの最終追いでは1F11.9秒。まだまだ伸びる器なのは間違いない。
逆に、サクラトゥジュールには疑いを挟みたくなる。
確かに、マイルでの持ちタイム1.31.7秒は凄い。が、前向き過ぎる気性がネック。現に、1週前の5F65.1秒にしても、リズム良く進めてというより、馬の気に任せた結果の好時計だけに、ローカルでは道中での消耗が多くなりそう。
4月以来となる関西馬ルリアンも俎上に載せるべき。
質の高かった昨7月の新馬戦2着だけでも好素材と太鼓判を捺せる上に、骨折から立ち直っての連勝と波に乗っている。しかも、前走は着差以上の強さで平凡な時計を気に病む必要はないし、今回は栗東入り直後から長目追いを繰り返せたように、春からのパワーアップさえ。
ただ、大飛びで距離延びてこそといったタイプだけに小回り克服が鍵になりそう。
栗東組ではむしろベレヌスを上位に。
初芝だった前走が福島で、後続を終始寄せつけぬ巧みな逃げでの完勝と適性を余すことなく示したのだ。ダートでの初勝利が3角先頭といった形だったから、同型を捌くに足る順応性もある。
当コースで初勝利といった経緯を持つのはパラスアテナも同様。
昇級して初戦の府中では長い直線と坂を見事に克服と奥行きさえアピールできたのだ。その上がり33.3秒が示すように抜群の切れを誇っていたし、小回りで早目に仕掛けてももうひと伸びが叶うのは4月・福島が示す通り。その2.02.7秒は、馬場を考慮すれば古馬2勝クラスを凌ぐのではという優秀さ。渋り気味の馬場でもバランスを保てているのは、類稀なバネをそなえているゆえ。
それは、古馬を4馬身追走する態勢から楽なまま併入に持ち込んだ追い切りに表れている。52キロのハンデを含んでの◎。
軽ハンデの牝馬、アールクインダムを侮ってはならぬ。
関東オークスでの8着は大目に見て良い。久々でのダート、ハナを切る形では二束三文だからだ。しかし、前回時からDWでの追い切りと中身が伴っているし、トモに力が籠るように。つまり、時計を要する馬場での急浮上が目に浮かぶし、自己完結した札幌2歳Sだけ取り上げて1800m不向きと決めつけることはできないのだ。年明けをイメージしての待機策なら爆発力を秘めている。
取捨微妙になるのがコンドゥクシオン。
青葉賞では真っ正直なレース運びが祟って失速。手応えと裏腹だったことから、現状では距離に限界があると見改めるしかないということで、条件替りに望みを繋げるわけ。現に、札幌2歳Sでは致命的な不利を蒙っての0.8秒差があるし、芝2000mの持ち時計にもポテンシャルの高さが。
ただ、前走が目一杯の仕上げだった分、今回は立ち上げが遅かったし、直前などは軽くあしらって良い相手2頭に対して脚色劣勢と重目が残る。少々の割り引きが必要か。
土曜メインは3勝クラスのダート戦・安達太良ステークス。ダートに転じて1、3着のブランクエンドは水を得た魚のよう。
府中マイルでコンスタントに1分37秒台をマークしているのであれば大威張りできるし、前目で捌けるタイプで安定味は抜群。けれども、除外で一旦ピッチを落とした過程が気懸かり。
同じように2週前からのスライドになるエクリリストワールは、それを追い風に。
坂路オンリーながら1週前に52.4秒をマークして一気にシェイプアップされたからだ。田中博厩舎らしく角馬場での豊富な運動量が実を結んだのと見做せるわけ。
また、3月・中山でもうひと押しできなかったのは、上手く収めようとしたゆえに窮屈な内を選択せざるを得なかったから。そこのレースレベルには疑いを挟めぬし、ローカルなら問答無用のレース運びも可能でエンジン全開が目に浮かぶよう。
穴で面白いのがフクサンローズ。
現級入りしての4戦で7着がベストと頭打ちの現状はある。ただ、地力勝負の状況に置かれると分が悪くなるのは下のクラスでも同様であった。逆に、ソツなく運べる条件なら話は別で、実際に福島は2戦2勝。特に、一昨年の1.44.7秒には絶大なる価値があるし、夏場に調子を上げるタイプ。中間、自己ベストに近い51.1秒があるではないか。
1勝クラスでまず取り上げたいのが、日曜・南相馬特別。ビバヴィットーリオに支持が集まるのは分かる。
登録のある日曜メインを見送ってまで武豊騎乗で臨むのだ。無論、テンに素軽い上に容易くはバテぬしぶとさと主導権は握れそう。しかし、先行態勢ながら脚色劣勢、ポリでの5F68.7秒が平凡。稽古で目立たぬのは承知しているが、上昇度といった点で物足りぬ。
対して、ジュピターズライトは叩いた効果覿面。
明らかに短い1400mが稽古代わりでもあった。そもそも、骨折によるブランクからの立て直しが容易くないのは当然で、使いつつと言った目論見があったに違いない。そして、立ち上げの早さに覚醒の予感が漂っているし、ラスト2週で十分な負荷をかけられた。実際、行き出し4Fの直前はシッカリと全身を使ったフォームで鞍上のアクションに呼応できていた。3歳春の輝きを取り戻すのには福島が格好。
長距離戦の開成山特別はカンバラ。
上の世代に混じった前走で収穫を得た。それも3着以下には水を開けていたのだから、巡り合わせの問題だったといこと。年明けの初勝利が示すように、タフな馬場でより個性が光ってくるだけに、上がりの速い府中克服がワンランクアップの証。
実際、バランスが格段に良くなっての復帰戦だった上に、1週前にはウッドでの自己ベスト更新ととどまるところを知らぬ。52キロ同様、強力な同型不在といった点にも恵まれた。
3歳未勝利戦は芝2000mにスポットを当てて、土曜7Rはソードライン。
500キロに近い体ながらトモが甘い分、踏ん張りが利かなかったのが2歳時。逆に、質の高い稽古を消化できて臨んだ前走が+10キロと定石通りに成長。
そこでのハナ差負けは勝ち馬の目標になった分で、手応え通りの反応を見せられた。しかも、十分にケアーを施しての乗り出しで、5F追いを2本消化と手を緩めるシーンなし。一層垢抜けたシルエットに。
日曜7Rの牝馬限定戦はブラウローゼンで、これもレーンの星勘定になっていよう。
血筋に裏打ちされた好馬体はデビュー前から。ただ、その段階では体を使い方ままならず。それでも崩れずに2着に食い込んだデビュー戦を能力と捉えるべき。
ここに至る過程の中、3頭縦列の最後尾から進んだ結果、ラストまでビッシリだった1週前は特筆できるし、直前に至っては持ったままでの5F65.5秒と、未勝利にいる馬にはなし得ぬ中身を楽々とこなている。落としてはならぬ一戦。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。