例年より短いサイクルで進む7月の夏競馬。福島2週目のメイン・七夕賞は、名物レースであるとともに、サマー2000シリーズの開幕で、好調馬が揃い。食指が動く。
GⅢのハンデ戦、当コースであれば昨秋の福島記念がまずはベースになる。そこでの覇者クレッシェンドラヴは年明け以来。
その中山金杯は7着と意外なまでの伸び悩みだったが、元々が中山では稚拙なレース運びになる傾向が。エクスキューズは成り立つということ。
問題は、春・日経賞を目標にしながら一頓挫あったのがどう響くか? その過程においても唸っていたが、放牧を経ての帰厩直後には張りつめた体を誇っていたし、DW1本目からしていきなり好時計とスムーズな立ち上げだったのが何より。無論、その後もピッチを落とすことなく最終追いでも余裕の手応え。57キロをどう克服するかだけ。
その福島記念、最も価値ある競馬だったのがウインイクシード。
1000m通過59.2秒といった中、積極策で踏ん張ったのだ。それが中山金杯で実を結んだわけ。ただ、今回は1週前が5F70秒を超える時計と不満が残る。直前で漸く体裁を整えてきたというのが正直なところ。対クレッシェンドラヴとでは1キロ差に過ぎないことも合わせれば、逆転不可の結論に辿り着く。
それならば、当コースへの適性でマイネルサーパス。
1800mがピンポイントだったのは昔のこと。実際、3角過ぎからスパートした4月・福島民報杯は力で捻じ伏せる強い競馬で、本格化の気配さえ漂う。加えて、同世代のOP馬ニシノデイジーに対して、それを明らかに上回る内容だった1週前には瞠目させられた。高木厩舎の看板、我にあり、を存分にアピール。流した程度といった直前でも滑らかな身のこなしで仕上げには寸分の狂いなし。
マイネルサーパス同様、というよりそれを上回る福島巧者ぶりなのがヴァンケドミンゴ。
何せ、4戦4勝の上に、質の高かった3勝クラスが捲り気味に進出しての抜け出し。それ以前の不振は苦手な冬場と総括できるし、距離に対する融通性が出たことで地力UPを実感。少なくとも、ソツなく進められる反面、インパクトといった点で物足りぬブラヴァス、ヒンドゥタイムズよりは魅力に溢れている。関西馬で取り上げるならこれ。
初重賞ゲットに待ったなしの態勢なのがジナンボー。
1.57.5秒の持ち時計が昨夏・新潟記念となれば、当距離ベストと断言できるし、前回のGⅠでも果敢な競馬での6着と、成長力で優位に立っているのだ。
コーナー4回のローカルGⅢということなら、前を潰しに行く強引な競馬が祟った2月を評価して良いわけだし、当時は滞在で少々重目。また、目標を据えての乗り込みで1週前の木曜にはラスト11.8秒の鋭さ。ゆえに、シェイプアップされての追い切りでは5F69.3秒とゆとりを持てたし、気持ち良さそうに体を伸ばし切ってのフィニッシュで今がピーク。
◎候補にもう1頭。特大ホームランを狙うならパッシングスルー。
ここ2走のダートを守備範囲外と見做せるのは、昨9月の紫苑ステークス勝ちがあるから。そこではカレンブーケドールを競り落としてさえいるのだ。確かに、未だハミに反抗する素振りが稽古で見受けられる分、ムラな面は残る。ただ、3頭併せでは3F過ぎに漸く収まりがついた結果、最後は矢のように伸びての5F65.7秒。デキには太鼓判を捺せるということ。
けれども、秋華賞→愛知杯ではバランスを保つのに苦労した上に、それに気を取られるとなし崩しに運んでしまう憾みが。上げ下げのポイントは馬場に尽きる。
土曜メインは3勝クラスの芝スプリント戦。1F短縮で身体能力がより露わになりそうなブレイブメジャーには一目も二目も置かざるを得ないが、敢えてナンヨーアミーコを。
函館開幕週、一旦は現地に移動しての除外といったアクシデントはあったが、それ以前から凄味が増していた、美浦に戻ってからもその勢いは止まらず、実にパワフル。特に、広いDWで少しも揺るがぬフォームのままゴールに飛び込んだ結果が5F66.9秒での1馬身先着。これを去勢効果と言わずしてどうする? 更に、福島は【0-2-2-0】と、以前からホームコースと呼べるほどの相性の良さも強調点に。
2勝クラスからはまず土曜・猪苗代特別を。ここはココロノトウダイで仕方ない。
プランに反する使い出しが今季初戦だったように、体質の弱さがネックであった。従って、GⅠを視野に入れてその思いが叶わなかった時点でのリセットが功を奏した。帰厩直後から捌きがスムーズだったし、実際にハードな併せ馬を繰り返せたではないか。
殊に、先頭との差が2.0秒近かった5Fスタートの追い切りでは、いつでも前を捕らえられそうな手応えで進んだ挙句、手綱をピクリとも動かさぬままでの1馬身先着で、ラストに至っては11.9秒。その充実ぶりがあれば初の2000mも気にならぬ。
日曜・天の川賞は、ダノンファストで決まり。
3歳OPだった前走の府中で惜敗と自己条件に戻れば元値が違うからだ。しかも、ワンターンで長い直線が控えるとなれば、脚を矯める形にならざるを得ないが、コーナーで息を入れ易くなる当条件なら正攻法で運べる。
押せ押せで使えるほど基礎体力がついていないのは確かだが、それ故に、十分に間隔を開けての調整と理に適ったローテなのにも好感が持てる、何より、1週前の6F追いが行き出しからコントロールを利かせての好時計だったし、直前の3頭併せは内を窺いつつの馬なりで精神面でもドッシリと構えられているのが良い。
ここは3歳を主力にして目数を絞ってみる。まずは久々ながら入念に仕上げたデルマオニキス。
勢司厩舎らしく本数を重ねている分、太目感はないし、陣営の期待を背負うのにも納得の造りと動き。それは段階を追って時計を詰めている点に表れているし、最終追いの5F68.7秒は実に伸びやか。戦法は限られるが、怒涛の末脚はギアアップがスムーズだからこそ。小回りでの瞬発力勝負に秀でると結論づけた。
あとは、1月にデルマオニキスの強襲に遭って2着だったショウナンマリオ。コーナー4回であれば自在に立ち回れるのが何より。以上2点で十分。
平場戦は2歳未勝利、日曜3Rのミカンタルトを狙う。
デビュー戦は掛かり気味に前に行って自己完結。土台、府中を乗り切るほどの適性を持ち合わせていないということで無視できる。しかも、速さ非凡でも坂でパッタリ止まったのであれば、距離短縮の福島替りに活路を見出せるわけ。
元々、シャープな身のこなしではあったし、デビュー前以上にバリエーションに富んだメニューをこなせたことから、叩いた効果は大きい。特に、DWでの5F追いが叶ったのは何より。現状では小回り+脚抜き良いダートが恰好になる。
3歳未勝利からは日曜2Rでサイヤダンサーがリーチをかけている。
骨折明けの前走、馬自身にスイッチが入っていなかったし、三浦騎手も無理はしなかった。結果、直線だけの競馬で5着がやっと。しかし、長く脚を使えるのは確かだし、小回りなら早目スパートも可能なタイプなのだ。加えて、大きく追走と潜在能力に見合った追い切りでは外の古馬に対してでさえランクの違いを見せつける5F66.4秒。覚醒したこの馬でまずは資金調達を。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。