ロングランになる夏・新潟の口火を切るアイビスサマーダッシュ。
別路線から交わる面々がいつもより難解にさせているし、昨年のワンツーが揃って出走となる点がレベルの担保にも。
まずは連覇を視野に入れているライオンボス。
外厩を上手く活用する和田郎厩舎だけに、春以来となりながらの今月始動は織り込み済み。確かに、直前は15~15程度の軽目だったが、ストレスを避けるテーマでも十分なほどシェイプアップされているし、5月より全体のバランスが良くなったと見受けられる分、5歳を迎えての進化さえ窺わせている。
現に、行きたい馬に行かせた韋駄天ステークスでスピード任せでない面を示したではないか。そこからの0.5キロ減も有利に働こう。
逆にカッパツハッチはパンチ不足。
昨年同様の54キロは何よりで、矢野英厩舎の定番であるしまい重点での4F51.3秒も及第点。ただ、勢いのあった昨年は、もっと前向きだった上に体を大きく使えていた。それと比べると8分がやっと。目数を絞る意味でも見送りたい。
それならば、自分の型に持ち込めたとはいえ、前走でライオンボスに食い下がれたジョーカナチャン。
これまで2度の骨折がありながらここまでになった叩き上げ。と同時に、直線競馬では底を見せていないし、間隔を開けて臨むパターンは自家薬籠中。問題は前回時よりテンに速い馬の存在。それを如何に捌くかが鍵になろう。
特に、ダートから転ずるグループにそのクチが揃っていて、中でも面白いのがゴールドクイーン。
抜けた速さを見せつけた昨9月があるかと思えば、3歳時の北九州記念では前半3F32.4秒のラップも。当舞台を乗り切るパワーをここまでのキャリアで見せつけてもいるのなら、一変を考えて良い。
第3戦を迎えるサマースプリントシリーズということで、現在並びトップに立っているラブカンプーには触れなければなるまい。
ブリンカー着用がきっかけとなってCBC賞では波乱に立役者に。また、3歳時には当レースでの2着があるから、適性は折り紙つきだということ。
けれども、そのいずれもが軽量で、長いキャリアを振り返っても連対は54キロまで。一気に斤量増が足枷になる。
1番人気の信頼度が高いレースではあるが、波乱を呼ぶのは待機策が功を奏する場合。ダイメイプリンセスは一時期のスランプから脱しつつある段階。
元々、直線競馬に限らず、GⅠでの僅差4着があるほどで、実績は申し分ないし、5月に見せた切れを思えば2度目の制覇に近づいていると見做すのが妥当。
もうひと捻りしてナランフレグの台頭も。
春・新潟からここ1本を照準にしている点に好感が持てる。実際、3F手前から一気に加速した1週前にはラストで11.8秒と弾けに弾けたし、直前の併せ馬では痺れるような手応えに終始と、そのダイナミックさには目を奪われた。
久々の1000mだった上に、ラスト1Fを切っても進路を確保できなかった前走が恰好の叩き台になろうし、昨年の開幕週には翌日のアイビスサマーダッシュを上回る54.6秒をマークしたほど。それも伸び上がるような発馬といったロスがありながら。潜在能力を見越しての◎まである。
他ではまず2勝クラスからで土曜・豊栄特別のトーセンリストを。
自然体で追走してひと伸びが利く当距離に絞ってから安定味が増した。特に、コースロス承知のレース運びだった前走では一旦先頭に。結果的には出し抜けを食った惜しい2着とリーチがかかっているし、フラットなコースなら更に、といった軽やかな身のこなしが持ち味でもある。
定番のポリ調整で、実質の追い切りが日曜の5F64.8秒と、輸送を考慮に入れての気配りに陣営の期待が表れているし、念には念を入れての直前もシッカリと体を使ってのラストが12.9秒と反応は上々。寸分の狂いもない。
日曜は3歳にスポットを当てて糸魚川ステークスではピーエムピンコ。
400キロに満たない小兵だけに、今回の充電は理に適っている。加えて、ペースが落ち着く新潟の外回りならよりジックリと構えられるし、目論見通りに切れを発揮できそう。
最終追いは4F54.3秒としまい重点だったが、広いDWでラストに気合いをつけられると即スイッチオンという変り身の早さ。鞍上が意のままに操れたのは、リラックスして馬体も春よりフックラしているから。
まだ体力がつき切っていなかった昨12月には中京への輸送があってもパフォーマンスの低下なし。目下の精神状態なら新潟への遠征が応えるとは思えぬ。
ダートでは日曜・苗場特別のヴィアメント。
デビュー当初からダートでこそと睨んでいた馬で、路線転換の前走は当欄でも取り上げたほど。その勝ち方は期待以上で、宥めつつの前半から堪りかねての早目先頭で脚色の衰える気配なし。まさに、水を得た魚のようで、ローカルなら前向きな気性が更に生きよう。
追い切りではセーブしながらの入りでも5Fから14秒台を刻んだように、波に乗っている。無論、豪快なアクションだった直線にもスケールの大きさが。頭打ちの古馬相手なら組み易し。
2歳戦からは土曜2Rのコスモカルティエ。
美浦入りしての本数が少々足りなかったデビュー戦では内からしぶとく伸びての3着と手応えを掴んだ。シャープな捌きが身上なだけに、軟弱な馬場が足を引っ張ったにも関わらず。
勿論、叩いた効果は覿面で緩かった体が引き締まったし、追い切りがDWでの3頭併せで、格上を含めた内2頭を窺う余裕を持ったままゴールを迎えての1馬身先着。気合いをつけられて漸く伸びた前回時とは雲泥の差で、取りこぼしようがない。
先月の府中でコスモカルティエとの2着争いを制したミッキーワクチンは日曜1Rに臨む。
当然ながら注目に値するし、今回は5Fから上手く呼吸があっての14.2秒。つまり、コントロールを利かせられるように。ただ、やはりデビューを目指す過程で外に膨れるシーンを見せられたことが頭から離れない。身体能力や垢抜けた馬体から、初勝利目前というのは承知だが、内回りに一抹の不安が。
手堅く行くならそこから入るべきだが、フミロアのスピードを重視する手も。
シャープな体のラインで小気味良い動きが目を惹く。実際、調教駆けするタイプで、デビュー前から即戦力と見做せるほどの時計が再三再四といった具合。ただ、1800は如何にも長過ぎた。気性の勝った馬だけに、一気に走り切れるスプリント戦でこそ。
従って、2F短縮は好機だし、横山典自らが手綱を取った最終追いでは3F手前からアクセルを吹かして最後までビッシリ。4F50.4秒が能力の証だし、ローカル替りは格好となる。スピードに乗ったまま押し切るのではないか。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。