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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2020年08月27日(木)更新

GⅠに繋がる重要なキーンランドカップ

次開催、中山で行われるスプリンターズステークスに直結するキーンランドカップには、例年以上の注目が集まる。
何故なら、不運に尽きる高松宮記念の雪辱を果たした函館スプリントステークスの覇者ダイアトニックが登場するから。
前走同様、58キロ。つまり、大名マークからの抜け出しだったことで斤量面の不安は今回においても皆無だということ。短期放牧からの札幌入りもプラン通りだろうし、1週前の本馬場では5Fの入りからして13秒台とシッカリと追えている。スプリント戦に転じてまだ2戦に過ぎぬ段階で底力を見せつけているのなら、無理に逆らう必要もないのでは。

これをベースにすれば、手順として函館スプリントステークスで2着と食い下がったダイメイフジにも食指が動く筈。
伸び悩んでいた時期もあったが、ハナを切る形でひと皮剥けたと考えれば、6歳を迎えての今季、未だに上昇余地を大きく残していることになる。

しかし、函館の時点では本調子になかった馬には大きく変わる可能性がある。

特に、ライトオンキューのUHB賞には圧巻としか言えない強さがあった。
前半3F33.8秒の流れの中、内を窺いつつの追走で手応えは抜群。少々気合いをつけただけでも先頭に並びかけた直線入り口で既に勝負を決めたほどだった。
ブランクゆえに反応し切れなかった2走前からの良化ぶりは尋常ではないし、力をつける以前だった昨年の当レースでも4着。調教が実になっている状況でのGⅢなら上位は約束されている。

あと捨て切れないのがエイティーンガール
連続7着と人気を下回るここ2戦だが、函館は久々で終いだけ。半ば試走といった側面があった上に、気が入り過ぎた前走では自分の型に嵌められずに中途半端な競馬と敗因は明確なのだ。更に、中間で楽をさせたフシのあった+10キロだっただけに、恰好の叩き台を経たとの解釈も。
それが、シッカリ気合いをつけての本馬場追い切りに表れていて、3Fに至っては35.5秒。丁度3年前、同じようなパターンで波乱を演出したエポワスをイメージして良いのではないか。

関東馬ではビリーバーが面白い。
当初、3勝クラスが限界に思える成績続きだったが、そこで揉まれたことで着実に地力アップ。挙句、忙しいと思えたアイビスサマーダッシュでも鋭く伸びての3着と幅を広げたわけ。
美浦で調整を進めての現地入りというパターンで先月には結果を出しているし、それに則った仕上げ。特に、先週はスムーズな道中での加速があった上に、ラストも糸を引くような伸びを披露したのだ。早目スパートも可能になったのが2走前。展開頼みといった部分が狭まったことでも侮れぬ存在に。



ラスト2週になった新潟メインは新潟2歳ステークス。
バックストレッチ、直線ともに長くて紛れが少ない設定といった反面、折り合い難が露呈し易いペースになりがち。
ということなら、大人びたレース振りだった初戦を買ってフラーズダルムを中心視するのが安全策か。
何せ、ワンペースながら安定したフォームで、仮に抵抗する馬があったなら容易に時計を詰めていたであろうラストが心強い。馬格がない分、将来性を問われると厳しくなるが、当レースで最優先すべきは完成度の高さ。それに見合うタイプ。

一旦は2着馬に前に出られながら盛り返してのデビュー勝ちだったシュヴァリエローズの素質は間違いないところ。
しかし、行きたがる素振りがあった上に、まだ前が勝ったようなバランスで、全身を使ったフォームになっていないのが玉に瑕。追っての味や勝負根性に優れていても極端に上がりが速くなると分が悪くなるという見立て。

逆に、新潟替りが功を奏しそうなのがロードマックス
前走の1.39.9秒は若駒にとっては過酷な馬場でやむを得ぬ時計。加えて、3角手前で被せられるのを嫌って早目先頭という強引なレース運びの中、外目を選ぶコースロスをモノともしない伸びで結果的には上がり最速をマークした。無論、シャープな身のこなしだけに、高速ターフでの更なる躍動が目に浮かぶよう。

同じ開催にデビューしたブルーシンフォニーは軽く見られがち。
なるほど、回復傾向だった馬場での1.37.2秒となれば低調の誹りを免れぬ。ただ、いきなりのチークP着用が示す通り、ムラな面が。そんな気性をカバーして余りある末脚を見せつけたのだ。それも、坂上まで追い出しを待たされた結果、外に持ち出せたのは1Fを切って。そこからの鬼脚は注目に値するし、間隔を開けてジックリ乗り込めたことによって凄味が出た。何と、馬なりで5F64.7秒だった先週があった上に、先行態勢だったとはいえ、古馬OPに対して断然優勢の脚色だったのが追い切りと文句なし。6月・府中デビュー組のワンツーまで考えて良い。

関東馬ではもう1頭、ブルーバードも俎上に載せるべきだろう。
2連勝は伊達ではないし、初戦からの1F延長も難なくクリアーした前走は評価に値するからだ。上手く矯めを利かせての瞬発力が非凡だということ。
しかし、長距離輸送を挟んでの中2週がネックになりそう。しまい重点での4F52.8秒も数字的には及第点と言えそうだが、少々フォームが小さくまとまり過ぎているのが気懸かり。これを反動と捉えるのが妥当ではないか。

3歳以上の鞍では、まず3勝クラスの土曜・稲妻Sを取り上げて◎はファイブフォース
洋芝適性? と思わせていながら今季の北海道で1、2着。函館での1.07.9秒には目を瞠るばかりだし、昇級初戦でも首位争いに絡めた。いずれも内で脚を温存して弾けさせる味な競馬だったから信頼に値する。
実際、美浦に帰厩してから併せ3本と鍛錬に余念がない上に、パートナーは全て稽古駆けする馬。しかも、追走して外に進路を取った最終追いなどは、セーブ気味でも5F68秒を切ってパワーを前面に押し出すフォームに終始。数字のわりに線が細い印象だった以前を覆したわけ。また、飛躍のきっかけだったのが3歳秋の当舞台。適性も◎。

土曜・岩室温泉特別はダートの2勝クラス。ここは勢いを得たメモワールミノルの連勝が濃厚。
久々ゆえに出脚が鈍かった福島と180度異なる競馬だったのが前走で、前目で捌いての1.10.1秒なら掛け値なし。中身が詰まった馬体になった効果が表れたとともに、新潟との相性を見せつけた。
しかも、5Fからの好時計だったとはいえ、ラストは流した程度だった前回時と異なり、1Fを切って促されると一気に弾けての11.9秒と実に鋭い。本格化と捉えて良いほどの動きに惚れた。

日曜は1勝クラスをピックアップして7Rのヤシャマルから。
デビュー時にはズブさが目立っていた。緩急に対応できない故で、これはトモが甘かった分、加速までにはタイムラグが生まれたということ。それを払拭しつつあったのが今春で、休養前には後続に4馬身差とランクの違いを見せつけたのだ。
今回のリフレッシュで更に洗練された上に、後肢の入りが深くなった模様。結果、ピッチを一気に上げた1週前には格上を圧倒する動きでの5F65.2秒をマークできたし、日曜の坂路を挟んでの最終追いは3頭併せと実にハード。その中にあって直線では他を置き去りにしてのラストが12.1秒と非の打ちどころなし。当クラスなどノンストップで通過して当然のレベルにまで達した。

ダートのスプリント戦になる日曜12Rはコルニリア
昇級初戦の5月はあえなく退いたが、1000m通過1分を切る厳しい流れに翻弄されたし、1F長い上での府中であれば良く踏みとどまった部類。何故なら、小回りの利くタイプで当距離での瞬発力が身上だからだ。
春まではゴツゴツした歩様ゆえに、坂路が中心と馬と相談しつつの仕上げ。従って、DWでの3頭併せがラスト2週となった今回は鍛錬の度合いからして桁違いだし、硬いと思えた行き出しでもスピードに乗った直線ではいずれもシッカリと体を使えていた。多少余裕造りでも攻めに攻めた過程を経ての臨戦でむしろ上積みは◎。ローカルもプラスに働きそう。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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