三冠を目前にしたコントレイルに逆らえる状況ではない菊花賞。父の偉業達成があった2006年以上に盤石なのでは。何せ、頂点を極めたダービー、及ばずの2着サリオスでさえ、古馬相手の毎日王冠では完勝と申し分のないレベルを既に証し立てているからだ。
しかも、トライアルが流しただけでの2馬身差。夏を超えての進化と負担なく通過できたという、2つの大きなアドバンテージを得たことに他ならぬ。
無論、中間のCW長目追いから直前坂路を踏襲できたことでも死角なし。長丁場を本領とするタイプでないのは承知しているが、絶対能力の違いがそれを補って余りあるということ。
次位争いで優位に立っているのが・・
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もう一方のトライアル、セントライト記念上位は順調に良化。まずは、そこで2着と上々の滑り出しだったサトノフラッグ。
得意の中山だったとはいえ、早目スパートでも脚を保たせたのは心強い限りだし、その後もシッカリと負荷をかけている。
特に、最終追いの3頭併せでは実戦さながらのデッドヒートを直線で演じたのだ。半馬身遅れとはいっても相手がアーモンドアイなら逆に胸を張れるし、輸送を控えていても5F65.3秒。少なくとも、明らかにセーブしたまま臨んだダービー当時とは違う。
相変わらずの迫力がガロアクリーク。
大きく前を行く2頭を楽々交わした1週前も圧巻だったが、そこから緩めることなく、追い切りでも追走態勢から余力あっての5F67.5秒でよりダイナミックに。
ただ、筋骨隆々といったイメージがある分、無駄のアクションはある。長距離を乗り切るにはよほど極端な戦法に打ってでないと……。
以上の関東2騎、セントライト記念覇者との逆転を見込むには少々根拠が薄弱。ということで、▲は素直にバビット。
積極策、追随する他が苦しくなる展開を自らが造ってこそ真価発揮という4連勝は掛け値なし。特に、坂のある中山で絡まれる展開を凌いだ前哨戦で本物に、そう見做すしかないだろう。戦法に迷いなし。絶対王者にひと泡吹かせる奇襲に出られる点が魅力。
見限ってはいけないのが・・
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代わって東に目を移してのピックアップは当然ながら土曜の富士ステークスで、ここは3歳を主力に。とはいえ、NHKマイルCの覇者ラウダシオンを実績重視で取り上げても面白くない。何故なら、別定56キロを背負わされる上に、5月は前残りの特殊な馬場とペース。疑える要素もあるからだ。
逆に、スマイルカナは進化の真っ只中。
上の世代に混じっての2戦で経験値が上がったと実感できるのは、流れに左右されなかった故。加えて、細身ながら中身が詰まった体で、四肢を目一杯伸ばすフォームに一層の充実ぶりが伝わってきた。意識としてはセーブ気味だった追い切りにしても、外ラチに触れんばかりのコース取りという負荷がありながら、ラストは持ったままでの12.2秒。非の打ちどころなし。
ライバルというか、◎候補として挙げたいのがシーズンズギフト。
確かに、紫苑ステークスは1000m通過62秒に近い中、上手く脚を温存する理想的な競馬でもひと押しが利かず。反面、距離に対する限界は明らかだし、秋華賞で上位に加わった組といったレベルの問題も。
つまり、ピンポイントのマイルなら違うし、余裕残しの仕上げだった秋初戦を叩いて活気を呈してきたのだ。それが、痺れるような手応えに終始した1週前のDW5F66.4秒に表れている。直前の坂路で流した程度の51.8秒だったのは前回時よりゆとりのある過程を踏めたことに他ならぬということ。また、急坂でジリジリとなる面があっただけに、初の府中替りが追い風にもなる。
先週にはチークPを着用して変り身見込んだのがワーケア。
が、そこでは3馬身先行の5Fスタートながら結局は2馬身遅れと追い比べで明らかに劣った。2歳時に見せた沈み込むフォームが全く見られない点で良化途上と見做すしかない。最終追いが坂路と、これまでのパターンを覆したことが刺激になるか? その希望的観測に頼るのは心許ない。
もう1頭、危険な人気馬としたいのがサトノアーサー。
確かに、関屋記念は鮮やか。が、コーナーで距離ロスを抑えられた上に、前も見事に開いた。そこを突けた瞬発力はさすがだが、持久力といった点に疑問が残る。要するに、4歳時にエプソムカップを制した時とは変質しているわけで、コース替りが仇となりそう。
それならばレイエンダ。
ツボに嵌らないと意外なまでの凡走がある。けれども、決め手のほどは昨年の当レースが示す通りだし、先月に美浦入りしての入念さに復活の兆しを見て良い。
特に、前との差から単走で終わるものと思えた芝コースでの追い切りは反応◎。結果的に同時入線となったのは、本来の切れが蘇った故で、11.9秒という数字以上の見た目だったラスト1Fは出色。
早くも最終週を迎える新潟の土曜メインは牝馬限定のOPクラス、新潟牝馬ステークス。
充電完了のエスポワールに人気が偏りそうだが、ウラヌスチャームを中心視。
こちらとてGⅢ2着の実績があるし、新潟ということなら3歳夏には上がり33.2秒をマークしているように、独特の芝にも対応できる。
逆に、コーナーを多く切る上に、北海道の馬場といったエクスキュ―ズが成り立つのがここ2走。つまり、そこで見切りをつけた上での立て直しは理に適っているし、スムーズなギアチェンジから首を上手く使ったラストと洗練された動きが再三。
実際、一杯になる外を軽く交わしての5F67.6秒には牝馬とは思えぬ迫力があった。主導権を握れるメンバー構成にも恵まれたとなれば後続を寄せつけぬまである。
日曜は3歳の二者択一となる2勝クラスの鳥屋野特別を。
当舞台での持ち時計でベルダーイメル。それをマークした先月には3着以下に6馬身と水を開けているのだから、もう順番。ただ、敢えてショウナンマリオを指名する。
トモが寂しいといった印象を一掃したのが夏から。つまり、前後のバランスが取れた上に、全身に力が漲るという充実期を迎えたのだ。加えて、多少の緩さがあった夏場から引き締まったと印象づける先週のDWがあった上に、最終追いの坂路では前回時を2.0秒近く上回る時計ととどまるところ知らぬ。ライバルを目標に進められる利も大きい。
以上に割って入るならカフェプリンス。
しまいを伸ばした先週の木曜とは逆に、内を窺いつつの楽走だったのが直前。一見、物足りなく映るが、稽古で無用に追い込むと消耗し易いタイプだけに青写真通り。
それ以上に、スイッチオンからの変り身に進境を感じるし、鞍上との呼吸を合わせられた点にも好感が持てる。先に行って流れ込むといった戦法からの脱却が成ったのは今春からと幅を広げている段階。得意の左回りで漁夫の利を得るシーンは考えておくべき。
本場に戻ってのターゲットは平場の東京・土曜7Rで、取りこぼしようのないジャッジの為にある鞍。
一旦は前開催から始動できる状態になっていたし、開幕週を目標にしながら一頓挫はあった。しかし、仕切り直してのここ2週でビッシリ追えたように、態勢を整えてきたのだ。いずれも1Fは14秒前後とお釣りがなかったが、5Fからハイピッチで飛ばせた点に目を向けるべき。
元より春までに互角に渡り合っていた相手のレベルが段違い。勿論、パーフェクトな仕上げとは言えないが、8分を超えるデキなのは明らか。それ未満の態勢でも軽く通過できるだけの能力といった点を強調しておく。
2歳戦では土曜5Rからグラティアス。
レシステンシアの下という血筋の裏づけがある以上、使い出しは慎重。つまり、陣営が納得できるまでになってのゴーサイン。現に、ラスト2本に素材の良さが前面に出ているのだ。
先週には正面入りして長目と乗った挙句の5F68.6秒でシッカリと気合いをつけられたかと思えば、縦列の最後尾からだった直前は余裕も持って同時入線に持ち込んだ上に、先行した真ん中の古馬2勝クラスさえ圧倒するフォーム。身のこなしや反応が格段にアップしての臨戦で、入厩当時から目立っていた洗練さに磨きがかかっている。ここは軽くパスしなければならぬ。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。