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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2020年10月29日(木)更新

名牝2騎が激突!虎視眈々と逆転を狙う穴馬も!

一昨年同様の頭数に収まった天皇賞だが、そのレベルは格段に高い。名牝2頭に引っ張られるといった様相だからだ。

特に、アーモンドアイは未だに不動の位置にある。
確かに、休養直前の安田記念は取りこぼした。が、高速決着のマイルでは紛れが多いし、実際に昨年も同様で、そこでは3着。いずれも、海外遠征を経た後でもあるから大きな負担が伴うということで目を瞑れるわけ。
そもそも、暮れの香港を自重してからが微妙に狂っていた。ドバイへのカラ輸送がその典型で、それに比べれば今回は盤石と見做せる過程を踏んでいる。特に、ラスト2週の3頭併せでは、上がりに限っても37.1秒→36.5秒と確実に時計を詰めている上に、筋肉量アップがダイレクトに伝わって、それを駆使したラストのフォームにはこれまで以上の凄味が。今週からのBコース、好天続きと昨年同様の状況で8つ目のGⅠに待ったなし。

本線はクロノジェネシスで良かろう。
力を要する馬場が功を奏したとはいえ、後続に6馬身差の独壇場だった宝塚記念は本物。牡馬相手での初GⅠだった大阪杯惜敗でベースが出来上がったことに他ならぬ。秋華賞を含め、2000mでの安定味は抜群だし、3歳時から大幅に馬体を増やしてきた上に、まだ上昇曲線を描けている段階なのだ。勿論、大箱の府中は望むところ。

以上に迫る勢いなのが・・・

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5歳の牡馬勢は少々パンチ不足か。例えばダノンプレミアム
安田記念での13着は香港遠征の反動と馬場に依るだけに度外視できるにしても、9月帰厩のわりに本格始動までにタイムラグがある。また、順調度で上回っていた昨年でさえ、2着死守がやっと。◎との格差は一段と広がった。

それはフィエールマンにも言える。
何故なら、前哨戦と位置づけたオールカマー回避が応えているからだ。再仕上げを強いられた過程にも不満を覚える上に、1F13秒を切れなかった1週前、追走が言い訳にならぬほど外2頭に決定的な差をつけられての遅れが最終追いなのだ。
京都での決め手比べに秀でているのは承知だが、あくまでも長丁場。ステイヤーとしての地位を確立させている反面、これまでの上がり最高が菊花賞での33.9秒。この舞台にはマッチしそうにない。

逆に、ブラストワンピースの守備範囲は広そう。
けれども、如何にも重目が残るといった見た目に反応だった1週前が大きな減点材料。さすがに以前ほど稽古で切れるといったイメージでなくなってから久しく、良い意味で枯れたといった見方ができないこともないが、しまい重点の追い切りでも外にアオられ気味となれば首を傾げざるを得ない。

それならばダイワキャグニー
最終追いが坂路での54.3秒で中間のDWでも感触を確かめる程度。が、毎日王冠に臨むにあたってが去勢明けで半ば手探り。それを叩き台と見做せるのだから、実戦を経ての上積みに重きを置ける。バランス良化と落ち着き。新たな進化が見受けられるのであれば家賃の高さには目を瞑って3連の押さえには加えておきたい。

土曜メインは2歳GⅢのアルテミスステークス。人気を一身に背負うのは関西馬ソダシ
若駒にとっては過酷な流れの札幌2歳ステークスでは前を潰しに行く強い競馬。レコードをマークしたのであれば逆らう必要なしとするのが妥当。

が、そこでの2着ユーバーレーベンとの勝負づけが済んだとは思っていない。
そう、出負けが応えてロングスパートを強いられながらクビ差にまで迫ったのだ。また、デビュー戦が見切り発車と思えるほどの馬体充実を2戦目にして迎えたではないか。
しかも、更にピッチを上げた結果の追い切りが3頭併せで、最内はGⅠ馬フィエールマン。胸を借りるつもりが逆に、追い比べでの3馬身先着だったのだ(先行態勢だった外の古馬はこの際省く)。存分に持久力を生かせる府中なら逆転まである。

もう1頭の注目はウインアグライア
放牧先からの現地入りだった前走の+12キロは数字通りの追い不足。即ち、手薄なメンバーに混じっての僅差にはイクスキューズがあるということ。
対して、今回はポリを含め、バリエーションに富んだメニューを消化と本気度が違う。自らハミを取ってのラスト11.8秒と弾けた1週前があったかと思えば、タフなDWでは3頭縦列で先頭から2.0秒の4Fスタートを覆しての1馬身先着と、力強ささえ身につけた。高速上がりの中、測ったように捕えた初戦から府中は◎で、当時の馬場に近い状態が見込める。飛躍できるだけの条件揃い。

特別戦からは日曜9Rのテルツェット
今回、昇級戦での相手強化は確かだが、新潟での圧勝劇が取消明けで、直前がしまい重点に過ぎなかった。そもそも、3月・ミモザ賞での0.4秒差が2勝クラスの範疇でない証し立てになっている。
さらに、力を漲らせているのが目に見えて分かるほどで、最後の5F追いなどは外ラチ沿いと道中の負担、並み大抵でなかったにも関わらず、1F12.4秒。殊、ラスト50mのアクションは更なる迫力増し。むしろ、その姿こそ本来ではないか。

今週からスタートする福島の日曜メインはOPのダート戦福島民友カップ。ここではブランクエンドの勢いを買う。
ダートに転じた4月からトントン拍子と底を見せていない。特に、少し距離が長いと思えた新潟でも大名マークからの抜け出しを図ったほどで、着差以上の強さ。それは信頼に値する1.50.7秒の時計にも。
中間の併せ馬では道中の手応え通りの反応を示した上に、単走だった追い切りでも気を緩めるシーン皆無での1F12.0秒と実にシャープな捌き。完成形に近づきつつある過程が何よりだし、前目で器用に捌けるのがローカル巧者たる所以。現に、7月・福島でマッチレース、片割れだった勝ち馬は既に現級で通用と恰好の物差しも持ち合わせている。

ここからは芝1200戦にスポットを当ててまずは日曜・五色沼特別のチェアリングソングを。
数字以上の厚みを感じさせていたわりにトモの送りに力が籠らないといった印象を一掃しているからだ。要するに、北海道での好走続きは、洋芝適性だけの問題ではない。
何せ、過酷なペースの中、果敢なレース運びでの1.09.1秒だった昇級初戦の価値は計り知れないし、もっと遡れば福島2歳ステークスでの5着さえある福島に替る。ここをステップと目論むのは当然のことで、最終追いなどはGⅡで上位に加わった過去を持つ同じ3歳に時計で上回る同時入線。気分次第といった面が消えて道中でのコントロールは容易いし、追ってからもストライドが伸びる。格段の成長を遂げたということ。

土曜9Rに組まれた1勝クラスの芝1200mはオパールシャルムで決まり。
1勝クラス入り直後の前走では人気に反する結果。が、馬場が応えたのは確かで、元よりスプリント能力を生かせる距離ではなかった。
現に、漸くの初勝利だった函館での1.09.1秒が抜けた好時計。問答無用の強気なレース運び+ローカルではワンランク上なのだ。
また、間隔が開いて少々追い込みがきつかった過程の前走とは異なり、リズム重視の追い切りには好感が持てる。最後まで相手を窺う余裕での1馬身先着で、馬体のハリが増した模様。平坦の開幕週なら後続を寄せつけないまである。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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