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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2020年11月05日(木)更新

アルゼンチン共和国杯、条件好転トーセンカンビーナ特注!



GⅠシリーズの谷間になる開催替り。日曜の府中は混沌となるハンデ戦、アルゼンチン共和国杯がメイン。

その中で注目を集めるのは唯一の3歳オーソリティ
何せ、青葉賞勝ちでダービーへの切符を手にした実力馬だから。しかし、不運にも骨折が判明してのブランク明け。勿論、コース、距離適性には太鼓判を捺せるが、在厩での調整期間が長いわりに、シッカリ気合いをつけた併せ馬は直前の1本のみ。1F12秒台に収めたといっても、終い重点での内目だったし、物足りぬ反応。体裁を整えた程度で通用するほど甘くはない。

逆に、着実に力をつけてきたと実感できる上に、当コースに対する裏づけがあるユーキャンスマイルを物差しにするのが組み立ての第一歩になろう。
4歳冬、ダイヤモンドステークスを制した程度では強く推せないが、昨年後半から本物になりつつあった。しかも、今春にはGⅡ勝ちで箔をつけての天皇賞では2着争いに加わったほど。相手関係に恵まれたとして良いわけ。ただ、久々での58キロとなれば脇も甘くなるのでは。

そこを突けそうなのがトーセンカンビーナ
関東への移籍直後は12着と振るわず。が、如何にも叩き台だったのは、選択した距離に加え、熱発を経ての過程ながら-2キロと、基礎体力をつける暇がなかった点に表れている。そもそも、負担を避けての追走があってこそ、脚を使える典型的なステイヤーなのだ。
覚醒を促す稽古で臨めるのが今回。現に、脚色劣勢だったのは稽古駆けする2歳を3馬身追走しての5Fスタートだったことに尽きるし、そこからの入りがいきなり14.2秒。終い重点だった前回時と大きく異なる中身を伴っていた。
ここまで馬を追い込んだ上での距離延長であれば勝負態勢。なるほど、地力上位のユーキャンスマイルに対して、阪神大賞典であった1キロ差が3キロ差に。こちらに軍配が上がる。

同等の評価をメイショウテンゲンには与えるべきか。
時計を要する馬場が味方したとはいえ、距離不足だった宝塚記念での5着と、守備範囲を広げたのは晩成の血が騒いだ故。帰厩して1ヶ月以上、時間をかけての丁寧な仕上げには好感が持てるし、仕掛け処が曖昧になった2走前はあくまでもトリッキーな京都。広い府中でのスタミナ勝負なら違う。

同じ4歳世代で、侮られがちなサトノルークスを見限ってはいけない。
元々、安定味に欠けるタイプで自分の型に嵌められるかが鍵に。したがって、内回りの鳴尾記念や暑さ負けとのことだった小倉記念は度外視して良い。
菊花賞で勝利目前まで近づいたように、底力を問われるシーンで個性が光るのなら、当条件がきっかけになって不思議ない。さらに、直前まで長目からの併せ馬を繰り返せた。陣営が手応えを掴んでいるからではないか。

別定GⅡの毎日王冠3着からのここなら相手関係で優位に立てそうなのがサンレイポケット
ただ、前が引っ張る流れの中、上手くポケットに入れたことが最後の伸びに繋がった側面がある上に、6月の3勝クラスは意外なまでの辛勝。要するに、悪化した馬場を避けて外を選んだ他の間隙を突けた好騎乗に依る面が大きかったということで、距離に対する限界が見え隠れ。ピンポイントを2000mと見做して軽く扱う。

夏場をリフレッシュに充てて復調したオセアグレイトは馬体の充実が目立つ。
1週前までに負荷をかけたから、直前はサラリと終えるかと思いきや、再び併せ馬での総仕上げ。確かに、ゴールでは1馬身遅れだったが、大きく追走して外に進路を取った上に、1F地点でもまだ後ろ。そこからの伸びが際立ったのは、体の使い方が洗練されたが為。
目黒記念での凡走や、2月に今回と同じ斤量差でメイショウテンゲンに水を開けられるなど、マイナス要素を覆すのは容易くないが、それを補って余りあるデキに賭ける手も。

土曜は京王杯2歳ステークスが面白い。
何故なら、夏場のローカルを経て一同に会するといった点で、単純な比較が成り立たぬからだ。無論、曲がりなりにもGⅢで結果を出したクチを軽く扱うわけにはいかぬ。ただ、完成度の違いや器用さが明暗を分ける小倉、函館経由には疑いを挟む余地あり。
逆に、使うごとにパワーアップしているブルーシンフォニーの地位は安泰。
6月の1.37.2秒にしてもロスの多かったレース運びの挙句だったし、離し逃げがあってピッチの落ちぬ中、仕掛け処が曖昧になりがちな新潟2歳ステークスでもしまいの伸びは堅実そのもの。これは、長く脚を使えるゆえで、緩急いずれにも対応できる幅があればこそ。加えて、稽古の質を更にアップさせての臨戦とプラス材料揃いなのだ。
何せ、帰厩後のパートナーは、完成域に近づいた古馬OPで、いずれも圧倒。特に、5Fの時計で大きく上回りながら目一杯追う内を尻目に悠々とゴールを迎えた直前などは脱帽せざるを得なかった。デビューからの2戦より首を上手く使えている分、推進力からして段違い。1F短縮でも長い直線でカバーできるのなら紛れはなかろう。

特別戦からは素質馬揃いの日曜・百日草特別をピックアップ。水曜の想定段階で10頭に満たないがその中身は濃密だからだ。
まずはヴェイルネビュラ
8月にデビュー勝ちで漸く交わして2着とは0.3秒差に過ぎぬ。ただ、道中の反応は鈍く、本気になったのはラスト1Fを切ってから。道中で包まれ気味だったことでも気持ちの面でスイッチが入らなかったのだ。まだ緩かった為に、鞍上の意のままにならなかったということ。
対して、シッカリと長目から追えた中間があった上に、最後尾から進んだ直前には持ち前の柔軟性を存分に生かした身のこなしで、ストライドにも力強さが加わった。ひと叩きとその後のリフレッシュ効果は覿面。
ライバルはエフフォーリア
ゲートが遅かったデビュー戦、早々と前を射程に入れられたのはピッチが上がらぬままの展開だったから。けれども、一旦美浦入りしての放牧→現地入りと腰を落ち着けての調整とはいかなかった。そもそも、夏前に目にした時点では明らかに成長途上で、仕上げに手間取るタイプとの見立てが初戦勝ち。
それが、DWでの鍛錬を積んでバランスが取れた上に、体をダイナミックに使えるように。結果、いずれも古馬を圧倒する併せ馬に繋がったわけ。無論、大飛びでローカルより府中、ポテンシャルが高まること必至。

2週目を迎える福島の勝負処は土曜の短距離戦で、まずはメイン河北新報杯のロンドンテソーロ
1F長いと思われた6月には上手く立ち回っての2着。脚抜きの良い馬場に恵まれたのは確かでも一本調子でない面を示せた点に収穫が。前走こそ人気に反する結果だったが、前半3F34秒を切るラップを深追いせざるを得ない中、3着とであれば0.2秒差。トップハンデでの大崩れなしは立派だし、元々が新潟との相性も一息。
対して、器用さとスピードを生かせる右回りは格好で、それに見合った調整を積めている。特に、先月中旬からはオールDWで、追い切りなどは併せ馬敢行と意欲的。半マイルから12秒台のラップを踏んだ分、ラストは時計を要したが、脚色には余裕があっての5F67.1秒と攻め強化の効果が目に見えている。

10Rの飯坂温泉特別は関西馬ロードベイリーフが人気。それは分かる。1200mに転じた休養前がハイレベルなのだ。が、敢えて今一度モエレコネクターを狙う。
内にモタれ気味になる左回りがネックになった新潟からの変り身に期待できるから。ロスを抑えられる上に、位置取りからしてスムーズなのは春・福島の2戦が物語っているし、4走前の惜敗がポテンシャルの証し立てに。また、間隔を詰めても直前で3頭併せを消化できたように軌道に載ってきた。そこでは、厩舎の看板馬に育ちそうな2歳と同等の動きを披露。自身の奥行きまでアピールできた。伸びしろといった点で3歳に見劣るとは思えぬ。

あとは日曜8Rのグランチェイサー
ここ2走は不完全燃焼で、流れに乗り切れる筈のなかった直線競馬などは単に消化しただけ。そこでの見切りが功を奏したのは、活気溢れる稽古が示す通り。矢野英厩舎特有の4F追いの中、トップスピードに切り替わるのが極めてスムーズだったし、重心が沈むラストも迫力満点と、1勝クラスの範疇を超えている。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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