豪華なラインナップのマイルチャンピオンシップ。他のカテゴリーにも進出して結果を出せるほどのレベルに加え、新旧入り混じる。1強状態だったここ一連のGⅠより遥かに食指が動くというもの。
まずはサリオスの取捨。
マイル適性◎なのは、キャリア2戦目の1.32.7秒や、2歳暮れの朝日杯フューチュリティステークスが示す通り。加えて、秋初戦の毎日王冠が上の世代を寄せつけない強さ。ただ、その後の立ち上げが遅かった分、1本追い足りないのでは? といった懸念が。
それを抱えた最終追いは、道中の2頭態勢から大きく前を行く同厩の単走を1F地点で既に捕えていたほどの瞬発力。結果、5F64.4秒と堀厩舎にしては異例とも言える直前のメニューになったわけ。
これを、追い込まれた末と見做す向きもあろうが、その意欲こそに価値があるし、思えばダービー時も調整過程での創意工夫によって態勢を整えてきたではないか。打倒グランアレグリアの候補たる資格は十分にある。
同じ3歳でも牝馬レシステンシアは、当コースでのGⅠで1→2着と底力を見せつけていた。けれども、体を減らしたNHKマイルカップで目一杯だった上に、骨折によるブランク明け。2週前に坂路50.3秒をマークして以来、時計が詰まっていないことから、一叩きでピークを迎えた桜花賞当時にはないのでは…。
それならば・・・
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今回同様、群雄割拠の安田記念は落鉄があった分と、悔やみきれぬ3着だったインディチャンプ。
マイラーとしての完成域を迎えたとして良い今季、連覇を視野に入れるのも当然だが、昨年のようにワンクッションあってのローテでない点が…。
スプリンターズステークスを挟めれば青写真通りだっただろうし、振り返れば3歳暮れからのステップアップには使いつつといった経緯があったのだ。また、府中や京都ほどのインパクトを残していないコースといった点も気になる。
今週の阪神、西下組からはもう1頭。土曜9Rのバニシングポイントがそれ。
2歳1勝クラスとは思えぬ素質馬揃いの中、やはり身体能力で抜けているからだ。確かに、アイビーステークスは案外な7着だったが、入念に乗り込んだわりにしまい重点が大半。一気のペースアップに戸惑って不完全燃焼に。
逆に、今回は早い段階からDWに切り替えた挙句、ラストの併せ馬では5Fから真っ当なラップを刻んでのパワフルな動き。なるほど、札幌では物見しながらの7馬身差で水準を大きく上回る時計をマーク。そこでのラスト2Fは重戦車が無人の野を行くが如し。前走の経験を糧にできるだけの稽古を消化してのダート替りで真価を発揮。
東京に目を移してまずは土曜・奥多摩ステークスのウィンドライジズを。
抽選除外があった上での乗り込みだけに、間隔が開いても緩めるどころかビッシリと鍛えられているのが何より。結果、併せの本数は6本に及ぶ上、追い切りでは3頭併せの外に進路を取ってもうワンランクのレベルアップ。にも関わらず、5F65.4秒と他を上回る時計で手応えも楽と本物になったわけ。
鼻出血明け後の4戦で攻め切れなかった時とは180度違うということ。となれば、現級入りした初戦の昨10月、いきなり際どかったことを思い起こすべき。
同じ土曜の2勝クラス、伊勢佐木特別は3歳2頭の一騎打ち。その片棒を担ぐのはヴィアメントで叩いた効果が絶大だからだ。
コーナーの急な新潟以外であれば瑕疵がないわけだし、復帰戦が鹿戸厩舎らしくソフトな仕上げで半ば見切り発車だったにも関わらず、2着争いに加わった。したがって、今回もそれほど速い時計はないと思いきや、最終追いは3馬身追走の入りからしてギアを上げての5F66.5秒でコースも外目と中身の濃さには太鼓判を捺せるほどに。ハンデ53キロからの2キロ増しを相殺して余りある。
もう一方がジャッジ。
コントロールが利いた道中からの抜け出しで着差以上だったのが秋初戦。勿論、1.0秒近く時計を詰める必要は承知。が、春には高速ダートでも結果を出している上に、そこでの対戦相手は恐ろしいまでに強力とこなせる範囲は広いのだ。
加えて、ここにきて5Fからのきついラップにも動ずることなくラストまで余裕の脚色。勝ち上がった前走でさえ一頓挫あったことを思えば、順調度で遥かにそれを上回っていることに。それを如実に物語る馬体のハリに惚れた。
ここからは2歳戦。出世レースの月曜・東スポ杯2歳ステークスを取り上げないわけにはいかぬ。頭数は揃わずとも価値を貶めることのないメンバー。殊に、底知れぬダノンザキッドに支持が集まるのはやむを得ぬ。
ただ、敢えてドゥラヴェルデ。
在厩でみっしり乗り込んだ夏場とは違うパターン。しかし、木村厩舎の本来でもあるのだから、本数の少なさは織り込み済みだし、1週前には7F追いを難なく消化と、外厩での進み具合を窺わせるには十分。しかも、3頭併せだった木曜には真ん中から抜け出しての先着。5F69.4秒の目立たぬ時計はセーブしたが為だし、デビュー前以上に全身を余すことなく使えている分、完歩がより大きくなった点を第一に挙げるべきなのだ。
要するに、今回のリフレッシュで成長度合いが加速。ハミにモタれ気味だった初戦とは別馬と見做すべきで、瞬発力に磨きがかかっているに違いない。
平場戦では日曜2Rのソングラインが確勝級。
6月のデビュー戦、勝ち馬と同等の上がりタイムながら及ばなかったのは、反抗する素振りがあったことと、大外を追い上げるロスがあった分。乱暴な競馬になってスイッチの入りが遅かったということなら、今回の1F延長が恰好になるわけ。
そして、稽古内容の大幅アップが示すように休養の効果は絶大で、成長を待ちつつの使い出しが功を奏すこと請け合い。何せ、古馬OPに食い下がった1週前があるかと思えば、1馬身遅れながら相手を時計で上回った最終追いでも余裕を持っての5F67.5秒と、変り身でも抜きん出ている。
新馬戦では日曜5Rのミッキーセレスタ。
追い切りはBコースで5F70秒を超える時計。が、古馬2勝クラスを軽くあしらう1馬身先着で大幅に時計を詰められそう。というより、若駒離れした迫力の先週があれば、感触を確かめる程度で十分だということ。
そこでは、月曜メインに臨むプラチナトレジャーに対して能力差を見せつけたほど。また、これまでのゲート練習では出からして素速く反応、加速までのタイムラグがない点で安定したレース振りも約束されている。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。