世代、性別の異なる三冠馬が3頭も顔を揃えること自体、奇跡的な巡り合わせで、頂上決戦という例えが相応しいジャパンカップとなった。
中でも、3年余りのキャリアでGⅠ獲得数を8に伸ばしたばかりのアーモンドアイは不世出と呼ばれて良い。
ただ、今春の安田記念ほどではないが、やはり中3週と間隔が詰まるのがプラスに働きようがない。事実、帰厩後の1本目が先週の金曜と微妙に遅かったし、捌きに硬さが。勿論、その1本で、スイッチが入ったのは分かる。3頭縦列の5Fスタートだった追い切りでは、コーナーで広がった先頭との差を直線に入るまでに挽回すると、あとは楽なまま。威風辺りを払うが如くの迫力で、ゴールでは測ったように前に出た。その変わり身が名牝たる所以で全身から発するオーラや迫力に翳りなしと言える。それでも、どうにか間に合わせたといった側面を払拭できない。
となると、3歳の二者択一。まずは・・・
「GⅠトリプルトレンド」で公開中!
↓↓↓
3歳だった昨年が惜しい2着だったカレンブーケドールも俎上に。
京都記念で水を開けられた2着とはいえ、今思えばクロノジェネシス相手なら仕方ないし、パワーアップを実感させたオールカマーは半ば出し抜けを食った惜敗。むしろ、強いと思わせたのはこちらであった。
何より、1週前の坂路では自己ベストの50.2秒を叩き出したのだ。なるほど、透き通るような皮膚の薄さで全身研ぎ澄まされている。
阪神メインはジャパンカップ同様に日曜の最終レースとなる京阪杯で、GⅢであればレッドアンシェルが主役の座に相応しいのは衆目に一致するところ。
スプリンターズステークスでこそ及ばなかったが、0.7秒差と崩れてはいないし、2走前からのブリンカー効果が覿面だからだ。別定57キロで臨めることでも追い風が吹いている。
ただ、今回が初の1200mになるプリモシーンを捨て切れないでいる。
2月・東京新聞杯で鮮やかに差し切ったのを境に今は五里霧中。馬体回復に向けて余念のなかった前走でさえ、15着で弾ける気配がなかった。
けれども、馬が勝手に止めただけに精神面に敗因を求めて良い筈。そのケアが立ち上げ2週の坂路。パターンを変えた効果が、DWに移ってからの動きに表れているし、直前などはラスト1F地点でも先行した馬の真後ろに入れたまま。それでも怯むシーンなしで、ゴーサインを受けてのアクション、後肢のバネを生かしたフォームで本来の推進力を取り戻している。
マイラーに特化させるべき体型とは言えないし、一気に走り切る距離であれば気持ちが途切れることもなかろう。劇的に変わって良い。
翻って府中、土曜11Rキャピタルステークスから。ここではピースワンパラディを指名する。
OP入り3戦目に前走で漸く結果を得た。一見、低調なメンバーに映ったが、勝ったドナウデルタには桜花賞トライアルで際どかった過去がある。それとほぼ互角だった上に、コース利は相手にあった筈。ピッチが落ちぬ中、自然体での追走から外に持ち出す安定した取り口だった上に、これまで以上に息の長い脚を使った結果の上がり最速。
また、ラスト2週の併せ馬ではいずれも遅れだったが、追走した分だし6F81.8秒の好時計も含む過程に非の打ちどころなし。前後のバランスにより秀でている点、体を目一杯使える分、実際より大きく見せている全体像がその証し立てになっている。今ならソーグリッタリングを負かせるのではないか。
同じOPでも2歳戦が土曜・カトレアステークス。ここは、実質の追い切りを月曜に済ませた2頭の一騎打ちになりそう。即ち、タケルペガサスとシンヨモギネス。
特に、タケルペガサスの前走は圧巻で、1.37.7秒自体が凄いし、追走に負担がかからぬペースだったとはいえ、上がり36.2秒がポテンシャルを物語る。さらに、今回は格上を追走態勢といったメニューは着実な進歩を感じさせたからこそで、若駒離れした筋骨隆々ぶりには目を瞠る。
ただ、敢えてキープイットシンポを。
前走はバックストレッチが長い設定。つまり、新潟との流れの違いに戸惑ったし、脚抜きの良いダートが合うタイプでもない。故に、再び盛り返した辺りを将来性と受け取って良いし、23日の坂路54.4秒で終えても良い態勢だったにも関わらず、木曜にもラストではシッカリとアクションを起こしていた。
半マイル標識手前から入って終いまで流した程度だった前回時と異なり、5Fから行き出せたこと自体が基礎体力アップの表れ。2度目の府中マイルも加味すれば前進は必至で、少なくともプラタナス賞で先着を許したシンヨモギネスとの逆転はあって良い。
2歳芝の特別戦、日曜8Rベゴニア賞はヴィクトゥーラ。
マイルでの1.39.2秒だったデビュー勝ちは道悪ゆえ。むしろ、綺麗なフォームを崩さぬまま回転数を上げるのが身上だから、雨に祟られた馬場をこなしたこと自体が強烈なインパクトに。
また、丁寧な仕上げだった反面、一旦緩める過程があったが為、腹目に余裕があったのも事実で、同じ1週前のDWからして大幅に時計を詰めたように本気度が違う。挙句、直前のポリでは手応え楽なままの上がり38秒を切って鋭さに磨きがかかった。好天が望める今回こそ本来の姿を見せつける。
平場戦ではまず日曜3Rのエクスインパクトを。
新馬戦特有のスローで他が牽制し合う中、体の使い方がままならぬ状態が続いて鋭さ不足のまま終わったが、本来は軽やかな身のこなし。実戦に行っての戸惑いがブレーキになっただけだから、経験値アップを見込むべき。
加えて、直前には芝コースに入れての併せ馬消化。スイッチの入った3F過ぎからはバターのようにスムーズな動き、加速ぶりが素質のなせる業で、1F11秒台突入には余裕があった。
潜在的な鋭さを表出させるには格好の追い切りを経て大幅な時計短縮が確実に。というより、未勝利などアッサリ脱しなければならぬ器。
日曜1Rのダート戦も叩き2走目をピックアップ、タピテールだ。
一旦は前を射程に入れてから甘くなったのが前走。ただ、牝馬でも巨漢の馬力型。脚抜きの良いダートをエクスキューズにして良いし、夏場に仕上りかかった時点で一頓挫があった分、稽古だけでは太目が残ったわけ。
同じようにオール馬なりの過程だが、5Fから速いラップを刻むメニューを課せられて明らかに締まった上に、反応が違ってきた。敢えて単走だった直前には全身にパワーを漲らせてのラスト12.4秒。併せ馬でも1F13秒台だった前回時とは雲泥の差。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。