季節の移ろいとともに、天皇賞への前哨戦を迎えること自体がシーズン本格化を思わせる。
その阪神大賞典は一強を巡る争いといった見立て。即ち、アリストテレスにとってはこの先を見据えた一戦に過ぎぬ。
確かに、2着には0.1秒差と際どかったアメリカJCCだが、極悪馬場の中、早目の動き出しで押し切ったことに価値を見出すべきで、勝ち味に遅かった3歳春と比べれば雲泥の差。
何せ、菊花賞ではコントレイルに真っ向勝負を挑んで三冠達成を危うくさせたほど。そこにはステイヤー資質が裏打ちされているから、今回の条件にもピタリと嵌るわけ。また、栗東入り後の追い日には、判で捺したようにCWでの6F追いを敢行、密度の上でも前回時を上回る。
昨秋の菊花賞をベースにすれば、明け4歳のディープボンドも俎上に。
こちらも積極的に動いた結果の4着と胸を張れるから。とはいえ、立て直しが困難だったとはいえ、中山金杯での14着は頂けない。それを含め、直線で坂を控えるコースではどうもパンチ不足といったイメージが。1週前の好時計が示すように、上積みは見込めるが、大本命との隔たりは如何ともし難い。
それならば、昨年の覇者ユーキャンスマイルに白羽の矢が立つ。
GⅠになるとひと押しが利かぬとはいえ、3歳の菊花賞以来、3000m以上では最低でも5着といった足跡には敬意を表さなければならぬし、スパートをひと呼吸遅らせた挙句、豪快に伸びた昨年のこのレースは圧巻のひと言しかない。今回、ラスト2週は同格との併せで、いずれもこちらが明らかに優る中身。+6キロが誤算だった有馬記念の轍を踏まぬといった意欲が伝わってくる。
年明けのGⅡ勝ちで波に乗るショウリュウイクゾが一定以上に支持されている。
しかし、今回は同じレース格でも別定戦で4キロ増になる上に、前走でも一旦抜け出してから詰め寄られている。2400mがギリギリと決めつけてよいのでは。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。