牝馬限定のハンデ戦のマーメイドステークス。夏場を迎える前の微妙な時期だけにひと筋縄でいかないのは傾向通りで、今年もその例に漏れぬ。
常識的に考えれば、アンドラステだろう。
しかし、2000mは初。勿論、センスの良さを前面に押し出す競馬でのステップアップが叶ったわけだから、今度こそ初重賞といった立ち位置。それでも、今回は骨折明けでのGⅢでもあり、同じ休養理由でいきなり勝ち星を挙げた一昨年夏(マイルの1勝クラス)とは状況が違う。
関西勢では明け4歳を重視したい。
牡馬相手の前走で上がり最速と切れを見せつけたアブレイズは軌道に載った。
加えて、後方一気だった1月・愛知杯の質は折り紙つき。問題はそこからの2キロ増しでトップハンデに躍り出たこと。小回りの利く軽量馬に対して分が悪くなるのは否めず。
昇級戦になるソフトフルートは前走で完全復活。
決して、中京替りだけが理由ではない。何故なら、伸びあぐねた
4月の京橋Sは、-12キロが示す通りの急仕上げ故。しかも、二段ロケットのような伸び、間を割って3着に食い込んだ秋華賞を振り返れば元値は遥かに上ということに。にも関わらずの54キロは恵まれた。
関東でまず取り上げなければならないのは、シャドウディーヴァ。
何せ、秋の牝馬戦線を考えるに重要な通過点となる府中牝馬ステークス2着があるように、力量のほどは今さら問うまでもないからだ。ここに至る過程、DWでの併せ馬は1本だけだが、そこでの好時計はさすがだし、坂路調整は近走のルーティーンでもある。
けれども、右回りとなると、中山牝馬ステークスのように安定味が半減。押さえがやっとか。
そこで重視したいのが新潟で行われた福島牝馬ステークス組。
最先着だったサンクテュエールには相応の敬意を払うべき。
レースの上がりが34.2秒と前目に有利な流れだったとはいえ、芝の生え揃わぬ特殊なコンディションの中、一瞬は先頭を窺うまでに。シンザン記念勝ち以来、眠っていたポテンシャルが目覚めたわけ。
これは、メリハリのある体になった成長力に依る。さらに、直前までコース追いでの3頭併せを敢行できたほどで、追走した分で僅かに及ばなかったが、1Fに限れば外2頭を上回る11.9秒とシッカリ反応。ユッタリと運ぶ形で新境地開拓といった段階だけに、上積みは確か。
しかし、この組で力を発揮し切れなかった2頭を敢えて取り上げたい。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。