夏・福島のラジオNIKKEI賞。
残念ダービーと呼ばれたのは今や昔のことで、メンバーの路線は多岐にわたる。
その中にあって、GⅡながら条件が似通っているのはスプリングステークス。そこからのチョイスがベースになるのでは。何故なら、タフな馬場での激しい凌ぎ合いと、皐月賞トライアルに相応しいレベルにあったから。
中でも惜敗だったアサマノイタズラは大威張りできる。
3角から捲って前を潰す形だった上に、勝ち馬に外から来られるともうひと伸びといった競馬には一目も二目も置くべきなのだ。確かに、直後のGⅠではあえなく退いたが、折り合いを欠いては仕方ない。使い詰めで精神的に追い込まれていたとも推測できる。
したがって、リセットしてのここ目標は格好になるし、より垢抜けたシルエットと良化は著しい。それが最終追いに表れていて、GⅠ3着もある4歳OPワーケアに対して脚色優勢のままラスト11.9秒と矢のような伸び。仕上げに寸分の狂いなし。
同じ皐月賞で振るわなかったのはシュヴァリエローズ。
しかし、遡ればホープフルステークスの5着がある上に、前走でも外に張られるロスが大きかった。また、照準を切り替えて稽古に関しては万全で、1週前などは6F80秒切りの好時計を馬場の外目を通りながら叩き出したほど。
けれども、右回りのコーナーワークに少々の難がある分、ローカル替りに不安は残る。
マイルでの決め手に秀でるリッケンバッカ―も、ここ2走を振り返れば格上的存在として良い。
殊に、一気に持ち時計を詰めてのNHKマイルカップ4着は凄い。ピンポイントより1F長いといった要素には目を瞑れるということ。
しかし、以上の3頭は重いハンデを課せられている。軽量でソツなく運べるタイプに対して分が悪くなるというのは当レースの傾向でもある。
侮れないのはヴェイルネビュラ。
上手く脚を温存できたわりにゴール前の勢い物足りずの5着だったスプリングステークス。けれども、馬体重とは裏腹に軽い走りが身上で、1週前の長目追いや直前のラストではその個性を際立たせている。直線半ばから自らハミと取って重心が沈む様にも目下の充実ぶりが。
抽選対象になる2勝馬からピックアップしたいのはヴァイスメテオール。
1000m60秒を超えるスローに嵌ったプリンシパルステークスだが、上がり最速の33.4秒と脚は見せたし、手前換えがスムーズでない府中だっただけにエクスキューズはある。
今回の美浦入り直後の印象として馬体に幅が出たと。ダービーを意識したゆえ、少々気に逸った仕上げだった5月に比べ、ユッタリと構えているのが何よりだし、3頭併せの真ん中だった追い切りでは痺れるような手応えのまま、どこまでも弾けそうな雰囲気を醸し出していた。
同じ木村厩舎、ボーデンも惚れ惚れする体になっての帰厩。
直前の併せ馬に至っては、以前にも増して力の漲るフォーム。道悪が凶と出た上に、真っ向勝負を挑んだ結果の0.3秒差だったスプリングステークス当時からの成長は確か。勿論、開幕週となれば別の姿を見せつけよう。
とはいえ、1勝馬ながらの55キロが伊達ではない反面、ハンデ抽選3分の1をくぐり抜けなればならないのが歯痒い。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。