直線競馬のアイビスサマーダッシュは、サマースプリントシリーズの中でも異質と位置づけられるだけに、他と切り離して考えるべき。
餅は餅屋といったスペシャリストが揃う中、やはりライオンボスに注目が集まるのはやむを得ぬ。
春・韋駄天ステークスが当舞台で初の大敗と一変が不可欠なパターンで臨むのが前2年と違うところ。しかし、その5月は変則開催ゆえ、馬場の荒れようが尋常ではなかった。しかも、最終追いで負荷をかけざるを得ない過程で状態面でも今ひとつだった分、エクスキューズは成り立つ。
対して、1週前にダイナミックなラストがあった上での追い切りがポリというのは謂わばルーティーン。昇り竜の勢いだった一昨年ほどの手応えはないが、上位に加わること必至といったデキにはある。
その韋駄天ステークス、鮮やかな差し切りを見せたのがタマモメイトウ。
【2-0-0-0】]と相性抜群の新潟であれば条件を問わぬわけ。しかし、前がやり合う中、外ラチ沿いがポッカリ開いたことが示す通り、如何にも嵌った感。直線競馬に対してなら底を見せていない点に重きを置くにしても、時計的な限界も見え隠れとまだ信頼を勝ち取るまでには至らず。
それならば、3歳2頭の変り身に期待するのが筋か。まずはモントライゼ。
満を持しての出走だった葵ステークスでは、向正面で不利があったことに加え、イチかバチかで内に突っ込んだ直線で窮屈にとアクシデント続きで度外視できる。
とはいえ、運びようによっては1400m~1600mも克服可能といった点で、純然たるスプリンターと言えない部分があるし、コーナーで息を入れつつというのが理想形。
オールアットワンスではどうか。
西下した2走前は-12キロといった誤算があったものの、そこから立て直した前走が思惑通りの巻き返し。しかも、その前走では馬を前に置く形をあっさりマスターできたように、幅を広げているのだ。突き抜けるような手応えの割りに詰めが甘くなったところからも、1Fの短縮が大きなプラスとして働きそう。
何より、胸前が一段と発達して推進力を増した上でのラスト12.1秒。思えば、デビューからの2連勝がまだ暑い時期。活発な新陳代謝が生まれる季節的な要素、51キロも手伝えば古馬勢に切り込める。
狙って面白いのがビリーバー。
昨年、頭+クビの惜敗だった事実を思い起こすべき。しかも、当時は函館での連戦から美浦に帰って新潟への輸送と負担が大きかった。逆に、今回は一旦放牧を挟んでのここ照準。また、元々は速い時計で動くタイプにしても1週前の5F64.4秒が実にリズミカルで活気に溢れていた。結果、直前は感触を確かめる程度といったBコースでの軽目。仕上げに寸分の狂いなし。
もう1頭の◎候補が、格上挑戦になるグレイトゲイナー。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。