15年のロードクエストを最後に関西馬に席巻されている新潟2歳ステークス。
しかし、今年は違うストーリーになりそう。アライバルの存在があるからだ。
6月のデビューで1.36.8秒が平凡な時計ながら、新馬特有の流れの中、坂下では壁に阻まれる状態に陥って外に持ち出すロスがあった。それでも、前が開いてからの伸びが桁違いで、抜け出してからは流したほどだから、数字には表れぬスケールを感じ取って良い。姉ククナよりボリュームのある馬体。纏う筋肉は収縮自在でその柔軟性に非凡さが表れている。
また、今回は、デビュー時以上に鍛錬を重ねたと思わせるハリを伴っての帰厩となった。実際、1週前には3頭縦列で先頭の古馬から1.0秒離されての5Fスタートだったにも関わらず、ラストで迫ってのゴール。2歳としては出色の上がり37.7秒だったし、直前の坂路でも最後には気合いをつける念の入れよう。前走を遥かに上回る。
同様に、大きな上積みを感じさせるのがクレイドル。
確かに、早目の抜け出しだった6月は、結果的にはクビ差とようやく凌いだといった印象。けれども、ハミが抜けるようなラスト50mで若さを露呈しながら勝ち切ったことには感心しきり。
加えて、そのウィークポイントが全く見られなくなったのがここに至る過程。ひと追いごとに時計を詰めた挙句の直前が5F66.8秒だった上に、首を上手く使って加速した。フォームが段違いに洗練されたのは一度のみの実戦を糧にできるほどの素材だという証。
関西勢で最右翼との下馬評がセリフォス。
着差以上と見做せるのは、追えば追うだけ伸びてのフィニッシュゆえ。しかも、ランクの違いを見せつけられた2着馬は、新潟に転戦して好時計勝ちと、補強材料も出てきた。
問題はそのデビュー戦。前半3F37秒を超えるペースだからポジションを取れたという側面もあった。そこに至るまでには幼さを露呈していただけに、周りのレベルアップに戸惑うシーン、なきにしも非ず。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。