天皇賞・秋、マイルチャンピオンシップが頂上決戦と例えられるほどのハイレベルだったのとは対照的に、香港との兼ね合いもあるジャパンカップは、それらに比べると上下の隔たりが歴然となるメンバー構成になりがち。
今年もその例に漏れず。したがって、シンデレラボーイの如くステップアップしてきたヴェラアズールを軽く扱うわけにはいかぬ。
何せ、2勝クラスの勝ち上がりが今年3月、それまではオールダートといった特異な経歴の持ち主ゆえに、芝に転じてからの快進撃には目を瞠らされる。特に、桁違いの末脚で前を捕えるどころか、そこから2馬身半後続を切り捨てた京都大賞典は掛け値なし。この中間は、自己ベストに近い6F79.9秒をマークしたことからも天井知らずの勢いがある。
けれども、少々渋り気味の馬場が大きなフォローとなった側面にも目を向けなければならぬ。不器用になりがちだった春の府中2400mでの2戦にも引っ掛かりを覚える分、連下の評価に。
やはり、当コースということならシャフリヤールだろう。
イレギュラーな展開だったことを差し引いても伸び足りなかったのが前走。そこに見え隠れするのは2000mに対する限界。逆に、ダービーを含め、当舞台であれば信頼度は高まる。特に、昨年などは1角での接触でリズムを崩しかけながらも立て直しての3着。仮に、スムーズであればコントレイルに際どく迫ったまである。ここ限定の能力といった要素に重きを置けば自然とランクは上がろうし、叩き2走目の効果も見越すべき。
同じ天皇賞組、シャフリヤールを負かしたのがダノンベルーガ。
夏場の充電によって前駆が大いに発達したと同時に、体質強化が目に見えて表れていたのが天皇賞に臨む過程。問題は、復帰していきなり1.57.7秒で駆けた反動あるやなしやになるが、その課題はクリア済みとすべき。
実際、先週の時点でもスムーズな歩様だったし、前回時も指摘した通り、厩舎定番の木曜追いに移れたことがそれを証し立てている。
その追い切り、馬場が閑散とした10時近くに馬場入り。そして、終い重点での4F54.3秒であった。しかも、全くの楽走で正味はラスト2Fとして良い中、ユッタリと構えた上で大きく体を使えており調子には太鼓判を捺せる。
勿論、今でも本質は2000mまでといった見立て。しかし、秋を迎えて重厚感が増したこと、切れより持久力といった新たな面を見せた前走から、2F延長はむしろ歓迎で、堂々たる主役になり得る。
もう1頭の◎候補はやはり美浦から。ユーバーレーベンだ。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。