夏競馬の口火を切るのが今週の福島メイン・ラジオNIKKEI賞。まず取り上げなければならないのは、実績通りにトップハンデを背負わされるショウナンワダチ。マイル路線のメインストリートを歩んできた馬だからだ。
単走だった1週前でもラストの伸びは上々。更に、直前でも抜群のスピード感で道中を進む。また、並ぶ間もなく交わした1F過ぎからは併走馬を一気に突き放す瞬発力で5F65秒4という破格の時計をマーク。さすがと思わせる動きであった。唯、身体能力に頼った走りで、あくまでもマイラー。器用さを求められた上での56キロとなると食指は動かぬ。少なくとも、主力が確実視される白百合S経由の関西2騎に及ばないのでは…。
朝の早い時間帯はクラリティシチー。何と、古馬OP・ダイワファルコンを5Fで2馬身追走する驚きの行き出し。内にもぐり込んだ直線では前肢を地に叩きつけるような豪快な身のこなしを披露してスピード感も十分。相手が相手だけにゴールでは1馬身及ばなかったものの、ハイレベルな併せ馬を消化できたこと自体が充実の証し。
それと時間差なく最終調整を終えたのがウインマーレライ。併せ馬とはいえ、楽走での5F70秒9は一見して物足りなく映る。が、先週の木曜が実質の追い切りで6F77秒5と驚異的な時計をマーク。リズミカルな動きで素軽さも満点。小回りでの早目のスパートが似合うだけにコース替りでの躍進が期待される。それでも、中山2戦を振り返ればクラリティCとの能力は決定的。1キロのハンデ差では溝は埋まらぬ。
それならば、同じウインでもウインフェニックスの方。こちらは木曜のウッド追い。朝の早い時間帯に正面からコース入り。2歳との併せで5Fスタート、加速は半マイルからで直線では外目に。ラストは13秒1でも張りつめた馬体を目一杯使ったアクション。5月以来となるが、当時より幅が出て成長を実感させる点で圏内突入と判断。
底を見せていない魅力でラリングクライ。自厩の他6頭とともにウッド入りしたが単走。洗練された立ち姿で速さに頼ったマイラーでもないのに、2勝目マークの際には上がり33秒6をマークしても余裕。奥行きをアピールするには十分過ぎるし、木曜もしまい重点ながら見事なフォームで駆け抜けたラストは12秒6。勿論、まだトモが角張った印象で良化余地を残す馬体で54も見込まれた。それでもスケールの違いで上位に加わりそう。
GⅡ6着だった4月・中山だけ走れば勝負になって良いのがイタリアンネオ。6F追いながらウッドでの上がり37秒6は凄い。直線でのシャープさ所以。けれども、帰厩当初は前の出が硬く全身を使えない時期が続いた。先週から漸く上向いたといった感じでももう一追い欲しいのが正直なところ。
最後に最終追いが木曜だった馬をピックUP。6Fから14秒5のラップで入りながら最後まで力強い動きをキープできたカウニスクッカがそれ。この中間はメリハリの利いた稽古で精神面での成長さえ。軽ハンデを生かしての食い込みが可能な状態。
土曜メインの準OPのスプリント戦。叩き2走目のマイネルエテルネル◎が常識的だが、ラフレーズカフェの復活に賭ける手も。これまでの坂路に比べれば負荷のかかるウッドでのメニュー消化がきっかけとなりそう。実際、余裕ある動きで5F67秒7。筋肉の質がUPした体の造りなら、近走の不振を忘れるべき。
今週は特別戦が手薄。代わりに最終Rは土日ともに面白い。まず短距離ダートの方がマーセブナカヤマ。カウニスクッカ相手に先行して半馬身遅れ。が、追い比べで劣ったのはタイプの違いだけで、コース取りからも中身の濃さが伝わる。多少太いがパワフルでスピード感も十分。大型でも小足が使えるタイプだけにローカルが最適。同じ3歳キョウワMへが本線。降級4歳で稽古量も足りているエムエムアリオーンに人気が偏るようなら旨味が増す。こちらは小回りがネックになりそうだからだ。
土曜はオメガグランディス。ひと追いごとにレベルUPして最終追いのポリでは実戦さながらの併せ馬で3F37秒5~1F12秒3。気合いをつけた程度でのタイムだけに1週前とは格段の差。実戦が近づいたことを承知したような良化ぶりで、500万下の範疇を超えた動き。器用さに欠ける嫌いはあるものの、前目に位置できるメンバー構成だけに4角先頭というパターンに持ち込めばウィークポイントを消せる。
場所替りになるのは関西も同様。スタートする夏・中京からは白川郷S。OP落ちもいる強力メンバーだから今後の参考にもなるレース。ここは、敢えてブラインドサイド。確かに、定量戦では分が悪い。唯、先週でも使える態勢にあって更なる良化を見せたのが最終追い。行き出しは半マイルだったが、人馬一体となった直線では正に'跳ぶが如く'のフットワーク。これまでには見られなかった柔軟性と力強さで重賞級と見紛うような動きでオーラさえ感じる。今回狙わなければいつ狙う?といったレベル。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。