宝塚記念のファン投票1位は、当然ながらイクイノックスで、それに相応しいのは誰の目にも明らか。
実戦を重ねてレベルを上げていくパターンが叶わぬ体質ゆえ、キャリアの浅い時期には取りこぼしがあった反面、3歳秋からは無人の野を行くが如し。天皇賞からは全て着差以上だったのに加え、ハナを切ったドバイは持ったままの状態がゴールまで続いたほどで、どこに到達点があるのか未だに掴めぬ。
問題は、海外遠征からの立て直しといった状態面に尽きる。そして、そのケアとして栗東入りがある。確かに、美浦での調整段階では緩さが大いに残っていたが、その後には併せ馬2本。直前に至っても7F追いを敢行せざるを得なかったことが、どうにか間に合わせたといった印象を与えるものの、皐月賞やダービー時に比べれば容易かろう。8分に届いていれば連勝を伸ばせること請け合い。その能力に逆らう必要はないだろう。
早目の関西入りが続いたが為、美浦での追い切りが2頭のみになった中、アスクビクターモアはルーティーンの単走。
念願のタイトルを獲得した昨秋とは対照的に、9→11着と見せ場さえ造れぬのが今季。しかし、自分の型に嵌められないままの結果だけに見限ることなどできない。
実際、1週前に負荷を一気に上げた効果で、リラックスした走りで見た目には軽かった直前は、豪快な身のこなしを見せつけた。5Fで1.0秒も詰めた辺り、気持ち面でも張りつめた模様。GⅠゲットが阪神内回り、それをイメージしての巻き返しは必至に。
もう1頭、ライラックのデキには瑕疵がない。
ガサのない牝馬だけに、楽な相手を選んだ最終追いは長距離輸送を控えているが為で、キャリアのピークだった3走前との比較でも中身は濃い。けれども、調子云々より、地力強化が期待ほどでないことを示しているここ2走がある。無論、エリザベス女王杯での激走があった分、コース替わりに望みを繋いで良い。それでも、そこでさえ勝ち馬との差は決定的。
牝馬で取り上げるのはジェラルディーナのみで良いはず。
≫ 続きはログイン内で





柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。