2週目を迎える夏競馬、福島のメインは名物レースの七夕賞。
ローカルのGⅢだけに、ひと筋縄では収まらないと予め受け入れなければならないと同時に、今後に繋がらぬレースでもある。つまり、旬の見極めが最重要課題になるということ。もっとも、それは各馬の立ち位置を把握した後の匙加減。
まず取り上げなければならないのが連覇を狙うエヒト。
何せ、昨年は直線入り口で勝負を決めるほどのワンサイド。抜群の福島適性を見せつけた上に、6歳を迎えてからはGⅡでも通用と着実に力をつけている。
しかも、中間には自己ベスト更新の坂路48.9秒をマークと熱心そのもので、海外遠征の反動はないように映る。
しかし、ピークに持って行けた去年に比べると速い時計が1本不足しているのに加え、当時からの4キロ増し。主役扱いとはいくまい。
ハンデと実力の兼ね合いといった点で優位に立つのは4歳になろう。その最たるがフェーングロッテン。
今季を迎えて3、2、2着と勝ち切れないまでもGⅡ制覇まであと一歩に迫ったことさえ。そのいずれもがハナを切ってのものだけに、同型を如何に捌くかがポイントになると考える向きもあるだろう。しかし、その見方は妥当でない。
何故なら、一本調子のレース運びではなく、一旦は引きつけて弾けさせる味を兼ねているからだ。実際に昨夏・ラジオNIKKEI賞では好位から内を掬っての抜け出し。そこからの地力強化も含め、信頼度は高い。
セイウンハーデスも争覇圏にある。
そのフットワークから決して有利に働く筈もない極悪馬場だった新潟大賞典では、3着以下に8馬身と水を開けるマッチレースに持ち込んだ挙句の惜敗とポテンシャルを示した。なるほど、完成前だったプリンシパルステークスでの勝利、その秋のセントライト記念でさえ果敢に挑むレース運びでも4着に踏みとどまっただけのことはある。
ローカルが格好になる点を既に証し立てているのに加え、1週前の長目追いでは1F11.0秒。これまで通り、実質の追い切りとなる場面において復帰後一番の伸び。サマー2000シリーズをターゲットにしての進化、とどまるところを知らぬ。
関東馬バトルボーンが底知れぬ。
無論、日経賞に向けてピッチを上げている最中、鼻出血に拠る頓挫は痛かった。けれども、結果的にプラン通りだったとしたら不良馬場でタイトルホルダーについて行くという、厳しい競馬を強いられたことからむしろ僥倖ではなかったか。
目標を切り替えて仕切り直しが叶ったのは、スタイリッシュな体のまま帰厩したことが示す通りで、その後には追い日ごとにシャープな身のこなしに。セーブ気味でも十分だった最終追いが物語るように仕上り面での瑕疵なし。
遡れば、全世代に亘ってもトップに近いランクにあるダノンベルーガに食い下がったのがデビュー戦。それだけの器にも関わらずの56キロは恵まれた。広いコースでこそマックスになる特性、ネックになりそうなローカルといった点には目を瞑りたくなる。
3連勝で今回がOP初戦になるテーオーソラネルを侮ってはいけない。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。