エルムステークスは、ローカル特有の立ち位置にあると決めつけて良い。
それは、交流重賞と並行しつつだけに、メンバーが分散する傾向にある上に、北海道という限定されたブロックでのレースだから。
実際、ここ3年の勝ち馬は、押し並べて前哨戦にあたるマリーンステークスから直行、勢いそのままに連勝を果たしている。
天邪鬼が頭を擡げがちな向きにとっても、今年のペプチドナイルに逆らうのは少々無理がありそう。
昨10月にOP入りを果たして以降、4着が最高だった今夏までと大きく異なり、函館ダ1700mではノンストップ。いずれも1000m通過61秒を切るペースの中、その2戦での合計の着差が6馬身半に及ぶのなら独壇場と総括して良いわけ。特に、直線に向いて軽く気合いをつけるだけでも上がり最速の36.1秒でまとめた前走は圧巻。
当時は中7週で、直前の1本が5F70秒を超える時計だったのとは対照的に、今回は、1週前の好時計から追い切りに至っても5F、ラスト共に前回時を上回っているように、更なる上積みさえ見込めるのだ。
57.5キロからの0.5キロ減、斤量利もあれば揺るぎなしとすべきか。小回りの当距離と滞在での調整が大いに噛み合った結果の大変身。それが覆される根拠は不測の展開にしか求められぬ。
不測の展開、それは、ダートを求めて参戦してきたベレヌスが鍵になるということ。
6歳を迎えてトウが立ったように見えるが、直近の重賞勝ちが昨7月ということなら終わったと見做すことはできぬし、初ブリンカーだった前走ではより軽快になったのに加え、それまでの淡泊さが打ち消されつつあったではないか。
勿論、捌きに硬さがある巨漢といった点で路線転換による劇的な変わり身さえ。ペプチドナイルのペースを乱すと同時に、捨て身の逃げが奏功するシーンあり。
同じように芝からここに来たのがオーソリティ。
これに関しては疑いの目を向けたい。確かに、ジャパンカップ2着を始め、名うてのステイヤーとして鳴らした過去、格的には最右翼として良いし、パワフルな身のこなしからもダートで急失速するとは思えぬ。
けれども、今回は骨折明けの上に、6月のエプソムカップが当初の目標だった経緯が。現に、5月にはピリッとしないまま外厩へのUターンがあった。また、再度入った美浦では2歳の練習台といった風情での立ち上げと感心できなかった。何より、大箱の左回りでこそといった個性からも、ダ1700mが重い足枷になりそう。
関東勢で最も魅力を感じるのはワールドタキオンで、これの◎まである。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。