3週目を迎える中山のメインはオールカマー。
今後、各馬の路線が分かれるだけに、ここでの対決が次に直接繋がることはなかろう反面、GⅡとしても上質なメンバーによる凌ぎ合いに。
最初のテーマは何と言ってもタイトルホルダーの復活、なるや否や。
疾病発症に拠る天皇賞・春があっただけに、トップフォームに回復させるのは容易くない。けれども、完全に癒してからの美浦入りというのは、盛り上がった筋肉が示す通り。
加えて、若い時分と異なり、意のままに操つれるようになった分、調教の本数だけ実になった結果、意図的に前に追いつかずに楽走といった雰囲気のままだった直前でさえ上がり37.6秒。ワンサイドだった日経賞より1キロ軽い斤量、当距離でのレコードホルダーでもあり、主役扱いが理に適っている。
これに追随するというか、ライバル視して良いのが、連覇を目論むジェラルディーナ。
確かに、昨年は横山武が上手く誘導した結果、コースバイアスのある馬場を味方につけての快勝。しかし、直後のGⅠ制覇があって、有馬記念では出遅れを跳ね返しての3着。強引に追い上げた宝塚記念でも崩れずと、進化を実感させている目下がある。
昨年同様、単走2本から追い切りでの併せ馬と確立させた仕上げパターンでも時計は速く密度が濃くなっているのが何より。ピンポイントの2200mに対する信頼度は自然と高まる。
関西勢でピックアップしなければならないのがガイアフォース。
マイル路線に転じた春には2、4着。守備範囲の広さにポテンシャルが表れているし、3歳時には同じ舞台でセントライト記念制覇。その時計が翌週のオールカマーを0.9秒も上回っていたことからも主力に。
それとは対照的に、今季初戦のアメリカジョッキークラブカップで振るわなかったのがネックになりそうだが、冬場の重い芝に脚を取られただけと敗因は明らか。高速ターフで野芝のみになるこの開催はマッチすること請け合い。
また、1週前には自己ベストを更新しての坂路51.2秒とシッカリ攻められた。細工は流々仕上げを御覧じろ。
ガイアフォースとの比較で、一見すると分が悪そうなのがローシャムパーク。
何故なら、セントライト記念における直接対決で後塵を拝したから。しかし、当時はまだキャリア5戦目で2勝クラスの身分。そこからであれば長足の進歩と捉えられるのは、着差以上の強さだった函館記念が示す通り。
加えて、一段と張りつめた馬体、全体像に目を移しても格段に厚みが増しているのだ。それを存分に駆使した追い切りでは、痺れるような手応えのまま、1F過ぎから瞬く間に前を交わした。凄味さえ感じさせる上昇ぶり、GⅡで臆することなどなかろう。
能力は折り紙付きのウインマリリン。
香港でのGⅠ勝ちがあるし。2年前に当レースを制していることからも芝中距離でなら最右翼としても良いぐらい。
しかし、ノープランでの見切り発車といった要素を差し引いても直近での淡泊なレース振りには首を傾げざるを得ない。無論、そのひと叩きでピッチを上げられた結果、計3本の併せ馬では余裕の手応えに終始と、良化を辿っている。
とはいえ、一応の伸びで時計的には及第点でも大きく体を使えるまでには至らず。オークス2着からの飛躍を見込んだ3歳秋、2年前のオールカマーを境に陥った長いスランプなど、状態の波が大きいタイプで一変を期待するのは酷か。
それならばノースブリッジで、こちらの◎まである。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。