イクイノックスが無敵の快進撃を開始したのが昨秋の天皇賞・秋で、再びこの舞台に戻ってきた。
4歳を迎えてからは、最後は流した程度で後続を寄せつけなかったドバイあり、タイトな流れの中、捲りに出るという常識外の競馬でも勝ち切った宝塚記念ありと、進化が明白に。
勿論、外厩を存分に生かすパターンが板についているし、美浦入り直後からスタイリッシュなままで風格を漂わせているのは相変わらず。
加えて、昨年の同時期に比べると正面からウッド入りしての長目追いの本数で上を行っている。その効果で、最終追いの3頭併せでは滑らかにして迫力満点の1F11.3秒。無論、大目標は、多額のボーナスを得られるジャパンカップだろうから、張りつめたといった仕上げではない分、隙があって不思議ないが、むしろ怖いのは半端な仕上げで使った反動にあるのでは。そのローテーションを根拠にして割り引くのは無謀に思える。
それでも、ダノンベルーガには逆転の目があるのではないか。
確かに札幌記念4着には感心できぬ。けれども、経験のない北海道での調整が足枷になったのは想像に難くない上に、皐月賞が示す通り、コーナー4回での消耗が大きいタイプ。つまり、ここに向けての叩き台と割り切って良いわけ。
実際、昨季からであれば格段に厚みが増した馬体を躍動させているのに加え、3F過ぎから刻む速いラップにも難なく対応できているのは、洗練された身のこなしを我が物にしたが為。
結果、最終追いなどは、同じくここに臨むヒシイグアスを前にやって選んだコースはその外、楽な手応えでの5F65.4秒には目を瞠るばかり。ダービー以来で4F追いだった昨年とは全く違う。
その昨年は、離し逃げのある難しい流れに翻弄された挙句、伸び伸びと走れぬコース取りがデリケートな差となって表れただけ。当距離であれば長く脚を使える特性があって、一度跨ったモレイラ。背水の陣と三拍子揃った。
当然ながらドウデュースも争覇圏としなければならぬ。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。