群雄割拠といったここ2年と異なり、ほぼ一強と捉えられているのが今年の日本ダービー。
当然だろう。無傷でここに到達したジャスティンミラノがいるのだから。
共同通信杯まではセンスを前面に押し出すレース振りで、いずれもが前半3Fが37秒を超えるスローの中、位置取りでアドバンテージを得ていた。
逆に、離し逃げを打ったメイショウタバルが1000m通過57.5秒で飛ばす中、3角過ぎから押して仕掛けた結果の驚異的なレコード勝ちだった皐月賞は掛け値なし。そのレース振りから2Fの延長が足枷になるとイメージできないし、最終追いの坂路からして54.2秒と前回時を上回っているのに加え、それまで2本のCWが5F66秒台連発と鍛錬に余念なし。素直にここから入るとする向きに異を唱えることはできぬ。
それでも、一冠目がクビ差の惜敗だったコスモキュランダにもチャンスはある。
その皐月賞では、勝ち馬を目標に進出した分、最後の最後で詰め寄れたといった側面はある。しかし、スローを見越したマクりが嵌った弥生賞と違い、向正面までは内々で我慢を利かせてからのスパートと幅を広げた上で、ジャスティンミラノを0.5秒凌ぐ上がりタイムをマークと、距離延長が大きなフォローになりそう。
前走時、2週前の稽古で集中し切れぬ面を露呈していたのとは逆に、この中間はその気配が微塵もない上に、強度を一気にアップさせた1週前を境に、更に洗練された造りに。
府中実績こそないが、それはチークP着用以前の話。軌道に乗ったのが今季を迎えてという叩き上げ。雑草魂で沼田を下した小林弘の如く、載冠まである。
牡馬相手の2歳GⅠ覇者レガレイラの皐月賞は度外視して良い。
何故なら、充電を経ての臨戦だったわりに、+2キロと萎んだ印象の当日があったし、スタートで寄られて思い通りのポジションで進められなかったから。乗り慣れたルメールに戻ること、切れが身上で高速ターフが変わり身を促すこと必至とすべき。
けれども、体つきが劇的に変わったと思えぬ見た目で、感触を確かめる程度の3頭併せまではプラン通りだっただろうが、他に先んじてトップスピードにチェンジできた昨年暮れほどではなかった。そこからの成長力に疑問符がつく以上、連下の評価からは脱せず。
それならば、皐月賞の着順を受け止めてアーバンシックをより上位に。
そこでは、こちらもダッシュがつかずに後ろから。それでも、より緩いペースで進んだ京成杯よりもスムーズなコーナーワークを駆使して押し上げられたのは収穫で、一度の経験を糧にできた辺りが非凡。
何より、前躯がまだ勝っていたこれまでと異なり、バランスに秀でてきた。その結果、ラスト2週で一気に高くなったハードルを難なくクリアして、古馬OP馬に対してポテンシャルの違いを見せつけたラスト10.9秒で締められたほど。差はまだまだ詰まる。
未知の魅力でシックスペンスを取り上げる手も。
3戦3勝と底知れないし、基礎体力不足で麗しい見た目に動きがついて行かなかったにも関わらず、危なげないまま通過してきたのだからスケールのほどが知れる。しかも、最も着差が広がったスプリングステークスなどは、4角で既に勝利を手にしたと思えるほどの奥行きが。
また、今回は大目標を据えた効果で、追い日1本目からしてDW5F64秒台突入と時計だけでも進化を裏づけている。さらに、よりシャープな体の運びで鮮やかな上昇カーブ。府中未経験といった点には目を瞑れるだけのデキに。
一変を見込んで良いのが堀厩舎の2頭で、まずはダノンエアズロック。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。