ユニコーンステークスに代わり、春の東京開催最後の重賞競走となったエプソムカップ。
ヴェルトライゼンデ。
しかし、2度目の屈腱炎による長期ブランクを経たのが今回のネック。確かに、同じような状況だった一昨年の鳴尾記念が示す通り鉄砲が利くタイプで、坂路の一杯追いが3本と量的には及第点を与えて良い。
とはいえ、鳴尾記念当時の追い切りが併せ馬での50秒台突入だったのに対し、それより遅い時計での単走。また、キャリアのハイライトがダービー、ジャパンカップのクラシックディスタンス。キャリアの浅い時期に勝ち鞍のある1800mとはいえ、本質は別にある分、底力を買ったとしても押さえまで。
となると、レーベンスティールが自然と浮上する。
今季初戦の新潟大賞典では伸びる気配を全く感じさせぬまま11着と案外。しかし、海外遠征の反動から立て直すのに手間取ったことで、幾分太いままの臨戦とエクスキューズはあった。
対して、短期放牧を経た今回は、美浦入り後に水、日と判で捺したような時計の出し方で順調さを強調できる。なるほど、腹目が薄くなったと同時に、その分が前躯の厚みに移ったかのよう。1週前にしても、5Fで前走時の最終追い切りより1.0秒以上速い時計を叩き出したし、流す程度だった木曜追いの相手2頭の一角はGⅠホースのレモンポップといった豪華版。見た目、動き共から伝わってくる9分以上の印象であれば、別定59キロなど、懸念材料にならぬ。
前走で漸くOP入りしたグランディアは、クラスが上がったとて臆するシーンはなかろう。
3勝クラス入りしてそこを脱するのに1年以上要したのが示す通り、勝ち味の遅さに泣いた時期があった。けれども、直線に賭ける形になった前走が目の覚めるような豪脚と、ひと皮剥けたタイミングでのGⅢ挑戦。
4歳時には、当舞台で一旦は完全に抜け出しての2着があって、そこではローシャムパークの決め手に屈しただけならむしろ胸を張れる。その走破時計1.45.2秒と上々。コース適性を物語っているではないか。
ニシノスーベニアを抜擢する手はある。
早目の進出から直線入り口では勝負を決める強さでOP入りを決めた2走前が圧巻で、進化の度合いは劇的とまで。同じ舞台だったダービー卿チャレンジトロフィーは、4角までに前目にいることが必須になる展開の中、総括すれば消極策で脚を余したと断言できる。
加えて、その前走時から週末に負荷をかけてからの坂路といったパターンが確立されたし、今回の最終追い切りに至っては、前回時を2.7秒上回っているように、鮮やかな上昇カーブを描いている。コースでのキャンターだけ見ても充実した馬体が目に飛び込んでくるほどで、ベストより1F長い距離でも首位争いに加わること必至。
シルトホルンを侮ってはいけない。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。