依然として舞台は新潟だが、番組にGⅠへのトライアルが並ぶと秋競馬を実感できる。土曜メインに組まれているのが紫苑S。水曜想定段階では500万下で10分の6という関門。そのエントリーぶりが示すように、春の実績が否定される傾向にある。消長の激しい牝馬ならでは。
オークス3着馬バウンスシャッセは、美浦帰厩後は坂路中心で追い切りも同様。4F55秒2であった。従って、当コラムの主旨に合わぬ故、詳細は割愛。唯、古馬との初対戦だった函館記念での大敗を糧と受け取るか、ダメージが深いと見做すかは微妙で絶対視できないのは確か。
猛稽古を披露したのがカウニスクッカ。正面からウッド入りしての長目追いで、5Fから13秒台とハイラップ。内目とはいえ、6F80秒6は並大抵でない。しかし、距離に限界があるタイプ。同様に、馬体の造りからして成長の窺えるマイネグレヴィルも高速上がりに対応できるかが疑問。以上の2頭は適性の問題で軽視。
注目したいのはカーネーションC組。関西馬ショウナンパンドラは勿論だが、ヘイジームーンも叩き一変。1週前にウッドで負荷をかけて直前は単走。5F69秒1と数字的には控えめだが、弾むようなフットワークで四肢に力が籠っている。リズミカルな動きが生まれるのはその為で、前走時には見られなかった点。秋華賞への切符を確保できそう。逆に、少々迫力不足だったのがマローブルー。追走して余裕の手応え、4F51秒9も速い。けれども、切れに優った動きは以前から。馬体に幅が出ていない点が減点材料。
むしろ、最終追いだけウッドで5F70秒を超える時計だったマイネオーラムの力強いアクションの方が魅力的。もう1頭挙げるならデルフィーノ。朝一番の3頭併せで唸っていた。最後尾から内にもぐり込んで一杯になる他を尻目に素晴らしい反応で先着。視界のきかない時間帯だったが、ひと際輝きを放っていた。夏を越しての成長度なら群を抜く。対戦比較では分が悪くても、どうにかして印を回すつもり。
今年に限って京成杯AHは、関屋記念の焼き直し。となると、3歳の劣勢は否めぬか。唯、直前がウッドでの3頭併せだったショウナンアチーヴには上積みがある。他厩が混じっての先行態勢だったが、びっしり追って他を寄せつけなかった。同馬にしては時計も速いし、引き締まった馬体も目を惹く。しかし、ハンデ55は見込まれた感。最内に脚色劣勢だったものの、比較の対象がイスラボニータであれば仕方がなかったのがシャイニープリンス。むしろ、鋭い反応での1F12秒2が凄い。乗り方ひとつで上位との差は詰まる。
追い切る前までは期待していたゴールデンナンバー、2度目のハロー明けにラッシュよりワンテンポ遅れてウッド入り。以前より矯めを利かせた行き出しで5F69秒6。馬がストレスを感じていない様子には好感が持てる。唯、1週前も同様だが、ラストで体が伸び切らない。本来はもっと調教で目立つ馬だけに少々物足りなく映った。
関屋記念時には当欄で推奨したエクセラントカーヴは完全復活と考えて良い。しまい重点ではあっても、5Fからのスピード感は前走以上だし、しなるようの身のこなしでゴールに近づくにつれ、回転の速さが増すフットワーク。余力残しでの1F12秒3と前走以上は確実。が、上昇度ならサトノギャラントも同じ。こちらは坂路追いだったが、オーバーワークを避けた前走より濃密なメニュー。◎は二者択一といったところ。
西は小倉から本場移って、直前輸送が可能となる。セントウルSには勢いのあるバクシンテイオー。とにかく、はち切れんばかりの馬体が充実を物語る。直前はしまい重点が基本の堀厩舎だが、セーブ気味でも5Fから時計になったし、上がりの38秒8も楽にマークできたほど。ここ2走は規格外の末脚。以前とは別馬と見做すのが妥当なら、展開頼みだった以前の小倉1200での同馬の姿も忘れるべき。なお、札幌では本来の速さを見せたフォーエバーマークはポリでの単走で4F56秒8。依然として硬さがとれないから、上位に加わるのは困難そうだがハクサンMの一人旅を許さないだろうまでのレベルには達した。
阪神・土曜メインに関東から唯一出走のタイセイスティングが面白い。まだ暗い朝一番に僚馬3頭を引き連れて馬場入り。結局は単走になったものの、切れのある動きで5F68秒3という数字以上のスピード感。前走は乱ペースに巻き込まれた点、北海道での除外でローテが狂ったことが敗因。今の今まで未経験だった1400が最も合うのではないか。
新潟の特別戦で面白いのが土曜の妙高特別。先行しての先着とはいえ、外ラチ沿いのコース取りながら1F12秒2と鋭く伸びたアナザーバージョンが好調キープ。これのライバルがハイパーチャージ。5F70秒6で一杯だったが、相手のペースに合わせた道中ゆえに時計平凡でも心配なし。むしろ、全身を使ったアクションと体のハリから状態は間違いなく良い。これらの有力処に絡むのが、底を見せていない3歳メイショウワコン。
土曜からもう1鞍。最終Rのアースゼウスは骨折明け2走目で堅軸。人気の薄そうなところで相手となりそうなのがカシノスティーヴ。最終追いでは僅かに劣ったが2週続けてのDコース追いで64秒台連発と好仕上り。ハードなメニューを課す蛯名厩舎らしい過程を踏んでいきなりの大駆けが可能。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。