関東馬の連対は2010年まで遡らなければならないスプリンターズS。その年でさえ降着による繰り上がり。栗東勢の層の厚さには一目置くというのが前提。が、今年の舞台は変則開催による新潟。つけ入る隙が生じるのではないか。
坂路調整を続けるスノードラゴンやセイコーライコウ、滞在を選んだハナズゴールに関しては割愛させてもらう。コースで目立つ調教を終えた馬に詳しく触れたいからだ。
まずは古豪サンカルロ。十分な助走を取っての6F追いというのが、ウッドでの大久保洋厩舎。同馬もその例に漏れず行き出しから14秒0のラップで飛ばす。道中の勢いをキープしたまま直線に向くと徐々に外へ。最終的には7分処まで持ち出しての併せ馬で1馬身先着。それも一杯になるパートナーを尻目に抜群の手応え。コースロスを考えれば6F80秒2は上々のタイムで、引き締まった体は年齢を感じさせぬ。札幌での一叩きは効果抜群。しかし、前年もこのパターンで8着。実戦へ行っての機動性に翳りが見られないこともない。印が回るかどうかといった程度。
逆に、充実期を迎えているのがガルボ。元々、調教駆けするタイプとしては有名で、美浦でも一、二を争うほどのジムファイター。それを差し引いても先週のウッドが圧巻で、僚馬4頭とともにウッドの向正に姿を現すと、4番手だった5Fのスタートから、ハロン標を過ぎるたびに順位を上げ、最終的には先頭だった馬と同時入線。結果、5F64秒2の好時計をマーク。直前のポリでは控えた為、3F38秒0とこの馬にとっては目立たぬ時計だが、全身を駆使したフォームで躍動感満点。前走後、間隔を開けたことで調整が難しいように思えたが、無理使いを避けたローテが功を奏したのは間違いない。
ベストは1400だった馬。そこでは立ち回りの上手さがアピールポイントであった。が、1F短縮する条件で強烈な決め手を得た。新潟は初になるが、持続性のある末脚とは言えないだけに、急なコーナーや直線の短さを味方につける可能性が高い。コース適性があると考えて◎候補に。
2場開催のもう一方、阪神のメインは土曜のシリウスS。ここ2走で勢いが止まった印象のジェベルムーサだが、北海道での敗因は高速ダートに尽きる。2週前、6F追いを敢行した時点で息がデキていたし、動きもダイナミック。また、メリハリのある馬体で砂馬としての完成形に限りなく近づいた。実際、オーバーワークを避けた最終追いでも追走して内、痺れるような手応えのままゴールに飛び込む見事なフィニッシュであった。
5月・平安S時は直前まで馬を追い込みすぎた。その反省を踏まえた過程に好感が持てる。唯、京都1900で最後に伸びを欠いたのは状態面だったか?距離に対する限界だったかは微妙なところ。
大竹厩舎で西下を決めているもう1頭はショウナンワダチ(日曜11R)。こちらは感心できぬ。先にダート馬と併せたのが1週前。3馬身先行する態勢ながら追い比べで1馬身の遅れ。1F13秒2でも余力はなかった。本来は稽古で秀逸な動きを見せる馬。3月以来の実戦となる500万下に脚色で劣った最終追いからも本調子にはないと判断すべき。
新潟土曜メインは準OPのハンデ戦。ここでの推奨はいずれも最終追いが坂路。唯、前週のウッドで密度の濃い調整を積んだマイネルメリエンダとパワースポットの調子は間違いなく良い。どちらを軸に据えるべきか迷うところ。
他の特別レースでは日曜・最終RをピックUP。ダート馬として開眼したトロワボヌールは底知れぬ。一息入って本数が少ないように見えるが、帰厩直後から引き締まった体で動きも力強い。直前の5F70秒5にしても馬場の荒れた時間帯だったし、今週のウッドは力を要するコンディションだから、1~2秒速い勘定。四肢に力がこもった捌きで仕上り上々。唯、得意の左回りとはいえ、コーナー4回が勢いを殺ぐ恐れも。
中山や福島では大雑把な競馬だったキープインタッチにとって新潟はレースがし易そう。2週続けての3頭併せでいずれも最後尾からの追走と中身は濃いし、1F13秒台と目立たぬ数字も相手に合わせた故。1600万下で限界を示すとは思えぬ。
以上の2頭を差し置いて主役の座を射止めそうなのが3歳フィールザスマート。7月・大井以来になるが、ひと回り大きくなった印象。これは良質な筋肉をバランス良く纏った為。それを駆使したフォームも魅力的だが、ゴールに向かうにつれ重心を沈めて推進する様が既に風格漂う古馬のよう。直前の3頭併せでも1秒以上前を行く先頭に楽々と並びかけて最後には外2頭の様子を窺う余裕さえ。2週前の6F追いで既に態勢を整えていたほど。ゆとりのある調整過程でここ目標が明らか。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。