GⅠの谷間になるが、その分を埋めるべくローカルを含む3場で重賞が行われる週。とはいえ、京都・マイラーズCには安田記念を占う意味がある重要なレース。高速設定の時期だけに、昨秋のマイルCSで早目に動きながら結果を出した当時の2、3着馬が主力か。唯、西下組で狙いたい馬が1頭。右回りがプラスとは言えない上に、坂の下りもネックになりそうなロサギガンティアではなく、ダービー卿では案外だったシャイニープリンス。
14着を額面通りには受け取れぬ。手応え良く進んだ道中からスパートという点はイメージ通り。が、そこからは包まれて追えずじまいのゴールだったからだ。黒光りする体が撓るようで本格化を実感できるのが近走。それに翳りはない。5Fから15秒2で入って大きく先行する僚馬を射程圏に入れると、追い比べになった直線では鋭い反応。中2週ながらピッチを落とさずに済んだということが、前走の不完全燃焼ぶりを物語っているではないか。昨年の京都金杯では5着だったが、当時とは全身に籠るパワーが違うし、今は戦法も定まっている。上記の2頭を差し置いての◎まであり得る。
3歳OP、土曜の橘Sも面白い。直線がフラットになって持ち味を生かせそうなスマートプラネットは前進必至。しかし、オール坂路(最終追いの57秒8は馬場を考えれば上々)の調整が続くとなると、やはりウッドで目の当りにしている馬を上位に取り上げたくなる。
ナイトフォックスだ。アーリントンCは位置取りでアウトだったことから、前走こそが本当の姿。巧みな立ち回りで一瞬は抜け出したぐらいでデリケートなタイミングの問題。そして、中2週でも5F66秒5と質の高い調教をこなしたのだ。それも古馬を4馬身先行させての行き出しでもゴールでは測ったように抜け出す。手綱がピクリとも動かないままのラスト12秒3が糸を引くような伸び。多少無理をして前目に行っても我慢できる1F短縮となる上に、時計の速い決着で潜在部分が一層引き出される気がする。
日曜の府中メインはオークスを見据える馬らが集うフローラS。が、本番と直結しにくいのも確か。特に、関東勢には分が悪そう。例えば、2分0秒6で決着したミモザ賞などは、時計を素直に受け取れないほどメンバーが揃っていなかった。確かに、そこでは長く脚を使えたフロレットアレーだが、広いコースに替わって最後まで保つだろうか?1F12秒5と力強く脚を伸ばした最終追いでもしまい重点。好調キープは間違いないところだが、華奢な印象は否めず現段階では成長待ちといった体つき。坂路オンリーのリアンドジュエリーも同様のタイプ。3着までを含めてこの組が抑えの評価で良さそう。
1週前までウッドだったディアマイダーリンはキビキビした身のこなし。4F58秒2だった直前の坂路の詳細に関しては触れられないものの、青写真通りの仕上げと見做せる。唯、丸味帯びた体には好印象を抱くものの、寸の詰まった感じで距離に限界があるのでは。左回りでの伸びが違うだけにコース替わりは心強い材料になるが…。
煮え切らない日曜メインより土曜で勝負を決めたいところ。時系列で挙げて1Rから。叩き2走目のコンコルダンス。離されての6着だったデビュー戦でも2着とは1秒強の差。しかも、先行有利の馬場と忙しい流れに戸惑ったのだ。十分すぎるエクスキューズ。昨夏に一旦は美浦入りしての3月デビューだから遅々として進まなかった仕上げ。しかし、一度の実戦で覚醒。計9頭が入り乱れるラッシュの最中で一際目立つ5F67秒2が自身の時計。そのウッドでは行き脚が突いてからのゴボウ抜き。故に、府中替わりの1F延長なら真価発揮。
5Rのキャンベルジュニアはスケールが違う。後で触れるが1週前には古馬OPを全く寄せつけぬ併せ馬を披露。スパートしてからのアクションが豪快で直前の1F12秒1にしてもこの馬としてはまだローギアー。初出走になるがもっとメンバーが揃っていれば票が分散して単勝の旨みも増したと歯噛みしているほど。
同じ3歳戦の新緑賞はコアプライド。仕上がり途上で見切り発車だった2月・府中も前走も質の高いメンバーで徐々にでも良化を示しつつあった。加えて、ポリから負荷のかかるウッドへ切り替えたのが今回。半マイルからのしまい重点だったが馬場の荒れた時間帯の外ラチ沿いにも関わらず1F12秒3という豪快な伸び。ストライドが大きくなって力強さが増したゆえ。
最終週を迎える福島のメインは土曜の福島牝馬S。前年の3着に加え、牡馬相手の福島記念でも健闘したフィロパトールに注目が集まる。が、先週までは追われての反応が一息。最終追いでは1秒8追走しての併入だから、脚色劣勢には言い訳が立つものの、体のハリが物足りない段階で久々のビハインドは大。取り消し明けのスイートサルサも同様。1週前の6F追いで間に合ったと一瞬は思ったが、ハロー明けの馬場でしまい重点での1F13秒4は案外。
直前が坂路だったパワースポットは1週前のウッドが濃厚な中身。体のラインも綺麗でしなやかさに拍車がかかってもいる。唯、小回りでは間に合わぬシーンがあるし、実際にフィロパトールの後塵を拝しているのが気懸かり。
快調教ということならペイシャフェリスだろう。以前から調教駆けすることで有名だが、行き出しが6Fで5Fから既に13秒0のラップを刻みながら最後までフォームを乱すことなくゴールに飛び込んだのは驚異的。目下の充実ぶりなら1800をこなしても不思議ない。問題は同型との兼ね合いに加え、一歩も引かないという気概が乗り役にあるや否や。
唯、ここでの◎はオメガハートロック。府中・土曜の欄で推奨した今回がデビューの3歳に遅れたことで下馬評は今ひとつ。が、桁違いの相手だけに瑕疵にはならぬし、一叩きで柔軟性が増した上にシルエットが明確になった。同じ叩き2走目でも骨折明けだった昨秋とは状況が180度違うと思って良い。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。