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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2015年06月11日(木)更新

関西優位に一石を投じるのはユールS

GⅠシリーズが終わって夏競馬の到来を予感させるエプソムCが今週のメイン。しかし、追い日の水曜は朝一番でモヤがコースを覆い尽くすアクシデントに見舞われた。アーデント、ペルーサに至っては追い切った姿さえ捉えられないほど。その中で連覇を目指すディサイファはスタンドに近いポリだっただけに直線の模様だけはどうにか窺えた。

唯、ここ目標に質の高い併せ馬が再三再四。特に、2週前の3頭併せでは5F63秒4でも余力十分とブランクを感じさせないどころか、更なるパワーUPを実感。唯、今回は東上組が強力。同じ1800の毎日王冠2着を持ち出したとしても少々分が悪い。ということなら、取り消し明けのダノンジェラートではもっと苦しくなる。決して悪い動きではなかったが、歩様の硬さは相変わらずだし、トモの筋肉を落ちている模様。不向きな中京・中日新聞杯で底が割れたと思うのは早計だが…。

スランプ脱出の気配が濃厚なヒラボクディープでもやはりパンチ不足。追走して内の5F68秒5なら中2週としては十分だし、伸びやかなフォームで着実な体調UPが認められる。しかし、前走の勝ち馬サトノAとの逆転までは考えられぬ。

それならばユールシンギング。腰の薄い馬で平坦がベストなのは承知。けれども、左回りの長い直線をキーワードにすれば消化し切れぬという範囲ではない。ポリでおざなりな調教から、負荷のかかるウッドに移した点に着目。体力を取り戻せたからで平凡な時計と裏腹に中身は濃い。シッカリと地を掴むようかの走りも前走時までには見られなかった。4歳の関西2騎に安田をスキップして実を獲りにきたフルーキーの三つ巴という状況は間違いないところだが、どうにか印を回すつもり

代わりに土曜メインのOP特別は、関東優位と言える1戦。実績のあるエアWはハンデ抽選。唯、出走が叶ったとしても戦法が限られるようになった8歳だし、アドマイヤRも57.5のハンデがネック。

ここはベルゲンクライ。間隔が開いたのは2度の除外ゆえで坂路での乗り込みは十分過ぎるほど。加えて、最終追いのウッドでは6Fで2馬身追走する態勢から内にもぐり込んでの併入でダイナミックな動きに終始。馬場の荒れた時間帯での5F65秒5だから価値◎。

前走でも0秒1差。当時は転厩初戦で手探り状態での仕上げで稽古が軽かったのに、だ。今回は大久保洋厩舎に所属していた時のように内目で速い時計をマークと、この馬にフィットした調整で状態UPは確実。元々、左回りがベスト。ここ4走で一定以上の結果を得られたのは極めて高い能力に依る部分が大きい。コース替りでチャンス拡大

本線はサウンドトゥルー。年明け・中山の直接対決では◎に及ばなかった反面、1キロ貰った勘定。しかも、前残りだった2走前の昇級初戦でも際どかったし、メンバーの揃った平安Sで6着というのだから、OP特別なら恵まれたと言える。2度目のハロー明けには、ウッドの正面から馬場入りして十分に助走を取る稽古。3頭縦列の最後尾からで同馬だけ6Fから時計になっての86秒5。負荷をかけたにも関わらず、痺れるような手応えのラストは12秒8。確実に歩を進める安定した走りで去勢の効果は計り知れぬ

土曜9Rは降級というより将来性豊かな4歳がエントリーする1000万下。特に、3歳時にはOPで2着のあるロワジャルダンが注目の的。先週までに併せ3本消化と量的には十分。唯、腹が巻き上がった印象。実際、追走して外という異例のパターンだった直前でも、終わってみれば5F70秒5で鞍上が促してからのリアクションが物足りない。

これならばキネオイーグル。2月の現級勝ち以来だから上のクラスでの経験はないものの、パワーが全身に漲っているかのようで活気がある。高柳厩舎のパターンである向正出しの4F追いで先着して当然の相手とはいえ、内にもぐり込んだ直線では矢のような伸び。一気に3馬身突き放してのフィニッシュは見事で、ひと皮剥けたと思えるほど。

この厩舎で今週デビューする新馬にも注目馬が1頭。土曜5Rのロードインスパイアがそれ。直前は感触を確かめる程度だったが均整の取れた好馬体とセンス満点の走りが目を惹いた。1週前の時点で半マイルからスパートすると抜群の反応、若駒らしからぬ迫力で4F51秒7の好時計マーク、一枚上の性能

日曜の新馬は5R。好馬体のミュゼモーゼスは動きがダイナミック。木曜の最終追いでは4F56秒6での1馬身遅れだったが、横山典は追ったところなし。テンションを抑えつつ馬に教育を施しているかのよう。唯、行きたがる気性で1800では甘くなる恐れも。

メジャーエンブレムを上位に取る。内目だったとはいえ、1週前には上がり36秒台で古馬を圧倒。追えばそれに応える感じでストライドの大きさが能力を窺わせる。調教から長く脚を使えるタイプと見做しているから今回の条件はピタリ。モヤの為、直前の詳細が不明でも気にならない。

他の特別レースで取り上げたいのが日曜10R。単走のみの調整だが、柔らかみのある動きで1F13秒5という数字以上の軽やかさがあったマーブルカテドラルが中心。良質な筋肉をまとっているから、休む前以上に厚みを感じる。同じ4歳牝馬ダンスアミーガより軽いハンデも後押し。

その直前の小金井特別はトーセンマイティ。中1週でも前走と同じ内容をこなせたのなら良い意味での平行線と言える。見た目もはち切れんばかりで1000万下の馬とは思えぬスケール。降級初戦での取りこぼしは許されぬ。

プロフィール
柴田卓哉

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。



柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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