暑さの衰えを知らない美浦。従って、5時の開門を待っていたかのように朝一番に集中する。サマーマイルシリーズの第二弾となる関屋記念の追い切りも早い時間帯で終わった。
ラッシュの最中に3頭併せを敢行したスマートオリオン、1200で頭打ちだった現状を距離延長によって打破。差し馬が台頭する中で押し切った中京記念では脱帽するしかなかった。そこからはレース間が詰まるものの、反動は微塵も感じられぬ。
3頭縦列で向正を進んで4Fからスパート。上がりまでは13秒4と速いラップを踏みながら抜群の手応えに終始して3Fは37秒7の好時計。洗練された馬体の造りにキビキビした捌きを披露と好調キープは間違いない。コース実績のない新潟でもマイルなら話しは別と考えた方が良い。
唯、2011年以来の少頭数ということに加え、超スローで‘ヨーイドン’が見えているレース。となると、春のOP特別で切れに切れたサトノギャラントもチャンス十分。最終調整は坂路での54秒5だったが、前週にはウッドでの併せ馬でパワフルな動き。照準を合わせてきた。昨年の当レース以上の結果を得られるのでは。
同じように1年前以上に手応えを感じさせるのがシャイニープリンス。坂の下りがある京都外回りはレース下手を露呈するだけに、休養前の1戦は度外視できる。直前で5F70秒6と目立たぬタイムだったのは、それまでが入念だった故。既に計5本の併せ馬を消化し、1週前には実にシャープな動きで5F66秒9。富士Sでの2着を正当に評価すべき。
そして、大混雑のウッドにおいてエアポケットになる時間帯に単走で追われたのがカフェブリリアント。5Fからの時計を中間で2本消化している上に、自分で体を造れる前向きな気性もあるから体もスッキリ。直前でも半マイルまでが15秒を切るラップと実に軽快。スムーズなコーナリングで直線に入るとスプリントを利かせた鋭い動きでラストは12秒5。ブランクの影響はないどころか、更に洗練された馬体。牡馬相手の別定でも。
関屋記念と違って土曜メインの準OPはフルゲートで力拮抗と掴み処のない1戦。基本的には新潟実績のあるOP落ちダンスアミーガを巡る争いと考えるべきだが、多士済々だけに伏兵を探したい。当距離がベストのマンボネフューだが、新潟内回りは窮屈。加えて、ラストでシッカリと脚を伸ばせたのは直前だけと急仕上げという懸念も。
アンブリッジの充実ぶりが凄い。遠征の疲れなど全く感じさせぬ力の籠った動き。同格の僚馬を5Fで3馬身追走しながら、直線では弾むようなフォームと手応えで圧倒。更なる上昇カーブを描いているというのが率直な感想。本来、タフな中京は合わぬ筈だし、以前はソツなく脚を使って上位を窺うタイプ。レースでも明らかに変わってきた。粒揃いだった豊明S2着を全面的に支持。
穴馬としてピックUPしたいのがマーブルカテドラル。1週前の併せ馬で先行して先着。とはいえ十分な負荷をかけて臨んだ直前ではシャープな伸び。骨折明けで小さかったフォームがダイナミックになって復活間近。牡馬ならナイトフォックス。しまい重点の大竹厩舎というと二の足を踏みたくなるが4F50秒1は好時計。一息入れて馬体にメリハリがついたし、トモの甘い馬。平坦替りは大きなプラス。
1400戦に食指が動く週で日曜8Rも面白い。ここは、思い切ってギンザヴィクトリア。鼻出血明けの冬場は本物でなかったし、ルーティンワークのような稽古をこなしていただけ。小柄で仕上がり早だし、1週前とは打って変わった直前軽目でメリハリを利かせた上に輸送に対するケアーも十分。前崩れの展開は不可欠だが得意の新潟で一変するシーンはある。
他の500万下では戸田厩舎に注目。まずは、糸魚川特別のスモークフリー。余裕の手応えのまま内から鋭く伸びての1馬身先着。身体能力に頼り切っていたのが以前。今は首を上手く使ったフォームで走りが洗練された。
日曜7Rのアールブリュットも好調キープ。案外だった前走は小回りで脚をなし崩しに使っただけで力負けではない。4F54秒9の軽目は輸送がある故で織り込み済み。シャープな身のこなしは最下級条件のそれではない。
最後に新馬戦から。関西勢に席巻されている現状を打破できそうなラインUP。土曜5Rのサンセットトウホクは古馬との併せで互角以上が再三再四。アクセントの利いた体つきとまでは言えない分、成長途上ではあっても決して諦めぬように精神的には大人で実戦向きの勝負根性がある。
日曜5Rはニシノオウレイ。本数こそ少ないがセンス溢れる動きで最終追いは5F66秒8の好時計で追っての味が魅力。長く脚を使えそうだし、シルエットが綺麗で芝向き。稽古では遅れたが古馬を追走して食い下がったピエスモンテは、地味ながら態勢整う。素直な気性でスッキリとしたラインだから平坦は合うし初戦向き。奥はなさそうだが人気にならない点で狙いは立つ。
これと180度異なるタイプが日曜6Rのアウアウ。過程は全て半マイルからだけに目立たぬが馬格が生む豪快なフットワークが売りで実にパワフル。急なコーナーに対する懸念を補って余りある身体能力に惹かれる。
柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。