掉尾を飾る新潟記念は好調馬が多く目移りする状況と言える。注目は3歳2頭。ダービー入線後には下馬したミュゼスルタンだが、大事に至らなかったのは何より。唯、ここに向けての過程で主場となったのは北海道。が、掴みづらい部分はあるものの、目の当りにした最終追いは素晴らしい動き。前2頭を追走する形から外ラチに触れんばかりのコース取り。最後まで痺れるような手応えでの5F67秒0には瞠目させられた。麗しい馬体を誇った上に豪快さもそなえているのだから首位争い必至。
それに対して春には勝負づけの済んだ感があるアヴニールマルシェ、坂路中心で直前は4F55秒2。しかし、1週前の3頭併せではしなやかな動きで流れるようだったし、バランスは良くてもアクセントに乏しい休養前とは一変した体つき。要するに、急激な成長曲線を描いていることになる。となると、ミュゼに対する1キロ差を生かせるのではないか。以上2騎の順位づけは極めて微妙。
勢司厩舎もダークホースを揃えた。唯、ポリで軽快に5F66秒9をマークしたロンギングDよりユールシンギング。エプソムC時からウッドに切り替えての負荷を与えるトレーニングの効果絶大。ここ2走はコース適性に依る不振。今は体のハリも違うのだ。春・新潟ではポリでお座なりの稽古だったから、当時は度外視。復活を期せるシチュエーション。
北から帰ってきたマイネルミラノの猛稽古にも目を奪われたが、ワンターンの新潟2000で息を入れる逃げが打てるかが鍵。むしろ、紅一点スイートサルサを狙ってみたい。
1度目のハロー明け、向正からウッド入りするのが菊川厩舎のパターン。馬場の整備された状態でスピード感に溢れる調教でピークに持って行く。それを踏襲してキビキビした動きを繰り返す。確かに、前2週は併せ馬で劣勢だったが、相手は速さに任せた直線競馬専用のタイプ。むしろ、それで機動力が増したし、流した程度の追い切りが軽く3F38秒7というのだから鋭さ満点。この距離は愛知杯で克服しているフラットな新潟は得意。
土曜メインは準OPのマイル戦。ベースになるのは3週前のハンデ戦だが、そこで除外された組は乗り込み量が豊富。とはいえ、直前で3Fのみ流したアイラインには力強さが足りないし、半マイル55秒9と平凡だったマンボネフューは前肢の捌きが硬い。
それならばアンブリッジで、中京での2着は価値◎。また、タフな馬場をこなせたのだから尋常でない進境ぶり。一旦は坂路に切り替えたが最終追いのウッドでは正面から入って十分に助走を取る5F追い。重い馬場でも安定したフォームで5F70秒を超える時計でも力のこもった印象。1400に実績が偏るものの、こなせぬ距離ではあるまい。
少し間隔が開いての臨戦という組で最有力なのがオコレマルーナ。ひと押しが足りなかった2走前はハイレベルだし、窮屈なコーナー4回で大崩れのなかった福島戦からも進境著しい。今回が初になる新潟ピタリというのがイメージできるし、実にリズミカル動きでのフィニッシュだった最終追いの併せ馬が絶好であった。
新潟日報賞と異なるのは、外回りに替る点で脚を余す心配がないということ。となると、流れ込んだダノンシーザーよりダンスアミーガという気がするが、それとセットで取り上げなければならぬ関東馬がマイネルメリエンダ。昨夏の一連があるからだ。最終追いは坂路で1F12秒8だったが1週前の併せ馬が圧巻で態勢は整う。唯、その段階でこれを追走して食い下がった同厩ルミナスウォリアー(燕特別)により魅力を感じる。そこでは追走して遅れたが、稽古駆けしないタイプとしては好時計。休養前より中身が濃厚といった段階での降級。4F58秒0という直前の軽めは仕上がっているからこそ。
他の特別戦からは、まず飯豊特別。中間にはより洗練された馬体をアピールしているエリーティアラ。流麗なシルエットが躍動する様には惚れ惚れする。春、当コースでヤマニンMに負かされたが、その時は一本調子。2走前のポカがきっかけとなって精神的にドッシリ構えられるようになった。控える競馬も可能になれば古馬相手でも即通用。
固いところでは土曜10Rのシュンドルボン。ウッドのハロー明け、半マイルでスパートというのはいつものパターンだが直線に向くと抜群の瞬発力で1F12秒3。身のこなしに一層迫力が出て凄味さえ。今回も通過点として良いのではないか。
最後の最後、日曜12Rは直線競馬。ここは初芝になるツインプラネットを狙ってみたい。しまい重点に徹した過程を踏んでの直前が3頭併せでシャープな動き。周りが速くて揉まれると脆いがスタートを決めれば初芝でも。というより、回転の速いフットワークだから、今までのダートに偏った成績は身体能力ゆえで条件替りで新味が出せるのではないか。パワフルな捌きでラスト12秒6と伸びたミカルベウスの食い込みも考えておきたい。
平場戦からは土曜12Rのジュエルアラモード。節の関係で出走が延びたが、その分入念で直線は4F54秒6。これ以上追わなくても、といった風情で態勢は整いすぎているほど。ダートでこその体型と走法、牡馬相手だけに人気になり切らぬ点でも買い。
新馬では日曜6Rのチェストケリリー。内目とはいえ軽く3F37秒4と能力は相当。しかも単走である。見た目の迫力はいうことなら他にもいるが、首を上手く使ったフォームで追っての味があるし、併せ馬で見せた勝負強さが何より。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。