前哨戦を制して勢いに乗るアルビアーノが栗東在厩を選ぶことになったが、直前輸送を選ぶ組を上位に関わりそうなのが今年のマイルCS。ますは水曜。先週の坂路が計不だったのがロゴタイプ。直前が控え目だっただけに十分な負荷をかけた筈。実際、風格漂う馬体を駆使しての動きは秀逸。唯、当欄で絶賛したように、前走でも稽古の動きは完璧だった。そこで及ばなかったのだから全盛時のパフォーマンスは望めぬということ。昨年の京都で出番がなかったように適性という問題も立ちはだかる。
となると、水曜組ではイスラボニータしかいない。1度目のハロー明けに正面より入っての6Fスタート。その時点で前との差が1秒8だから単走もあり得た道中。しかし、上がりを過ぎて追い上げると直線では内へ。ラスト1Fでも2馬身後方だったが抜群の伸びで交わし去ったところがゴールという完璧なフィニッシュ。
今春とは違って歩様がスムーズだから四肢が伸びやかになるフォームで天皇賞の反動は微塵もない。高いレベルにはあっても詰めの甘さに泣かされているタイプの距離短縮がきっかけになって不思議ない。坂の下りをどう消化するかが鍵になるが◎候補という位置づけになるのは確か。
唯、最大のテーマになるのが安田記念以来となるモーリスの取捨。毎日王冠で一叩きというプランが崩れたのは誤算。加えて、実戦を使っていない点と状態と相談しながらの仕上げでは太いのも確か。が、同じようにここを目指してきた僚馬リアルインパクトとは2週にわたって併せ馬を消化。先週には渾身の6F追いでダイナミックな動きを見せた。
木曜の最終追いは10時過ぎ、馬場が閑散とした時間帯に他4頭とともにDコース入り。キャンターを経てウッドの向正から4Fスタートのしまい重点。直前の堀厩舎らしいメニューだったが、上がりで4馬身あった差を直線で詰めると持ったままでも12秒1のラスト。柔軟性に溢れるアクションを披露できたのだから力を出せるデキ。春秋連覇に限りなく近づいたと言える。
中央場所のみ3日開催となる週末、府中のメインは月曜の東スポ杯。歴代を遡れば来季を担う馬にとってのターニングポイントにもなり得る1戦。関東の期待を一身に浴びるのがプロディカルサン。これまでの連勝でもフル稼働といったイメージとは正反対の稽古や実戦。つまり、完成途上でも能力の違いだけでクリアーしてきた。
今回もシッカリと追えたのはここ2週。が、古馬1000万下を余裕で追走の道中から直線に向くとスケールの違いがダイレクトに伝わる身のこなしで1馬身先んじた。5F70秒を超える時計でもラストは素晴らしい反応。将来性ということならメンバー随一。唯、これまで以上に厳しい競馬を強いられた前走で経験値を手に入れたロスカボスには現時点で劣るような気がする。
やはり2連勝と波に乗っているマイネルラフレシアは単走で5F70秒を超える時計。唯、1週前には目一杯の調整で抜群の伸びを披露。派手さはないが常に力を出し切る素直さと追っての味が魅力。少なくとも、木曜追いで好時計をマークしたものの、首を上手く使えない走りで距離に限界のあるハレルヤボーイよりは上であろう。
しかし、真打ちはアグレアーブル。先週は単走扱いだったが、古馬1600万下に迫る勢いで明らかにそれを上回った。木曜、1度目のハロー明けに正面から入って行き出しは6F。前との差は3秒以上でもコーナーワークで取りつく。それで距離を稼いだのは確かだが、切れのある身のこなしで素晴らしい伸び。瞬く間に3馬身と引き離してのフィニッシュは非凡さのなせる業で、関東の一番手はこれ。
他の2歳戦では赤松賞をピックUP。GⅢでは失速したビービーバーレルの巻返し。帰厩して2本、5F67秒台の併せ馬をこなしても+10キロと重目だったように、放牧先に仕上げを任せたのが失敗。朝2組目で追走して外に進路を取るメニューをクリアーしての1馬身先着で鋭さが増した。また、変に抑えて持ち味を出せなかったのが前走。新潟で圧勝した時のイメージで乗れば良いし、体型的に平坦オンリーの馬ではない。
ロングランの3日を乗り切るには土曜で優位に立っておきたいところ。南武特別はアルター。前開催の開幕週以来になるが、帰厩しての馬体は一層洗練された印象。直前の3頭併せでも両側からサンドされた状態で気の悪さを見せなかったように、安定して走れるようになったのが心強い。55キロの別定でも伸びを欠くことはなかろう。
相手はサトノメサイア。直前は4Fスタートのしまい重点だがダイナミックな捌きで馬体も引き締まっている。北海道以来ということを感じさせないし、大飛びで府中の長距離戦でこそ真価発揮。
続く土曜メインの準OP戦はメンバー充実。3頭併せで豪快に先着したアルタイルは、出遅れが全てだった前走からの巻返しが必至。しかし、現時点ではクライスマイルに一日の長がありそう。最終追いが坂路だった復帰戦は重目が残った。加えて、適性から少々外れる2100でも連対確保だったから立派。半マイルからの追い切りだったがウッドで負荷をかけられたように叩いた効果は覿面だし、パワフルな動きで更に充実。春の府中マイルで圧勝した時以上と考えて良い。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。