昨年、産声を上げたばかりのチャンピオンズCだが、機敏性がポイントになる阪神でのGⅠよりは真っ当な舞台。一線級が集まるJBCを制したコパノリッキーを巡る争いとなろう。まずは、水曜のDコースで追い切った馬から。
同じ大井からの参戦でもコーリンベリーの前走はスプリント戦。しかし、交流GⅠを制しただけのことはある風格。馬体に厚みがある重戦車ぶりを発揮したのが最終追いで実にシャープさが伴うラスト12秒0。唯、その加速ぶりが距離延長で生きるかと問われれば否。状態は文句なしだから、1番人気馬のペースを乱して欲しい。
ロワジャルダンも単走。道中で速さを感じさせないながら5F63秒5の快時計。ストライドが大きい故で肩の出が多少硬いものの、上半期に比べれば格段の良化ぶり。みやこSの大駆けにも納得できるし、その時よりも攻め強化。が、あくまで高速ダートだったことを忘れてはならない。3歳時のOP2着も脚抜きの良い馬場だったから力の要る中京は?
それならばサウンドトゥルー。1週前のラストはバタバタだったがそれで一本芯が通った印象。実際、そこでは遅れていた相手に直前では併入。しかも、一旦は抜き去られそうになった直線で二枚腰を発揮してもうひと伸びと、追っての味を存分に示したのだ。逃げ馬のペースだった大井でも鋭く迫れたのだから急激な地力強化。昨年に去勢してから常識にかかった競馬で経験値UP、加えて良質な筋肉が増えて米国の一流馬のような力の籠った体つきに変わった。大勢逆転まである。
木曜に追ったノンコノユメも当然ながらさすがと唸らざるを得ない。朝の早い時間帯に他2頭を従えてのウッド入り。正面からタップリと助走を取っての5F追いで縦列の先頭。前哨戦で目一杯の仕上げだったから、微調整程度と言える5F70秒4でラストが13秒4と突出した内容ではなかった。先行して外という態勢で最後は強目と脚色劣勢だったことで物足りないと見る向きがあって仕方ない。
けれども、引き締まっていながらアクセントが強調される馬体の造りではち切れんばかり。研ぎ澄まされているのだ。良い意味での平行線と捉えるべき。それなら、58キロを背負って古馬を一蹴した武蔵野S同様のパフォーマンスを期待して良い。今回、56キロと馬齢に相応する有利な斤量という後押しもある。首位争い必至という位置づけが妥当。
GⅠで盛り上がる開幕週の中京・土曜は金鯱賞がメイン。AR共和国杯で成長を実感できた3歳には一目置くものの、古馬勢も強力。夏前からの連戦が続くディサイファは坂路で57秒1だったが、先週のポリを見る限り高いレベルをキープしていると考えて良い。従って、今春の中日新聞杯で決定的な差をつけられたミトラにとっては当コースが鬼門。
唯、追い切りを目の当たりにしたということもあってコース追いの馬を推奨。先に触れたサウンドTを2週にわたって追走したマイネルフロストは絶好調。距離に限界のあるタイプだからここ2走でひと押しが利かなかったのは織り込み済みだし、直前で控え目だった前走時より意欲的な調教を積んでいるのが明らかなら◎まで考えられる。
あとは日曜の浜松S。叩き2走目のトーキングドラムは前走後に短期放牧。その効果が覿面で馬を追い込める調整を進められた挙句のDコース追いでは3頭併せを敢行。最内で伸びやかなフットワークの5F67秒9だから上昇著しい。1200が2度目でペースに慣れるだろうし、極端に上がりが速くなることがない中京なら楽に間に合う筈。
ここからは本場の中山に目を向ける。土曜メインはステイヤーズSで名物レースとしての存在意義はある反面、このカテゴリーは新陳代謝が進まぬ。というなら、天井知らずの勢いがあるアルバート。とても届かぬ位置からの抜け出しだった前走が圧巻で、一層洗練された馬体を見ればその充実ぶりにも納得。3頭併せだったウッドでは脚色で劣った。けれども、しまい重点で速さを競うメニューであれば特色を出せないのは当然で心配無用。むしろ、コーナーを6回切る特殊な条件が問題か。それに関してなら適性抜群なトゥインクルとの差が一気に詰まる可能性も。
アルバートのパートナーを務めたキャンベルジュニアにとっての待望の復帰戦が土曜12R。というより、今週の堀厩舎の主役はむしろこちらで素晴らしい身のこなし。休養を経てのパワーUPぶりは1週前の6F追いで相手を置き去りにしたことでも実感。もう息はデキているし、前向き過ぎる気性だからマイルはピンポイント。来春までにはOP入りできる器。1000万下で手古摺るなどというシーンはあり得ぬ。
中山の他の特別戦からは日曜10RをピックUP。ここはペイシャフェリス。慣れぬ1200だった前走でも味な競馬で3着と上昇気流に乗ったし、追い切りの中身が数段上。元々、稽古駆けするが6Fの地点では加速してその勢いを保ったままでのフィニッシュ。ハロー直後の馬場とはいえ、6F80秒8は凄い時計で現級勝ちを収めた昨冬の状態かそれ以上。
最後は土曜の1000万下、舞浜特別から。ここは最終追いの3頭併せで態勢が整ったモルジアナ。先週には2歳に遅れたが、追走の態勢だったし相手が大物感漂うゴルゴバローズ(先週の当欄で推奨)では仕方なし。太目感はないし、バネの利いた走りというアピールポイントを如何なく発揮しているのなら復帰戦から狙うべき。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。