頭数こそ少ない中山記念だが、春の到来を告げるに相応しい一線級揃い。従って半端な仕上げでは望めぬ。例えばロゴタイプ。昨秋以来の実戦となるが、重戦車のようなパワーを感じさせると同時に、しまいの切れも抜群。単走ながら鋭い伸びを見せた1週前も素晴らしかったが、直前の併せ馬では内から前を捕えての1F12秒0。確かに、詰めの甘さはつきまとうものの、冬から春にかけてが同馬の季節と考えられなくもない。
道中で大きく追走する形から併入だったのがイスラボニータ。こちらもマイルCS以来となるが、ここ目標に乗り込んで態勢は整った。均整の取れた好馬体にはボリュームを感じるし、寒い時期とは思えぬ毛ヅヤを誇ってレース間が開いていることを忘れさせる造り。何より、四肢をシッカリの伸ばすフォームで柔軟性がある点が昨年と全く違うところ。4角でラチを取るぐらいの積極性があれば押し切れるだけのデキにある。
以上と同じGⅠ馬でもドゥラメンテはスケールが違う。無事なら三冠確実という3歳時があったからだ。直前の5F追いでは、ラスト1Fの地点でも前とは3馬身、その態勢からラストだけで挽回して先着。シッカリと追ったデムーロに応えて豪快なストライドを披露とさすが。
しかし、本来の堀厩舎であれば木曜追い。それは6F追いだった1週前も同様で先行しての内容だったことで首を傾げたくなった。つまり、追い切り後の微調整が不可欠な段階にしか達していないとの憶測が成り立つし、色眼鏡かもしれぬが張りつめた雰囲気もないのだ。勿論、骨折明けで完調ではなかったとしても性能が違いすぎる。鮮やかな復活を遂げて欲しい気持ちとは裏腹に少々疑ってかかるのも手か。
逆に、ドゥラメンテのパートナーだったゴールデンバローズは背水の陣。土曜メインにエントリーしているが、そもそもOP特別のレベルではない。最終追いでは先着を許したが、相手の追い出しを待ったし、ゴールまで持ったまま。花を持たせた形で、むしろリズム良く進む道中から適度にリラックスしている点を実感できたし、全身を使った伸びやかなフットワークで昨年の下半期とは別馬。
相手のチョイスだけがテーマと思えるが、やや頭打ちの5歳以上には魅力を感じぬ。1度目のハロー明けにパワフルな動きで4F53秒6をマークしたバンズームにしても勝ちに行くと甘くなるタイプ。それならば、◎と同世代を重視。特に、強引なレース運びでこそ真価を発揮するキングノヨアケ、モズライジンなどの薄目に妙味がある。
他の特別戦では日曜9R。休養前の1戦で去勢効果が窺えた関西馬キングズオブザサンの力量は上。が、敢えてラインハーディー。前走は+14キロと意外な馬体重。唯、太かったというよりレースに参加していない。そのケアーが右だけのチークP。外ラチに触れんばかりのコース取りでの5F67秒3は凄い。加えて、シッカリとハミを取って揺るぎのないアクションだったのがラスト。馬体も引き締まった。
ここからは3歳戦。まず土曜・水仙賞のヒプノティスト。3頭縦列の最後尾でスパートを待った直線でも抜群の手応え。少し促した程度で瞬く間に抜き去った伸びは圧巻。1週前にはB着用での併せ馬を消化し覚醒した感さえある。ただでさえ、ハイレベルだった葉牡丹賞が抜け出すタイミングが僅かに早かった分の惜敗。もう取りこぼせぬ。
平場戦では日曜4Rの3歳500万下、マイティ―ゴールドが凄い。向正でセーブした為、一旦は3馬身と離れた道中から外に合わせると痺れるような手応えのまま先着。同格の3歳を圧倒した上に、デビュー時より洗練された動き。強引な競馬でも辛抱できるだけの勝負根性も魅力。
あとは未勝利で穴狙い。日曜2Rのブレスアロットは初戦時も乗り込み入念。が、ビシビシ追っても時計が詰まらなかったように、ハードな稽古をこれでもかと課してこそのタイプだし、速さより持久力が売りの叩き良化型。しかも、実戦を経たことによって鋭さを増した追い切りでは、4馬身のビハンドがあっての追い比べを制した。距離延長は格好の条件。
同じダート1800で土曜3Rはリアリスト。昨秋デビューは一頓挫あっての見切り発車。本数と重ねても時計が詰まらずに動きに余裕がなかった所以。唯、立て直せば別。併せ馬のレベルをUPさせて鍛錬を積んだ挙句、直前には古馬1600万下を相手に互角以上の動きを披露とひと皮剥けた。砂向きの身のこなしでもある。
日曜6Rのアデレードヒルは朝一番のウッドで3頭併せ。四肢を伸びやかに運んでのラストが軽快だったし、間隔を開けたことでリフレッシュしたというより、アクセントの利いた馬体に変貌。前に馬を置いてもリズミカルだったことからも精神面での成長も実感できた。少々不器用なテオドール、能力は十分だが芝が合う筈のないラーリオが人気なら旨味が増すのでは。
柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。
柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。