3週目を迎える中山は両日ともに牝馬戦がメイン。中山牝馬Sでキーになるのは、勿論ながらルージュバック。桜花賞までの快進撃は今でも記憶に鮮明だし、エ女王杯でも力のあるところを見せた。0秒5差だった有馬記念直後にリセットして帰厩後の1本目が先週の土曜で6F追い。放牧先での調整が思い通りに進んでいなかったら消化できなかった筈。実際、直前はラスト1Fだけで外2頭を置き去りにしての12秒1という鋭さ。
字面だけではない。全体像が洗練されているのは良質な筋肉を纏っている故で、そこから繰り出す捌きが実に小気味良い。全身を目一杯使ったフォームで柔軟性ということなら前走を遥かに上回る。美浦では2本のみでの臨戦だが、オークスではそのパターンで結果を出しているから、長く手元に置くことでストレスが生じる馬との見方も成り立つ。見込まれたハンデ56キロのみが課題。
愛知杯では人気に反したジュンドルボンも巻き返しに余念なし。外々で脚を使わされたことがあるし、しまいに賭けたタイプに有利な流れでは仕方ない。コーナー4回と距離短縮という条件揃いに的を絞るのは当然のことで麗しい馬体が示す通りのデキ。先週の5F追いがあるからしまい重点でも十分だし、直線では真ん中を割った挙句、余力十分での2馬身先着と文句なしのフィニッシュ。立ち回りの上手さを生かしたい。
ここに登録のあった昨年の覇者・バウンスシャッセは56.5キロを嫌って中京に回った。2度目のハロー明けで3頭併せの真ん中から余裕の抜け出しと状態◎。前走の体を維持している点にも好感を覚えるが、中日新聞杯は牡馬相手で簡単にはいかぬ。
ここは、ショウナンバッハが面白い。今回よりレースの格が上だったAJC杯で3着。実績の乏しい中山だったから価値は高い。輸送を考慮した過程で実質の追い切りは土曜の長目追いだったが、しまい重点だった今週も弾むようなフットワークで好調は間違いない。直線の長い左回りはベストの条件。JCでの0秒5差を忘れてはならない。
開幕週の中京は特別戦が充実。ここを中心に攻めたい。まずは日曜メインのトーキングドラム。しまい一手では分が悪い京都でも連続2着と安定味が増した。元々、長いブランクがなければもっと早くにOP入りが可能だったほどのポテンシャルがあるし、復活の足掛かりになったのが当コース。Dコースでシッカリと追えるようになって高いレベルで安定しているのが目下の状態。砂を蹴散らすような力強いアクションに終始しての5F68秒0は余裕綽々。充実期に突入。
ローカルながら今後に繋がる重要な鞍が昇竜S。関西からも素質馬が参戦するがゴルゴバローズも負けてはいない。前走が圧巻で脚色にしたら強目といった風情での1分12秒0だったから驚く。未勝利勝ちの際も当コラムで推奨したように、生粋の砂馬で底を見せていない。左回りに問題がないことを証明している。先頭との1秒差をまるで感じさせぬ勢いで併入というのが最終追い。稽古の雰囲気から砂を被って勢いを削がれることも考えられぬ。
もう1頭がスリラーインマニラ。トモが深く入るフォームで馬格とは裏腹なパワー型。4F54秒2と、ハロー明けとしては目立たぬ時計だが、追い比べで稽古駆けする馬を圧倒した点に注目。
再び中山に目線を戻す。土曜のアネモネSは出走確定が3頭のみ。抽選によって様相が変わるが、エクラミレネールの巻返しを第一に考えたい。中山マイルでの持ち時計からクイーンCは条件が合わなかっただけだし、差す競馬に転じて結果を得たようにチークP着用後は日進月歩。最終追いは5F70秒を超える時計で感触を確かめる程度だったが、1週前の猛稽古では3F38秒を切って迫力満点。ここにきて一段とストライドが大きくなった印象さえあるから伸びしろも実感できる。
1勝馬で5頭弾かれる想定段階だが、その関門をクリアーできればアルジャンテに食指が動く。年明けのGⅢでは見せ場なしだったが、中途半端な位置取りが足枷に。また、緩いラップのみの稽古でもマイナス体重だったように見切り発車といった要因も。対して、今回は鍛錬を重ねて背水の陣と思わせる過程。4F追いだった直前でもゴールまで目一杯追っての併入と濃密。軽い芝がベターといった身のこなしだがここに至るまでの意欲を買う。
あとは同じ3歳でも未勝利戦をピックUP。中1週ながら意欲的に追われたリアリスト(日曜3R予定)。前回も推奨したが道中からして手応えに余裕がなかった。それでも4着だったから気性面のみが課題だったということ。それをカバーすべくB着用した併せ馬では1馬身遅れ。とはいえ、OP相手に追走して時計自体は上回ったのだから能力は確か。勿論、馬体が引き締まったからこそのしぶとさで叩いた効果も絶大。
最後に残り少なくなった新馬(土曜4R)から。最終追いは坂路での56秒台だったタイタンアルムだが、これまでのウッド追いで馬格に似合ったパワフルな動きを披露していたし、持続性に優れるタイプで願ってもない条件。権利を持っていない馬はよほどでないとゲートインできない状況だが、出走が叶った場合はアジアハイウェイが◎。当然ながら本数は足りないし緩いのも確か。唯、ウッド5F69秒7は詰める余地十分の時計で追えばいくらでも伸びる勢いだった。均整の取れた好馬体で全身に力が漲っている。素質だけで結果を出せる器。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。