今週、東西で組まれる重賞は3鞍。JCダートの前哨戦になるみやこSに向けて西下するのがグランドシチー。出世のきっかけを掴んだ京都コースで持ち味が生きる筈。ウッド5F68秒1での脚色劣勢だが、3馬身追走の分。唯、丹念に長目を乗って絞り込んだ前走が謂わば‘勝負駆け’。それと比較すると、馬体の維持に努めた過程だけにトーンダウン。
府中の日曜はスタミナに比重がかかるGⅡのハンデ戦。とは言っても、関西勢の層は厚い。従って、芝コースの3頭併せで1秒遅れたサイモントルナーレでは…。前走のOP特別勝ち直後でもローカルと道悪のアシストゆえ。53キロの中央場所では用なし。
見込みがあるとすればホッコーブレーヴ。ポリのトリを飾る単走で実にスムーズな身のこなし。見た目以上に速かったラストの12秒3は、柔軟性が増した為で一叩きの効果は絶大。唯、2400でも最短距離を通って直線だけに賭けるタイプ。状態が充実してきても100mの延長は足枷になろう。
となると、実績からルルーシュ。今回はオール坂路で最終追いは4F50秒5。追い切りを目の当たりにできないでは当コラムに沿わないので詳細は避けるが、コースで見かける馬体から、能力を出し切れないとは思えぬ。
目玉は2歳牝馬によるアルテミスS。格上的存在のクリスマス、最終追いは4Fスタートの併せ馬。パートナーを1秒先行させたが、それでは足りないほど性能の違いを示して1馬身先着。全身を使った見事なフォームで内を窺いつつ競り落とした。函館の段階で古馬1000万下を凌ぐ記録を持つのは承知。が、少し華奢に映る体つき、速さに頼り切った走りから距離に対する融通性には疑問符が。
ここはマーブルカテドラル。中山でも鮮やかだったし走破時計が優秀。何より、この中間で更なるパワーUPが実感できるのだ。追走しながら古馬1000万下を切り捨てた先週然り。直前でも5Fで1秒6あった差をあっさり覆しての1馬身先着で、余裕綽綽での1F12秒5と抜群の反応。直線の長いコースでこその末脚といった点をアピール。
芙蓉Sではそれと0秒2差だったパシフィックギャル、2戦目で切れ味発揮のニシノミチシルベ。手塚厩舎2騎はいずれも坂路。唯、両馬ともに使える脚が短く、良化余地を大いに残す馬体の造りという点で、重賞となるとひと押しが足りなくなるのでは。また、注目すべき新潟2歳S組でもマイネグラティアは3頭併せの最内で4馬身遅れ。追走、古馬相手というエクスキューズ以前に、追い出されてからフォームが乱れて1F14秒2。軽視。
それならば札幌2歳S組。坂路のマイネグレヴィルは割愛させてもらうが、遠征先では馬場に殺されたトーセンシルエットの巻き返しに警戒。均整は取れていても全体的に薄い印象だったが、リフレッシュが功を奏してトモに厚みが加わった。元々、目立つ時計で動く馬ではないから、5F69秒1の追い切りなら十分。ゴールに近づくにつれ、回転が速くなる面は以前に見られなかった。成長急。
牝馬戦ということなら日曜10R。常識的にはゴールデンナンバー。格上挑戦後の中2週で5F73秒3とセーブ。しかし、無理にでも抑え込まないとオーバーワークが懸念される気性の持ち主。フォーム自体はダイナミックだし、はち切れんばかりの馬体で好調キープ。
面白いのがウインクリアビューで正に‘唸っている’。先週の木曜ポリでは、週末にOP入りを果たしたロイヤルクレストを子供扱い。抜群の伸び脚であった。感触を確かめる程度だった直前でも引っ張りきれない様子で上がり37秒6。無駄を全て削いだ馬体で‘キレキレ’。ベストの条件なら大駆けがあって不思議ない。
府中での他では新馬戦をピックUP。土曜5Rのラハイナルナ。3頭併せの真ん中で両脇を軽くあしらっての先着。実戦向きの勝負強さということだし、直線では重心を沈めての加速と身体能力の高さをアピール。相手の1頭が復調しつつあるマイネルマーク(日曜メインで補欠の1番手)なのだから、かなりの素質。
日曜はダートのキネオフライト(5R)。パワー溢れる走りで、古馬1000万下と5Fで1秒あった差が上がり標識で1馬身となると、直線では内にもぐり込んでの迫力あるデッドヒートを制す。砂馬らしく一定以上のスピードを維持できる点にも好感が持てる。
今週から開幕するのが裏開催の福島。特別戦では日曜12Rのサクラダムール。夏・新潟での昇級初戦でいきなり2着と高いハードルをクリアー。勢いそのままというより、体質強化が手に取るように分かる。最終追いこそしまい重点の5F71秒0だったがバネの利いた走りでスプリント能力の高さを窺わせる。中央復帰後2戦でポテンシャルの高さが明白になったフォーチュンスターとの軸2頭マルチで。この資金稼ぎが8Rのジーニマジック。長目追い消化で力強さが増した上に開幕週の平坦とあっては取りこぼせぬ。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。