本来、トップに取り上げなければならないのが、エリザベス女王杯に関するリポート。が、昨年の覇者・レインボーダリアは、輸送を考慮したにしても5F73秒2。コース取りは内目だし、活気を全く感じさせない調整に終始。素晴らしい追い切りだった前走時でも成績的に冴えなかったのなら、今回も望み薄。
そうなるとメインテーマは、府中の日曜・武蔵野S。久々になるイジゲンの動向を探るには、木曜の最終追いをチェックしてからということで更新が一日遅れとなった。
堀厩舎一組目でまずDコースでのキャンター。1週前に、この厩舎としては珍しい6F81秒4という長目追いを敢行して態勢は整っていた。従って、青写真通りのしまい重点。
3頭縦列の最後尾でウッド5Fの入りは18秒5。半マイルからも15秒1とゆったりと進んで直線では最内に。脚色こそ外2頭との差異はなかったものの、懸命にストライドを伸ばして同時入線を目指す僚馬に対して、回転の極めて速いピッチ走法で貫禄の違いを示した。
今冬までは重戦車のイメージ。唯、今回は研ぎ澄まされた体から繰り出される切れ味満点の動きを披露と、新たな面が見受けられた。これは、素直に成長と見做す。細いのではないかとの懸念もあるにはあるが、この前哨戦に限ればほぼ完璧な仕上がり。むしろ、ここを使った後の反動が心配なほど。
エントリー自体が少ない関東の中でもう1頭のコース追いがクリールパッション。直線の長いコースを克服できるかが鍵になるが、調教コラムとしては強調しなければならぬデキの良さ。阪神遠征後は更にピッチを上げて再三の併せ馬で年齢を感じさせぬ迫力をアピール。唸るような勢いのまま1馬身先着の最終追いもパーフェクト。3連の一角に加えても良いのでは。
西のGⅠで取り上げる馬不在の中、西下組で最も有力なのが花園Sのアメリカンウィナー。復帰戦、馬体重は±0と太目こそ残らなかったが、全体的に緩く体裁だけ整えた仕上げ。対して、中1週ながらポリでビッシリ併せた今回は、ゴールに近づくにつれストライドが広がる見事な加速ぶり。身のこなしが本来になったのは筋肉の質が向上した故。加えて、平安Sでも好走した京都の中距離ということなら死角は見つからない。
土曜・府中メインは京王杯2歳S。衝撃のレコード勝ちだったデビュー戦から、モーリスで仕方ない部分もある。しかし、あっさり白旗を上げてしまうのもどうか。
まず期待できるのが、同じく1戦1勝のルミニズム。バランスの良い走りで道悪もこなした初戦だが、柔らかい身のこなしから良馬場こそ真価発揮。古馬を追走しながら、ラスト1Fを切ってからは‘おいでおいで’5F67秒9が性能の高さで上積みもかなり。
先週の除外は痛かったがトーセンシルエットも面白い。デビュー時から目立つ時計で動くタイプではないから、最終追いの5F70秒4も気にならぬ。むしろ、軽やかな動きで前肢の捌きにパワーが加わった印象。綺麗なフォームが身上だけに極悪馬場の函館では走れる道理がない。軽い芝の府中なら一変まである。
ダリア賞のレベル、新潟2歳Sの内容で軽視されがちなアポロスターズだが、関東では一番手。何故なら、新潟では良化途上だったと断言できるほど、稽古での動きが違ってきたのだ。古馬を6Fで2馬身追走しながら完全に相手を制圧した1Fでは12秒6。仮に、少しでも気合いをつけたなら、置き去りにしてたであろう鋭さ。差す競馬を覚えた中山で一変。広いコースなら更なる進化があっても驚けない。
府中の特別戦での注目は宗像厩舎。日曜10Rのインプレスウィナーと、日曜9Rのガチバトルが併せ馬。5Fで3馬身の差があったが、ともに時計以上の迫力で、スピード感や反応が目を惹いた。極めて質の高い調教なのは間違いなく、両騎の充実ぶりがダイレクトに伝わった。唯、OP馬は57.5キロのハンデが、3歳は昇級初戦ということで、最終評価は今後の吟味による。
同じく日曜、最終Rの1000万下はペステゲシェンク。木曜の朝一番にウッドで追われて3頭併せの最外で先着。先行したアドバンテージというより、上手く馬を手の内に入れてリズム良く走らせていた点に好感が持てる。それ以前にはしっかりと馬を攻めていることからも抜かりはない。
古賀厩舎からはもう1頭を推奨。福島・三春駒特別のアイズオンリー。最後尾から内にもぐり込んだ直線では一気に伸びて3馬身先着。5F65秒台と負荷をかけられたことでも体質強化を実感。1角までの距離のある2000なら自分のペースを崩さずに運べる。素質開花の1戦となろう。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。