外国馬の参戦が花を添えていたのは遥か昔。国内の能力比較が最大のポイントなのは言うまでもない。水、木の分かれたJCの追い切り、先陣を切ったのはゴールドアクター。
雨の影響を受けた水曜のウッドだが、朝の早い時間帯だけに極端に時計を要するコンディションではなかった。そのわりに6F86秒4というのは遅い気がする。唯、1週前にハードな長目追いを消化して馬体ははち切れんばかり。つまり、微調整で十分だということ。とはいえ、パートナーをリズム重視で追走しながら外に合わせて重厚感溢れるフォーム。ゴール板を過ぎてもスピードを緩めなかったから、終わってみればマイルから追ったに等しい。
前哨戦の反動があった春・天皇賞を除けばパーフェクトな昨夏からの過程。その2走前と違う。オールカマーからの間隔が十分だし、1度実戦を経験したことで推進力が遥かに増した。有馬記念の連覇が念頭にあるのでは…という考えは邪推に思えるほどのデキ。
菊花賞で期待外れに終わったディーマジェスティの巻返しも視野に入れるべき。2度目のハロー明けにウッド入りして3頭縦列の態勢で進む。ゴールでは3馬身遅れとの記事になるが、先頭との差は3F地点でも1秒4で馬体が合う機会がなかったから単走扱いが妥当。
ここ2走、早目の競馬を目論んでいたが、果たしてそれが同馬本来のモノだったかは疑問。美浦で完璧な動きを見せた前走、それでもプラス体重だったように、初の関西圏への輸送がネックになった気がしてならぬ。反面、消耗が少ないのは帰厩後のスムーズな動きと鋭い反応が示す通り。ダービー時の矯める競馬なら古馬相手でも。勿論、斤量利が追い風。
追走したら内というのが鹿戸厩舎の公式から外れた追い切りだったのがビッシュ。ゴールドAの10組後だから、馬場が荒れていないうちの3頭併せでラストまで手応え抜群のままフィニッシュ。1F12秒7という数字以上に速さを感じたのは、回転の速い捌きゆえ。どことなく惚けた感じの秋華賞だったから反動などないし、相変わらずの活気。能力的に足りないとは思うが3連の抑えぐらいには付け加えて良いかも。
もう1頭の牝馬ルージュバックは木曜。外厩で態勢を整えるいつものパターンだから、日曜の靄で詳細が不明というのは気にしなくて良い。ウッドの向正出しからで行き出しは4F。前との差を1秒に保っての道中から直線に向くと牝馬とは思えぬダイナミックなフォームで駆け抜けた。
4F52秒6~上がり37秒3。雪が舞う中で馬場コンディションが最悪の中、内目とはいえ好時計マークだから状態面には太鼓判を捺せる。また、道悪経験はないものの、4歳秋を迎えてパワフルさを増した昨今、時計を要する状況になればそれがプラスに働くシーンも。
2場開催となって選択肢が少なくなる分、京都に参戦する関東馬は先週より増える傾向。日曜メインの京阪杯に臨むクリスマスを侮ってはならない。準OP脱出までに時間がかかったが、展開の綾があったし長いブランクから立ち直る途上という状況。唯、今夏の北海道で軌道にのって2連勝。
確かに、前走と異なる別定戦で大幅に相手強化。が、実にキビキビした動きで活気が漲っている中間があったし、セーブ気味だった直線でも5F66秒8をマークとひと皮剥けた感さえ。立ち回りの上手さを生かせる京都なら下馬評を覆せる。
あとは日曜・京都11Rのマキャヴィティ。久々だった前走は案外な伸び。唯、どうにか間に合わせた過程での臨戦だったし、前を深追いするという本来のレース運びからはかけ離れていた。輸送を控えた直前こそ4Fからのしまい重点だったが、ユッタリと体を運ぶフォームが好印象だったし、1週前には5Fからビッシリ併せての4馬身先着で時計も5F67秒2と、稽古駆けしないタイプとは思えぬ内容。体にハリが出て一叩きの効果は絶大。[0.0.0.2]のコース実績には目を瞑る。
東京の特別戦ではまず日曜7R。ここ2走は流れに乗れていないセイウングロリアスの変り身に期待。武市厩舎らしくしまい重点を繰り返す過程こそこれまで通りだが、道中で矯めが利いた最終追いの直線では身体能力の高さに裏打ちされた動きで豪快に伸びた。これは、中間の攻め強化で集中力が増した為。勿論、即実戦に結びつくかはレースになってみなければ分からぬが、きっかけにはなる筈。少なくとも、一本人気が予想されるクライムメジャーとの差は詰まるに違いない。
日曜10Rは準OPながら上に行っても活躍が見込める馬が集った鞍で目を離せない。軽く気合いをつけた程度でパートナーを2馬身置き去りにしたメートルダールは素質開花。切れに磨きがかかった印象で前走からの1F短縮ならフル回転。何せ、共同通信杯でディーマジェスティに迫った時と同じ条件なのだ。
順調さを欠いた前走時より体のバランスが良くなったのがナスノセイカン。首から肩にかけての筋肉を躍動させての伸びがパワフルで春の勢いを思わせる3頭併せでの先着。鞍上強化は陣営が手応えを感じているからこそ。
それでもキャンベルジュニアには一日の長を感じる。ムーアを背に6F追いを敢行した先週の時点で推奨馬に挙げようと決めたほど。麗しい馬体で力強さも今回の休養で増した。最終追いの3頭併せでは5Fの入りが15秒1。堀厩舎にしてはハイピッチながら4角手前で既に前を捕らえても余裕であろうといった態勢。痺れるような手応えでの1F12秒2と抜群の伸びだったのは一層厚みの出た馬体ゆえ。鮮やかな成長曲線。
木曜、同じ時間帯に登場した2歳が、日曜4Rに臨むナイルストーリー。先週のハナレイムーンほどではないかもしれぬが、取りこぼしが許されないレベル。同じ併せ馬の組でこちらは2番手からで、キャンベルJに対してなら5Fで3馬身のアドバンテージ。真ん中に入った最後には手応えで劣った挙句に1馬身遅れ。しかし、相手が相手だけに仕方ないし、自身は確実に時計を詰めている。最後に厳しいメニューを課せられたことで一段とレベルUPするだろうし、ひと際目立つ垢抜けた好馬体で性能に疑いを挟む余地なし。
相手で面白いのがコスモライジン。美浦入り後の1本目が坂路53秒2。外厩での進み具合が分かろうというもの。しかも、ウッドでの併せ馬ではセンス抜群で2本ともに先着。相手に合わせた感があるからスパートが早ければもっと引き離していたに違いない。追っての味が魅力で距離ピタリ。
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柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。