アーリントンC勝ち馬・ペルシアンナイトが皐月賞で結果を出したことによってダービーへ。マイル路線のトップに躍り出た馬のローテーションが今年の混沌とした状況を物語っている。従って、今週のNHKマイルCも掴みどころがない。
唯、能力面はともかく、好調馬は揃っている。まずはウッドで追い切りを消化したクチから。前哨戦の中山では直線半ばで突き抜ける勢いだったタイムトリップ。前走後の始動が定石通りで直前にも併せ馬で5F65秒6の好時計をマークとデキには太鼓判を捺せる。行き出しから自然体での14秒5はさすがの機敏性と言わざるを得ない。しかし、それが両刃の剣で、鋭さ満点でも長くは続かぬ脚。やはり現状では1400ベストか。
京王杯→ジュニアCと、そのタイムTを負かしているのがディバインコード。京都のOP特別でそれまでの勝ち味の遅さを払拭。それもその筈で馬体に力が漲って進境著しいからだ。今回は中1週でもウッド正面から入って助走を十分に取る。4Fを過ぎてもセーブ気味に進んで前との差を保って直線へ。ゴール前だけ気合いをつけて図ったような抜け出しと瞬発力が身についた模様で、アーリントンC3着馬。マークは不可欠。
久々の芝だった前走で勝負に絡んだリエノテソーロは入念な乗り込みで3月以来といったブランクを感じさせぬ。特に、全身を使ったダイナミックなフォームでパートナーを一気に2馬身突き放したラストが秀逸。唯、こちらも距離が課題。アネモネSは緩い流れに助けられたからだ。芝云々以前に問われるのはそれ。
となると、関東馬では坂路を最終追いに選んだ2頭をピックUP。まずは皐月賞で極端な戦法が通用しなかったアウトライアーズ。元々、前向きな気性でマイルが最適。そのカテゴリーに属しながらも前走の2000で0秒6差だったから凄い。しかし、当時が馬を追い込んだ究極とも言える仕上げ。その反動が歩様の硬さに表れてはいまいか。水曜の坂路50秒8はともかく、1週前の段階ではスムーズさを欠くウッドの動きであった。少々評価を下げる。
日曜のウッドが実質の追い切り、坂路53秒5で締めたのがアエロリット。つまり、今回は目の当たりにできなかったことに。けれども、角馬場やキャンターを見る限り洗練された馬体で遠征後も好調をキープしていると判断して良かろう。桜花賞時にも指摘したことだが、そもそも冬場は馬と相談しながらの仕上げで絶えず重目が残っていた。それでも、2月の当コースで1分33秒3。当然ながら首位争いに食い込む。
同じ菊沢厩舎で飛躍を期すのがダイワキャグニー。こちらは土曜メインのプリンシパルS。最終追いはハロー明けの口火を切る併せ馬だったが終始セーブしての先行併入。4F55秒0だったから時計的には物足りぬ。しかし、若さを残す完成途上の段階ならストレスを避けるのがベター。しかも、先週にはウッドで上がり38秒を切る併せ馬を消化しているのだ。十分過ぎる運動量で身体能力の高さを再認識。デビューからの2戦、追い切りではブリンカーを着用していたほどの幼さ。だから、弥生賞は能力というより、経験のない中山に戸惑っただけ。そこで見限るのは余りにも早計。2400なるダービーはともかく、TR程度であれば突破可能。
あとはチャロネグロ。前回、当欄で推奨したように角張ったデビュー当初とは一変の洗練されたシルエット。加えて、力強い捌きで伸び伸びと走っている点に好感が持てる。2週連続の3頭併せでいずれも6F追い。成長期に負荷を存分にかけることのできる強味を発揮しての直前には一段と豪快なフォームで駆け抜けた。ジックリ構えられる府中替りもプラス。
古馬のレースではOPでは京都の鞍馬Sを取り上げる。ここはキングハート。久々だった前走時も推奨して期待通りの走り。その反動は微塵もなく、前を行く他厩の併せ馬に迫ったところがゴール。従って5F66秒台でラストに至っては目一杯ではなくても12秒1の速さ。鮮やかに上昇カーブを描いている今、中山の坂でも難なくこなせるようにはなったが、理想を言えばフラットな直線。56キロの別定で2キロ増しとなっても気にならぬ。
新潟では開催唯一の重賞、名物レースのひとつに数えられる新潟大賞典がメイン。速い上がりが必須で能力より適性第一という特殊なレースだからだ。関東ではメートルダールがピークに達した。2月以来となるが、鎧を纏ったような馬体で質感が大幅にUP。つまり、56キロのハンデながら1分58秒3で勝ちあがった休養前を遥かに上回るデキなのだ。実際、1週前の併せ馬があって日曜にも同じく5F67秒台。軽く流すかと思われた直前にしても乗り手の感覚はそうだった筈。見た目にもそう。が、6F過ぎから自然体で加速。半マイルからは12秒台を刻んだ。身のこなしが軽くてフットワークが大きい故で、それが最後まで持続。充実著しい今、OP相手に臆するシーンはなかろうし、初コースになる新潟も合いそう。主力は同じ4歳のジュンヴァルカンで◎はどちらか微妙なところ。
5歳以上で面白いのがロンギングダンサー。田村厩舎に移籍してからはそれまでと全く違う調教パターン。速い時計で負荷をかけてきた効果が表れる頃。3馬身遅れの最終追いにしても5F67秒を切ったのなら追走した分で捌き自体が実に力強い。昨夏のGⅢ3着を忘れてはならぬ。
あとはトルークマクト。外に併せての3馬身先着で追えば追うだけ伸びるといった勢い。ゴールに近づくにつれ、完歩が大きくなる故で以前には見られなかった部分。昨11月の準OP勝ちは評価に値するし、そこからの1キロ減。人気になりそうなフルーキーに金鯱賞で先着していることに着目。
同じく新潟からは、土曜・三条特別のゴールドサーベラス。中間には3本の併せ馬を消化して、うち2回はOPが相手。このメニューによって明らかにレベルUP。直前には内の馬を圧するかの如く駆け抜けた。トモにハリが出て推進力が増したからこその1馬身先着で余裕綽々。末脚を生かす戦法を取ってからとなると底を見せていない段階。果敢にも西下した阪神では今回より強力な相手でも大崩れがなかったほどだから、今回はメンバー的にもチャンス。
府中に戻っての特別戦では土曜の立夏Sを。2月以来となるイーグルフェザーの態勢が整った。5F69秒を超える時計だが、外に併せてラストまで手を緩めずに併入。今思えば冬場は少々加減した稽古だったし、左回りを意識するあまり間隔が詰まったローテーションで挑んだのが前走。追走に余裕のなくなる1400に持ち味が封じられたということ。2週連続の一杯追いで太目感なし。1600万下にとどまってはいけない馬。

柴田卓哉
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。