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競馬コラム

柴田卓哉:美浦追い切りレポート

2017年05月17日(水)更新

微妙になったオークスの◎候補は美浦から

桜花賞で一本人気が伸び悩んでの3着、それによって混沌なったオークスの下馬評は関西優位。ソウルスターリングの復権なるか否かが最大のポイント。確かに、早熟であるかもしれない。唯、デリケートな牝馬でキャリアを積んでいない段階。繰り返しとなった関西への輸送が響いたという見方も成り立つ。

短期放牧を経ての始動が坂路オンリーと軽かったのは承知。しかし、ここ2週の3頭併せで十分に負荷をかけた。特に、変則的だった先週と異なり、1度目のハロー明けだった直前は3頭縦列の最後尾から内にもぐり込む定石通りのメニュー。しかも、1F地点で2馬身後方にいながら抜群の反応で同時入線。ラストは12秒3であった。全身がバネといった身のこなしが非凡さの証しで、乗り手に順応な点でも距離に対する不安は少ない。2歳女王として恥ずかしい競馬はできないだけのデキ

このライバルとして同じ関東馬を。フローレスマジックだ。TRでひと押しが利かなかったのは感心できぬ。軟弱なメンバーにあって、だからだ。けれども、2月以来の実戦だったにも関わらず、しまい重点の繰り返し。レースの上がりが34秒7という決め手比べにも泣かされた。

今回は中3週と間隔が詰まる上に渾身の6F追い。しかも、入りが14秒9で5Fからに至っては14秒0のハイラップ。それでも間を割った直線では脚色で優った上でのラスト12秒0だったから中身が違う。はち切れんばかりのハリがあればこそで、上昇度といった点ならソウルSを上回る。◎をどちらかにするか、追い切りを終えて微妙になった。

前走のTR、当欄で取り上げたのがホウオウパフューム。元々のポテンシャルに加え、馬体の充実が目立ったからだ。勿論、今回も1週前には5F66秒を切る好時計だったし、直前までシッカリと追えたように状態には太鼓判を捺せる。しかし、中山と府中では落差が大きい。現時点で長い直線を乗り切るほどのパンチ力はない分、連下が一杯。

冒頭の2頭に絡めるのは関西勢。堅実なリスグラシューと、クイーンCでフローレスMを負かしたアドマイヤミヤビ辺り。

京都の重賞は平安S。アンタレスSの結果を踏まえると、やはりクローズUPしなければならぬのが東海S。そこでのグレンツェントは、アンタレスS勝ち馬モルトベーネに対して能力差を見せつけているからだ。つまり、前走は全く力を出し切れなかったということ。

フェブラリーSの出走権を得ながら、同厩5歳との兼ね合いもあってローテーションが狂った。謂わば眠りから覚めやらぬ状態で使ったのが前走という見立て。ならば、恰好の叩き台だし、実際に活気を呈してきたこの中間からもそれには合点が行く。特に、3頭縦列での行き出しが6Fで徐々にペースUPする理に適った最終追いでは手応えに余裕を残しながらの併入。稽古駆けしないタイプとしてはアクセントの利いた動きで時計も上々。フラットなコースに対する適性も後押し。

西下する馬でもう1頭。同じダート戦でリヴェルディが面白い(土曜・鳳凰S)。取り消し明けになるが入念な稽古を積んでブランク明けの不安は皆無。何せ、古馬を相手にしたここ2週でパートナーを遥かに上回る時計をマーク。追走した負担を感じさせぬ直線の伸びがあればこそだし荒削りな面も解消しつつある。確かに、マイラー寄りの体型だしコーナー4回の初コースと克服すべき課題は多い。しかし、右回りのウッドでは瑕疵がないし、1800が少々長いということなら周りも同様。迫力満点の調教を信じる

他の3歳戦にも触れておく。まずは日曜・府中6Rのダイワドノヴァン。古馬1000万下を相手に先行しての併入で5F69秒5と目立たぬ。が、抜き去られそうになったゴール前でもうひと踏ん張りとブリンカーの効果が覿面なのだ。パワーに頼った走りからダートでの我慢比べが理想だろうが、身体能力が高いという側面も。自らレースを投げてしまう面を一掃させる馬具と強引なレース運びがあれば、2月の1分35秒3を大きく更新できる。

最終週を迎える新潟からは早苗賞のセダブリランテス。暮れのデビュー勝ちはダート1800。現に、馬格には恵まれているし、前捌きも硬かった。が、砂を被りつつで思うように進まぬ道中、直線に入ってからは2着馬に決定的な差をつけられながらもひと追いごとに伸びての差し切りと非凡。更には、ここに至る過程で全身を使う滑らかなフォームに様変わりしたのだから、本質は芝。特に、最終追いの3頭併せでは内2頭に2馬身先着。先行した利はあったものの、OP相手に‘おいでおいで’。たとえテンからビッシリと併せていても遅れを取ることなど考えられないほどの余力。条件替り、休み明けだからこその旨みがある

日曜1Rのパルトゥーは今度こそ。超スローの2番手だった府中1400で5着と手応えほど弾けなかった。唯、デビュー前からスピード感抜群の動きで能力は垣間見せていたのだ。パンとしていない故のダート使いから芝と順当に良化。元々、前肢が綺麗に伸び切るフォームで軽い馬場で持ち味を発揮すると見做していたし、前向きな気性からも1F短縮となればフル回転。単走ながらラストではシッカリと反応して12秒6。数字以上の切れを感じさせたことからも叩いたことで一本芯が通った感

最後に府中に戻って土曜メインを。ここまでトントン拍子に進んできたアストラエンブレムだが、大阪城Sでは初距離、初コースを難なく消化して上がり32秒8の切れを発揮。今回は得意に左回りに戻る上に、しまい重点を繰り返す小島茂厩舎独特のメニューを消化して更に洗練された馬体に、大きく追走して」半馬身及ばなかった追い切りも瑕疵にはならぬ。唯、1.5キロ増しのハンデに加え、ピンポイントはマイルという見方は変わらぬ。勝ち切るとまでは断言できぬ。

新潟大賞典にも登録があったクラリティスカイが漸く登場。今月上旬に態勢を整えていたわけだし、3頭併せの最内から追い出してのラストは12秒1と鋭い伸び。大きく追走した道中を考えれば中身は濃厚で首位争い必至。

唯、斤量をファクターとして重視すれば55キロのナスノセイカンが最右翼。馬場の荒れた先週の木曜に正面からウッド入りすると5Fから加速して結果66秒台。最後まで揺るぎのないフォームで叩き出した時計が出色だったし、それで覚醒した。直前は矢野進厩舎としては最も質の高い併せ馬。鞍上のアクションに即反応の1F手前からは糸を引くような伸びを披露したのだ。府中まで待機したことが報われる筈。

プロフィール
柴田卓哉

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

 

柴田卓哉

SHIBATA TAKUYA

学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。

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