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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年11月27日(水)更新

心地好い居酒屋:第78話

「けっ!どこが国際GⅠだ!」――。外国馬の参加はゼロで社台絡みの馬ばっかだった「ジャパンC」の想定メンバーが発表された時から怒っていた「頑鉄」の親爺。レースが終わった翌25日に遠野が顔を出すと、横山と二人、6時前というのにカウンターではなく、早々と指定席に座り、何やら喋っていた。酒はなく湯飲み茶碗と茶請けの皿が置かれている。

<昨日のことで盛り上がっているんだな>。思いつつ寄って行くと、二人して振り向き「らっしゃい」「ご無沙汰してます」と挨拶があった後、案の定というか、親爺がいきなり「マカヒキが③着に来てくれればよぉ」。てっきりノーザンと多すぎる外国人ジョッキーの文句かと想像していただけに拍子抜け。<そっちか>とカクンだ。

「いや。俺もよ、『ノーザンC』には参加する積もりはなかったけど、マカヒキが出てると話は別。引退するまで買い続けるしな」。親爺にとって“思い入れ”のある馬なのだ。「清水さん、最後の『ダービー』予想で渾身の◎。儲けさせて貰ったし、買わない訳にはいかんよ」。複勝でもマカヒキを買うことで清水さんを偲んでいる訳だ。ロマンチストではある。

「始める?」と親爺。「そうだな『千寿』の熱燗を貰おうか。横山君も一緒でいいだろ」「あ、はい」。横山が答えた時には親爺は立ち上がりお通しを持ってきた。おろし大根の上にタップリの生イクラが乗っている。遠野は酒を待たず、お通しに箸を付けた。噛むとイクラがプリッと弾け大根の甘みがジワッと広がった。旨い。

「ところで横山君はどうだった?」「聞いてくれます?」。嬉しそうだ。「おまさちゃんが来るまでは大丈夫だよ。どっちにしろ、その顔からして損はなかったみたいだね」「ええ…」と答え、身を乗り出した時に「お待ちどうさまっ」。熱燗が届いた。

 話は中断で、親爺がそれぞれにお酌を。横山が徳利を取り上げ親爺に「どうぞ」と。揃ったところで、猪口を軽く上げ、遠野は一気に飲んだ。「うめぇ~。空きっ腹に熱燗は効く」と。「だから先にイクラを食ったんだ。ちょっと待って」と親爺が言い、板場に行くと、切り干し大根の煮物と蒲鉾を持って戻ってきた。「飲む前にもう少し食った方がいいよ。森山さんじゃないけど、気を付けてよ」「ありがとう。これだけあれば十分。後は皆んなが来てからにして。で、塩梅は?」。横山に顔を向ける。

「馬連を本線で」とニッコリ。慣れない熱燗に噎せながらも「遠野さんの“勘”を参考にさせて頂きました」「何じゃそれ?」「ほら『皐月賞』でヴェロックスが致命的な不利で負けた後、間を置かずしてシャケトラが安楽死。『金子さんもとんだアヤが付いたもんだ』と仰り『(天皇賞で)ユーキャンスマイルが菊花賞(③着)以上の結果を出せばともかく掲示板を外すようなら…』とも」。

 確かに言った覚えがある。「それで?」「当時のスマイルは⑤着。“アヤ”の判断は微妙だったのですが夏(7月30日)にディープインパクトが死んだでしょ。金子さんの権利がどの程度あったかは知りませんが<やはりアヤが付いた>と確信しまして、少なくとも、今年の古馬GⅠは割引こうと」。そこまで言って、やっとイクラを口に入れ「美味しいです。祖父と行った札幌の生イクラを思い出しました」。機嫌がいいと饒舌にもなる。

「親爺には悪い(マカヒキ)けど金子さんの4頭を外せば、かなり絞れるわな。とはいえ今回限りにしてくれよ。アヤだの験(ゲン)に科学的な根拠はないんだから。俺も荷が重いよ」。遠野が言い、擦ったばかりの山葵を乗っけた蒲鉾を食べ、新しい酒を呷った。黙って聞いていた親父が急に「エビデンスってやつだな。うん」。思わず遠野と横山は顔を見合わせ目をパチクリ。「でもな、とのさんの“勘”や“験”は実績と努力、それに実戦等で培われたもの。それだけの根拠はあると思うぞ。少なくとも丁半博打やカジノの赤黒にスロットマシーンよりはな」。カジノ反対の親爺にすれば週刊誌(新潮)で報道されたノーザンの親方・勝己が政治献金したり、カジノ誘致に積極的なのが気に入らないみたいだ。

「今年の『ジャパンC』は大幅な売り上げ減でしたし、もしカジノが解禁されれば、馬券代がカジノに消えて、ますます売り上げが減るかも知れません。勝己さんも、馬=ファンの馬券のおかげで今があるのに……。欲なんですかねぇ」。横山が親爺の意見に同調する。

「上を見ればキリがない。俺達は<下を向いたら後が無い>ってな」。遠野がチャチャを入れると「あまり先もないしな」と親爺。その通りなのだが、森山さんを亡くしたばかりだけに冗談が冗談ではなくなり、二人して「ふぅ~」と。どう対応していいのか分からない横山は言葉もなく手酌で飲む羽目に。

 チョッピリ沈んだ空気が漂いかけたタイミングで玄関が開いた。「早い!」と喜んだのも束の間、客は常連のゲーム屋さんが5人。そそくさと親爺が迎えに立った。と同時に今度は「TMC」の連中がやってきた。先頭は梶谷だ。先客の5人に頭を下げ、指定席に着いた途端「さすが遠野さん。私も“熱燗”を飲みたかったの。急に風が冷たくなっちゃって」。

 阿吽の呼吸で仲居の木村さんが、早々に猪口とビール、「黒霧島」にグラスに氷を用意した。「お疲れ」と、梶谷に声をかけ遠野が酌をすると文字通り“駆けつけ3杯”で飲み干し「美味しい。暖まる」と。全員に好みの酒が行き渡ったのは、その後だ。遠野は2合徳利での熱燗を注文。梶谷はお通しや、ふろ吹き大根を見て食べて、はしゃいでいる。 「お会いでき良かったです。遠野さんのお耳にお入れしたくて」。無駄なく要点を纏める能力のある下川が酔う前に口を開いた。「おお。聞きたいねぇ」。頷き先を促す。「椎野の話では遂に甘方局長と別部さんが大衝突したとか」。遠野は黙って梶谷の酌を受け耳を傾けた。

「別部さんがクライアント2店を開拓して広告局で話題になったのですが、それを聞きつけた局長が広告に来て『良かったなぁ。でも俺に報告はないし、たかだか2店契約できたからといって図に乗るんじゃないぞ』と。褒めてるのか恫喝してるのか、周りもビックリしたそうです」。下川は「黒霧」のロックを鳴らしながら続けた。「別部さん曰く『部署が違いますし報告の義務はないかと。もっとも、偶然でも会えば、ついでに報告する積もりでしたが』と。決裂上等!嫌味の返答ですよね」。そこまで言ってグラスの焼酎を空けた。

「“窮鼠猫を噛む”って奴だな」。刈田が反応すると、横山が「“一寸の虫にも五分の魂”じゃないんですか」と。遠野は<甘庶処の有村社長が動いたな>。思いつつ「そうかぁ。別部は鼠か虫になっちゃったか」と呟くと3人は大笑い。別部への評価を窺えさせたが、梶谷は“我関せず”で酒と皮剥の刺し身に夢中。井尻は苦虫を噛み潰した様な顔で“黙ってサッポロ”状態にある。甘方との関係に頭を悩ませているのだろう。




源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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