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競馬コラム

心地好い居酒屋

2020年01月29日(水)更新

心地好い居酒屋:第81話

<野党も情けない。くだらねぇ質問ばかりで。政府側は言葉だけが上滑りして身の無い答弁の繰り返し。茶番そのものじゃないか>と独りごちながらテレビの国会中継(予算委員会)を見てる時に携帯が鳴った。「頑鉄」の親爺だ。

「今日は寒いし、雪が降るかも知れないってんだろ。どうする?いやね、さっき“知ったかさん”から電話があって『遠野さんの体調が心配で…。横山にも言っておきますし、日を改めますか?自分達のことはお構いなく』と」

確かに寒く外は雨。一瞬<欠席>が脳裏を過(よ)ぎったが思い直した。「連中とは今年会ってないし、電車が止るほど雪も降らんだろ。予定通りでいいよ。もっとも連中が止めたいってんなら俺は構わんけど」「とんでもない。とのさんとの“新年会”の日が決まって皆んな楽しみにしてたんだから」。ここは役人の“忖度”ではなく後輩の“配慮”として素直に喜ぼう。

出掛ける準備をする間もテレビは点けっぱなし。相変わらず核心を衝く質問がなければ政府側はもちろん、役人もまともに答えることはない。それでも遠野は最後まで見届け家を出た。傘は持ったが、雨は上がっていて幸いにも駅に着くまで雨は降らなかった。

築地は小雨。傘を差すほどじゃなく畳んだまま「頑鉄」に到着。ドアを開けると湯気と暖気がドッと押し寄せてきた。6時を過ぎたばかりというのに左の壁際には例のゲーム屋さん一行が今日は5人。隣の席には築地場外の旦那衆が3人。いずれも鍋を囲み、さらに驚いたのは指定席で、すでに5人全員が揃っていたことだ。

井尻、梶谷とは先日、阿部秘書を加えての飲み会で「明けましておめでとう」は済んでるが、とりあえずは、素知らぬ態で、全員と新年の挨拶を交わした。テーブルの上には「黒霧島」にビール、それに徳利が。これは梶谷の前にある。その梶谷の後ろを通り過ぎると、すかさず梶谷が立ち上がり、遠野のコートを受け取りハンガーにかけた。焼酎のお湯割りなのか耐熱グラスを持った刈田の手が止り、羨ましそうに見上げた。

「お!おまさちゃんは熱燗か?『千寿』?」。遠野が親爺を見遣ると「ああ。もうき~ちゃん(仲居の木村)が新しいのをツケてるはずだよ」。ほどなく盆に徳利とお通しを乗っけてきた。テーブルに置くや否や梶谷が徳利を取り上げ「どうぞ」と。受けた遠野が徳利を持ち梶谷に注ごうとすると「あら、駆けつけ3杯でしょ。空けて下さい」。徳利を渡さない。「勘弁勘弁。年寄りを苛めないで」と謝り、徳利を取り上げ梶谷と親爺の猪口を満たしたところで、改めての乾杯となった。

遠野が一杯、二杯と飲み、お通しの独活の酢味噌和えに箸を付けた。春の香りが微かに漂い噛むと心地良い苦さが舌を刺激した。ちょっぴりの辛さは辛子だろう。「この蛸とセロリの酢の物も美味しいですよ。千切り大蒜(にんにく)がミソかな」。遠野に酌をしながら梶谷が勧めた。

「親爺さんから聞いたんですが国会中継をご覧になっていたとか」と井尻。「つまらんなぁ。一番悪いのはアベだが、野党も酷い。予算委員会以前に与党に対峙する姿勢がなってない。立憲の枝野だって希望の党を“排除されて”仕方なく党を立ち上げたわけだろ。他に受け皿がないから野党第一党の党首になっただけのこと。威張れたもんじゃないのに立憲の名前に拘りやがって」。合流が停滞し、国会中継を見てきただけに余計腹が立ったのか、憤懣やるかたなしの口振りで吐き捨て、酒を呷り猪口を梶谷に差し出した。

「あらあら。お年寄りが無理しちゃダメですよ」。やんわり窘(たしな)め、それでも酒を注ぐ。「ごめんごめん。昼間テレビなんか見なきゃ良かった」。遠野が頭を下げる。「ほれ、とのさんが現役の時から言ってるじゃん。『バカに期待するから腹が立つんだ』と。なぁ皆さん」。親爺も場を和ませるべく誰にともなく言い、徳利を持ち上げた。

「そうそう。バカとか利口の問題ではないのですが、別部さんに続いて運動部の金山さんも甘方局長に口答えしましてね」と刈田。「へぇ~。それは面白い。で、どうなった」。旨いもの(蛸とセロリ)を食ったせいか機嫌を直した遠野が興味津々で耳を傾けた。「原因が那辺にあるか分からないのですが、聞こえてきたのは『よくも俺に向かってそんなこと言えるなぁ。誰のおかげで今の立場があるんだ。なんなら大阪に行ってもらってもいいんだぞ』との局長の怒声だけで。だったよな」。刈田の問いに下川と横山が頷いた。井尻は口を噤んでいる。

と、掘り炬燵のせいもあって梶谷が左足の腿を遠野の腿に二度三度ぶっつけてきた。<なるほど経費の名前貸し絡みか>。納得がいった。「いつのことだよ?」と遠野。「あれは豊さんがアドマイヤビルゴで勝った次の日ですから20日の月曜日です」。すかさず横山が答えた。「凄い覚え方だな」と下川が苦笑いしながら感心する。「6億円馬と近藤&武豊――。競馬界にとっては歴史的な日でしたから。ですよね遠野さん」「うん。まぁそうだな。それについては今度、詳しく話すとして、問題発生から一週間だろ。動きはないの」。問いかけながら酒を飲み、届いたばかりの皮剥の刺し身を肝醤油に浸した。

「金山さんは謝るキッカケを逸した感じだし、広告の別部さんと違って直属の上司と部下ですからねぇ。横山と金山さんが揉めた時も横山を叱らなかったし、本当に飛ばす積もりかも知れません」。刈田が言うと、最近トミに接触を余儀なくされている井尻が躊躇い気味に「あり得るな。困ったもんだ」と。これには一同アングリだが、甘方の傍若無人、専横さに周りがピリピリしているのも確か。

井尻も悩んでいるのなら、部下の前で多少は甘方を批判してもいいだろう。遠野はそう思った。「“夜郎自大”って言葉があるが、俺に言わせりゃあ野党のくせに第一党の党首ってことでふんぞり返っている枝野と同じようなもんで、ちっぽけな会社の局長が人事を握ることで自分を大きく見せようとするんだから笑っちゃうよ。これは、あくまでも俺の甘方評だから、君達は気にしないで」

反論する奴は誰も居ない。いや、むしろ正面の横山なんて喜んでいるフシがある。「頂きます」と断り、手酌で熱燗の残りを空になった焼酎グラスに流し込んだ。「これじゃあ熱燗が間に合わん」と親爺が大慌てで「お~い。超特急で熱燗2本」と注文し「今、ブリしゃぶを用意しているから」と。続けて「政治家と役人を見れば良く分かる。人事ほど権力欲を満たすものはないもんな。昔、お宅の会社も色々あったし…。な、とのさん!」。

   

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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