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競馬コラム

心地好い居酒屋

2020年04月15日(水)更新

心地好い居酒屋:第86話

小池都知事が自粛要請についての詳細を発表したのは10日の金曜日。「頑鉄」はそもそも3月の終わりから通常営業は止めているし“第二金曜日”の飲み会は中止を決めていた。今、心を痛め、心配になるのは「完庶処」の立場と方針。


遠野は一応「親爺と二人、気になっておりますが、社長や京子ちゃん。そして従業員の方々にはくれぐれもお体には気を付けて下さい。お忙しい折でもあり返信は不要です」とのメールを送っておいたのだが、その返信が届いたのは月曜日13日夕方のこと。  前回会った時に5店ほど休みにしたとのことだったが、それに12店を加えて営業は逆に5店にしたとか。最後には「早く終息して美味しい料理とお酒、そして楽しい会話に包まれたいものです」と書かれていた。


<親爺も気にしているだろう>と思い「頑鉄」に電話すると「そうだよなぁ。対策遅れが、ここまで状況を深刻にしたのに妙案は出ず、だ~れも責任とらねぇんだから嫌になっちゃうよ。もっとも、今は責任云々より病気を退治するのが先決だけどな。その点でもとのさんは大丈夫か?こっちは後で横ちゃんがコンビニで摘まみを買って遊びに来るとか言ってたし…。二人で一杯やりながら『桜花賞』の反省会と『皐月賞』の検討会を開く積もりだから楽しめるけど、とのさんは気を付けてよホント」。労りの言葉が身に染みる。


「ところで、その『桜花賞』はどうした?俺はチョイはガミだったけど」「エヘッ。オレは浮いたよ」「お、大したもんだ。横山君の指導かい?」「いやね、横ちゃんは『レシステンシアは外枠⑰番が』と不安気だったけど、ホレ!何だっけ、昔、大外から出て勝った馬。豊ちゃんが終わった後『掛からないないよう敢えてスタートのタイミングを遅らせた』と言ったとか」「シャダイカグラだな」。遠野が即答すると「それそれ。豊ちゃんなら巧く乗ってくれると思って軸にした訳。さすがに3連複は無理だったけど、『今年の新種牡馬、特にエピファネイアとキズナ産駒は走る』と横ちゃんが言ってたからデアリングタクトはしっかり買っておいたよ」


 どうやら二人のコンビはうまくいってるようだ。


「横山君もよく勉強してるし考えもしっかりしてるもんな。無観客レース最初の中山に行った後の飲み会で『今後は騎手の移動も頻繁にせず“一週一場騎乗”を考えた方がいいかもしれませんね』とか中身のある意見をしてたが、今週からその通りになったしな。今後ともよろしく面倒見てやってよ」


「思い出した!。とのさんが『調整ルームの共同生活は危険、一考の余地がある』とか言った直後に横ちゃんが追随したんだよね。確か今週からジョッキーもJRA側の許可を得て自宅なりホテルから競馬場に行けるらしいじゃん」「ま、昔は公正競馬のため、ということで情報漏れを防ぐのが目的だったようだが、今のご時世には無理があったしな。いずれにせよ今後はジョッキーもこれまで以上の自覚が求められってこと。と同時に取材する方も美浦や栗東の出入りには十分気を付けてもらわんと」。そう言って遠野は立ち上がり冷蔵庫から冷酒を取り出した。銘柄は「匠」。伏見の酒だ。一口啜ると、音が聞こえたのか


「始めたの?」「テレビはくだらん奴がくだらん事を喋ってるしな」「それより『皐月賞』は何にする?」。相棒の横山の到着が待ちきれないようで親爺が訊いてきた。


「ディープインパクト産駒と新種牡馬キズナの争いじゃないか。ディープならコントレイルとサトノフラッグが双璧だが、ラインベックの大駆けがあれば金子オーナーも昨年のヴェロックスの恨みを果たすことになるんだけどなぁ。キズナ産駒のクリスタルブラックも穴馬には面白いかも。後で、じっくり横山君と相談してよ」


「うん。でもよぉ、あの小池がよく競馬を自粛要請の対象にしなかったなぁ」。自粛を要請される前に店を休んだ親爺が話題を変えた。横山が来るまでの繋ぎにされたようだ。でも不快ではない。外に出ない遠野にとっても望む所だ。「東京都は『東京都競馬株式会社』の大株主だし、大井競馬中止ともなれば、特別区にも金は入らんし株価もぐ~んと下がるからなぁ。第一“三密”じゃないし…」「なるほど。大井の開催を許して府中は禁止ってことはできんか」。親爺も納得だ。


「親爺んところは自粛で50万貰えるのかい」「そんなの分かんねぇよ。基準についてはウンともスンとも言ってこねぇし。時短でも営業許可だからとかなんとかといって補償はねぇんじゃないか。こちとらもアテにはしていないが、広島のバカ夫婦に1億5000万も放っておいて庶民には466億もかけてマスク2枚ってんだからフザけた話よ」「そっちは都の小池じゃなく国のアンベーだけどな」。遠野が冷やかすと「オリンピックの延期が決まるまではコソコソ話してたんだろ。見えないだけで似たようなもんよ。昔、清水さんが『目に見えないほど怖いもんはない。人の心みたいにな』と言ってたけど、ウイルスがまさにその通りだし至言だな」


 親爺、よほど清水に心酔してたみたいで一言一句、よく理解し覚えてる。「ところで親爺、ネットの口座作ったの?」。訊いた時に「あっ来たみたいだ。ちょっと待って。代わるから」「いいよいいよ。よろしく伝えておいてくれ」。電話を切った。  




源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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