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競馬コラム

心地好い居酒屋

2020年12月16日(水)更新

心地好い居酒屋:第98話

遠野が築地に着いたのは5時前。横浜を出る時は日差しもあり、予想外の暖かさだったのだが、駅から「頑鉄」までの数百㍍は時雨っぽく、風もあり耳がヒリヒリ。やけに冷たかった。<これからは換気も億劫になり、コロナも増えそうだな>と心配しつつ、チョッピリ開いていたドアを引き、中に入っていった。入り口近くにストーブが置かれている。


「らっしゃい!急に寒くなったなぁ」。親爺が元気よく声をかけ奥を指さした。指定席にはすでに横山が居て、遠野の顔を見るなり、立ち上がって框まで歩み寄り遠野を迎えた。「今晩は」と言いながら手を差し伸べ、ダウンとマフラーを預かってくれた。


「有り難さん」と応え自席に向かう。横山はハンガーにかけた後、間を空けて横に座った。前には焙じ茶が。「どうする?最初から熱燗でいい」「当然でしょ」。親爺の問いに答え、手に息を吹きかけていると、すかさず仲居の木村さんがお絞りを持って来た。“熱い”のが気持ちいい。落ち着いたのを見計らって横山が口を開いた。「『ジャパンC』は残念でしたね」。


先月の“会食”でデアリングタクトとコントレイルの①②着裏表づけの3連単を買うことを宣言していたのを覚えていたみたいだ。「うん…」と言い掛けたところに親爺が熱燗を木村さんがお通しを運んできた。


酒はもちろん「千寿」で、お通しはおろし大根の上に載っけたタップリのイクラと茄子の煮浸しだ。「今日は、いい筋子もあるから」。上がり框に腰を下ろした親爺が二人に酌をしながら胸を張る。自分の猪口にも注ぎ「お互い、こんなご時世でも、こうして飲める幸せに感謝せんといかんな」。親爺の殊勝な言葉で杯を上げた。まずは一気飲みで喉と食道を暖め、二杯目を持ち上げた時、親爺が「残念だったよなぁ『ジャパンC』は」とポツリ。


「プッ」。思わず酒を吹き出しそうになったが「そうかぁ。枕を並べて討ち死にか」と呟き、続けて「どうもルメールとは相性が悪いみたいだな」「ってことは昨日のサトノレイナス(②着)も買ってなかった?」「まぁな。ほら、減量の(軽い)西村が“我慢の3連休”だの“勝負の3週間”とかほざいていただろ。お上に従順な俺としては3連休の三日競馬は我慢。おかげで損をしなかったんだが」と言い、おろし大根とまぶしたイクラを口に入れた。


「確か『マイルCS』は<買えばデムーロとルメールの2頭軸3連複>と仰ってましたよね」と横山。良く覚えている。


「で、まぁ“勝負の3週間”に臨んだ訳だが、これが全滅、全敗…」「ったく。誰がお上に従順だよ。それは自己責任。現に俺達は昨日の『ジュベ』なんちゃらは馬連と3連複も⑥⑦の2頭軸でゲットだもん。な、横ちゃん!」。忖度のない会話が楽しい。しかし、聞いていた横山はそうでもないようで、慌て気味に割って入った。「ほら!『NHKマイル』の前に<金子オーナーのGⅠ勝ちがあれば、いきなりクラシックじゃなくこんなレースからだろ>と遠野さんが仰っていたのを思い出しまして…。なら、ソダシが絶好のチャンスじゃないかと…」。ちゃんと遠野に気を遣っている。


「これで綾が解消すれば『有馬記念』ではユーキャンスマイルも穴で面白いかもな」「そうですね。で現時点での軸は?」「使い込んだ馬場が悪化するのを願ってクロノジェネシスかな。間違ってもルメール(フィエールマン)は軸にしない」


二人の遣り取りに耳を傾け、フンフンと頷いていた親爺が酒を飲み干すと、突如マジな顔になった。「さっきの“こんなご時世に”じゃないけど、コロナは何とかならんか。GoToトラベルやイーツなんてキャンペーンは、もともと終息してから始めるはずだったのに。前倒しで税金使ってバイ菌(ウイルス)をばら蒔いてりゃ世話ね~よ。あの卑しい目とツラで<トラベルで感染拡大するエビデンスはない>と言われてもなぁ」


お上からのお達しがある前から自主規制している親爺が嘆き、怒る。


「今年の流行語“三密”。国の感染対策がこの程度ですから酷いもんです。あっ“マスク会食”と吉村と松井の大阪コンビの“イソジン嗽”もお上としては考え抜いた立派な対策だったんでしょうね」と横山。苦笑いしながら聞いていた遠野は「“三密”も『密室』『密談』『秘密』の『密』だよ。これならアベゾーから続くガースーじゃなく“カス”内閣も納得だな」。ヤケッパチ気味に言い、手酌で徳利を空けた。


「きぃちゃん!熱いの2本と刺し身ボツボツ頼む」。親爺が木村さんに伝え「今のこの国は大きな危機に見舞われているんだ。観光業界や航空企業だけでなく、ありとあらゆる企業がコロナで苦しんでいる。それでも庶民は必死に歯を食いしばって堪え忍んでいるのは、明るい未来が来ると信じているからだ。そんな国民に寄り添い支え、力になるのが政治家の務めだろ。そんな国民から目を逸らし、自分や身内の利益だけを追い続けるなんてけしからん。そうだろ!とのさん」。親爺が長口舌を揮った。


「名調子だが、どこかで聞いたことがあるような」と遠野。「半沢ですよ!半沢直樹」。横山が答えた。「親爺もアッタマ(頭)いいなぁ。もしかして旧帝大出身?」。菅の学術会議問題に引っかけて遠野がからかうと「6人を排除した理由というのも結局は菅の劣等感じゃねぇのか」と親爺。「そういえば、ウチの祖父も北大(北海道大学)のことを帝大と呼んでましたし、菅も子供の頃、親から<身近の帝大・北大か東北大を目指せ>と尻を叩かれていたのかも。でなけりゃ、今時“帝大”なんて言葉は出てきませんよ」と横山。


「コロナのドサクサに紛れてアベゾー内閣は黒川を定年延長させたし、カスは学術会議問題を有耶無耶にするんだろうな。選挙違反の河井克行・案里夫婦問題は扱いが目立たないし、あまつさえ克行の選挙区から公明党が出馬宣言だから驚きだよ。これで自民党が引くようなら広島出身の岸田は総理総裁の目は完全になくなるわな。カス狸は狐みたいな山口(那津男)と密謀、長期政権を目論んでいると思うよ。もちろん、あいつだけじゃなく周りには狡知に長けた奴が一杯居るだろうし。まさに半沢直樹の出番なんだがなぁ」


遠野が独りごちた時、酒と刺し身が「お待たせ」の声と一緒に届いた。直後「お待たせしました」で入ってきたのが井尻だ。慌てている様子だが、案の定で、席に着くやいなや「GoToトラベルが全国一斉に一時停止になりました。さっき菅が発表しました」「ふ~ん。全国ねぇ。それでなけりゃ意味ないもんな。でいつから?」「詳細はともかく東京と札幌、大阪それに名古屋が27日まで今まで通り。で28日から来月11日までが全国一斉です」。そこまで報告して喉を鳴らしビールを飲んだ。「さすがのスガ、しゃれじゃないよ。スガも世論に負けたか。それにしても中途半端な日程だな」。親爺が首を捻った。


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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