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競馬コラム

心地好い居酒屋

2021年03月10日(水)更新

心地好い居酒屋:第101話

啓蟄も過ぎ、やっと暖かくなったと思っていた矢先の冷たい雨。出掛けるには気が重かったが、先月8日に「じゃあ次回は同じ8日の月曜日に」と掛かりつけのクリニックと約束した手前もあって、仕方なく重い腰を上げた遠野。もちろん、東京まで足を伸ばす以上は「頑鉄」行きは折り込み済み。


出足が遅かった分「頑鉄」到着は5時半を回っていた。珍しく木村さんを筆頭に新規であろう俳句仲間3人が集まり鍋を囲んでいた。遠野はマスク越しに「今晩は」。と、慌てて木村一行はマスクを取りだし「ご無沙汰しております」「お元気そうで何より」。遠野が返すと「年寄りは教養と教育が大事ですから…ね、みなさん」。そう言ってニヤリと。「はぁ。まぁね。結構なことです」。適当にあしらい席に着こうとしたのだが「これこれは失礼。つい、お懐かしい遠野さんにお会いできて嬉しさのあまり駄洒落を。ご勘弁を」。リーダー格の木村さんが頭を下げる。


冷静さを取り戻した遠野は<なるほど>と納得「いえいえ立派なものです。「今日、用があって、今日、行くことは年寄りにとって何よりの健康法ですね」。さらっと応じると新規の三人がポカ~ンと。「ほらな。すごい勘だろ」と小声で二人に囁き、遠野には「畏れ入りました」と。


「いえいえ、さすがいろいろ鍛えられていますね」。手を横に払いながら指定席に着いた。親爺と横山は差しつ差されつ状態だったようだが遠野が席に着くと「寒い中有り難うございます」と横山。親爺は残っていた酒を横山と自分のに注ぎ分け、新しい熱燗を二本持って戻ってきた。遠野の顔を見た途端きぃ~ちゃんが用意したようだ。そのきぃ~ちゃんは、お絞りとお通しのホタルイカの酢味噌和えと空豆を届けてくれた。


「どうした?何の話してた?」。一杯飲み干した後、遠野が訊いた。「いつものようにノーザンとルメールには逆らえん!ってこと。昨日(弥生賞)だって川田のダノンがルメールを交わしてりゃあ②④バッチリだったんだ。死んだ子の年は数えねぇが、川田もノーザンには気兼ねしとるんかねぇ。早くスパートすりゃあいいのに」。断然の人気馬でナーザン生産馬。鞍上が川田ならってことで勝負した気持ちは良く分かる。


「俺もやられたけど、さすがに、それはないだろ。しゃあないしゃあない。ほれ一杯いこう」と。親爺と横山の猪口を満たしホタルイカの酢味噌和えを摘まみパクリ。「ホタルかぁ。やっぱ旬の味で旨い。昔はホラ何て店だっけ…。ダメだ。思い出せねぇ。かちどき橋の近くにあった活魚割烹で、よく活きたホタルを食ったもんだよ。醤油を吸わせて食うんだが、しっかり口元を箸で挟んでおかんと、吸った醤油を勢いよく吐き出してな」「へぇ~。美味しそう。いつ頃の話ですか」「バブルの頃だな。そうだ伊藤修司先生が上京してきたときスーパークリークの馬主さんから『食ってみたい』と所望され案内したことがあるから昭和晩年だな。そうかぁ。もう30年以上になるんだ」。急に昔を懐かしむ。「ボク、生まれてないし、食べたことないです」


「うん。あの後、ホタルの肝に虫が寄生してるとかで活食禁止になっちまったからなぁ。それより馬主のパシリをして、いや、個人の矜持の問題だからパシリはいい。しかし厩舎関係者に違法に近い行為を持ちかけ迷惑をかけた新聞記者がいるとはビックリだよ」 「おうおう。例の持続化給付金問題ね。昨年はレース数が減った訳でも、売り上げも減ってない。場外売り場のおじさん、おばちゃんが申請するのはともかく、調教師、騎手、調教助手に厩務員がコロナを利用して給付金で金を手にいれようとは言語道断!『税理士の先生が進めるのなら』と軽い気持ちで申請書を提出した人間も居るんだろうなぁ。このご時世で競馬が開催されるだけで感謝しなくちゃいかんのに、普通に給料が入り、騎乗手当や進上金も変わらずだろ。実に嘆かわしい」。親爺、ふぅ~と溜め息をつき、それから酒を飲んだ。


考えてみれば、馬券を買っているファンは本当にコロナで減収を余儀なくされている連中が多い。つまり競馬を支えている側が一番苦労してる訳だ。「そうそう、その税理士ってのは馬主なんだろ。『文春』や新聞報道では名前が出てねぇけど何て奴?横ちゃんなら知ってんだろ」。罪もない横山を“黙秘は許さんぞ”とばかりに睨み付け、蕗の薹とタラの芽の揚げ物に塩を振りかけた。「熱いウチに食ったら」と。


「えっまあ」「勿体付けないで。ホラ。喋りな」「大塚亮一さんらしいですよ」「何!最近ノーザンの馬を結構買ってるあいつか。菊花賞馬ワールドプレミアもそうじゃなかったか」「その通りです」


「お世話になってる競馬関係者へのボランティアならまだしも7~10%の成功報酬を取ってたんだって?ひでぇ話よ。一時、サラ金の利息過払い騒動の時は広告を打ち“バブル弁護士”が増えたけど、似たようなもんだな」


「そういえば、鼻汁じゃなく青汁王子もノーザンの馬を買って得意げだったけど、今回の大塚も税金がらみで儲けた金で高馬を買っていたってことか。考えてみればノーザンも迷惑な話だな。しかし、税理士ってのはそんなに儲かる商売なのかねぇ。俺が懇意にしている城田さんなんて普通に地味な税理士さんだけどなぁ」


 やっぱり親爺はいい人だ。


「ザックリ言って意欲満々で若い時から金儲けで税理士を目指したのと、税務署員上がりの税理士では経費の見方が違うからな。バブル税理士は脱税と節税すれすれの仕事するし、税務署上がりは、国民の義務を意識して経費には渋い。納税者がどっちを選ぶか自明の理。商いの額や経費が大きけれな大きいほど税理士によって納税額は違うし、税理士の報酬も違ってくる寸法だよ」


「今週は『金鯱賞』に昨年の牝馬三冠馬デアリングタクトが出走するし、阪神では『桜花賞』TRフィリーズレビュー。競馬もこれから、という時に…。悔しいですよ」。横山は本気で競馬の行く末を案じている。生粋の馬好きである。


遠野は良く飲み食った。かなり疲れたようで“今日・即”にでも脇息が必要なようだ。もっとも、酒を飲んでこんな事を考えているようでは周りを身内で固めたガースー無知蒙昧・ゴリ押し強権身内内閣の思う壺。<呉下の阿蒙は、いつまでたっても呉下の阿蒙であった>。国民が気付いた時はすでに遅いかも。


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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