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競馬コラム

心地好い居酒屋

2021年11月24日(水)更新

心地好い居酒屋:第111話

22日は24節気でいう「小雪」――。名前の通りの雪こそ舞わなかったが午後遅くなってからは“大雨予報”。遠野は外出を一瞬躊躇ったが予約は予約。いつも処方箋を郵送してもらう訳にもいかず、しかも「頑鉄」の親爺、それに横山もウズウズして待ってるはず。<大雨になる前に>と横浜を出た。


最近の天気“予想”は遠野の馬券はもとよりテレビ解説者の馬券予想より当たる確率は高く、新宿に着いた時は案の定の土砂降り。ただ南口は迷うほどの様変わりでタクシー乗り場まで濡れずに行けるし、エスカレーターも完備。有酸素運動が辛い遠野にとって歩行距離が少なくて済むのも大助かり。タクシーに乗っちまえばクリニックまでは15分弱。到着し受付で「雨の中お疲れさまです」とニコッと笑顔を見せられると、やはり予約=約束を守りサボらなくて良かったと自分で胸をなで下ろす。


大雨と予約のおかげで、患者も少なく待ち時間はほぼゼロ。診察も処方箋もササッと終了。「お気をつけて」の声を背に再びタクシーに。車内から「頑鉄」に「間もなく到着」の電話を入れると「早えなぁ。横ちゃんも4時頃には着くと言ってたから同じぐらいになるんじゃねぇの」と。<そうかぁ。明日は祝日で休刊か。じゃあ休みかも知れんな>。そう思ったところにラインの着信が。梶谷からだ。『お久し振りです。感染状況がこのままなら来月中旬にはご一緒したいです。もちろん阿部さんも参加です』。思わず一人ニッコリで『大感激。日時は改めて。親爺にもコッソリ伝えておきます』。間髪を入れず打ち返した。


表情が顔に出ていたのか「頑鉄」に入ると、いきなり「何かいいことあった?嬉しそうだね」と親爺。すでに到着していた横山も遠野に挨拶するのも忘れてニコニコしてる。「いや……。別に。後から井尻も来るんだろ。こうして飲めるんだから嬉しいに決まってるじゃん」と言い目配せをした。


親爺、納得したのかどうか、遠野が席に着きお絞りを使うや否や親爺が吠えた。「それにしても出来すぎと思わないか?」「……」キョトンとしたところに、仲居のきいちゃんがお通しと水、それにお猪口を持ってきた。「熱燗でいいだろ」「もちろん」。そこは阿吽の呼吸だ。とりあえずのお通しは薩摩揚げにお新香の盛り合わせだ。薩摩料理「完庶処」の名物が出てきたのにはビックリ。縁かな。


そんな感慨をよそに親爺が続ける。「昨日の『マイルCS』だよ。横ちゃんを前にして言うのも何だが、土曜日に『東スポ杯』を勝った後の最終Rは1番人気で為す術もなく⑩着。直後に横ちゃんから電話があって『ルメールの意識はすでにマイルCS1本だと思います。馬券は、まだ決めず、まずはルメールの様子見。“GⅠで区切りの1500勝を”てのが大目標でしょうから、それまでは集中力を欠くかも』ってな」


「なるほど。さすが“ルメールの法則”を研究しているだけはあるな」。遠野は頷き、届いたばかりの熱燗を横山から受けた。「で、早いレースは負け続けて直前が➂着。早速、電話をくれてな。『マイルCSはルメール頭の3連単でいきましょう』と。うん、全乗りしたよ」「なぁ~んだ。じゃあ良かったじゃん」「確かに馬券はその通りだが、なんか遊ばれているような気がして……」「横山君の研究と読み、勝負勘が鋭くなったからこその大当たり。それで文句言ってたら罰が当たるぞ」。遠野が諭すと、聞いていた横山は照れくさそうに酒を飲み干し、徳利を持ち上げ「どうぞ」「ありがとう。凄いじゃん。今後も親爺のこと頼むわ」と頭を軽く下げ「もっとも、親爺の気持ちも分からんでもないけどな。マスコミも弱い奴や悪い所には触れないようにし強者と勝者だけを過剰に褒め称えるのが常だもん」


遠野の言葉に“得たり”とばかりに膝を打ち「だろ!大谷報道にしてもそうだ。ホレ、オリンピックが始まる前からNHKは大谷の試合中継を止め、その時間帯も昔のオリンピック絡みの再放送してたんだろ。とのさんは、それで猛烈に怒ってたじゃん。“大谷と菊池の花巻東対決も放映なし”なんてな。テレビも新聞もオリンピックに執着する菅のご機嫌を損ないたくないのかオリンピックを盛り上げようとするNHKの報道姿勢に何の疑問も提起してなかったし…」まで言った時に秋刀魚と赤身の刺し身が二人分置かれた。「今年、初めて銚子港で揚がった秋刀魚だよ」と親爺。


これで大谷の話題は終わったかに思えたのだが、一切れ秋刀魚を食べた横山が「美味しいです」と喜んだ後「満票でのMVPですから凄いんですが、各メディアがここまで大騒ぎするのなら、もっと早く気づけよ、注目しろよと言いたいですよね」。話をブリ返した。


「スケールと戦う場所は違うが年度代表馬みたいなもんで選び方は一緒。競馬記者の投票は周知の通りだが、昔ミスターシービーが三冠を制して順当に選出されたが、これが満票じゃなくてな」。遠野も秋刀魚を味わい、酌を受けながら言うと「ライバルがいたんですか?確かぁ。え~と昭和58年ですよね。何でしょ?」と横山が首を捻る。「シャダイソフィアに投じた社台ベッタリ記者が居たらしくて…。ま、俺が確認した訳じゃないけど、当時は<そこまでやるか>と話題になったもんだよ」「それが事実なら“忖度”を通り越して“阿(おもね)り”ですね。最近じゃ馬主のパシリで持続化給付金の不正受給に手を貸した輩も居ましたし、やはり記者たる者は自身の身辺こそ綺麗にしておかないと。自戒します」


殊勝ではある。親爺も腕のいい優しい板前と研究熱心で真面目な爺っちゃん子の記者が側に居る。これなら安心だ。来月には美女二人が来店することを教えたら…。


そんな遠野の気遣いを知ってか知らずか「ところで『ジャパンC』はどうする?」「俺は3歳馬シャフリヤールとユーバーレーベンの2頭軸流しか、コントレイルとオーソリティを加えた4頭ボックスの3連複を買うつもりだが、オーソリティの取捨はルメール分析家の横山君に頼らなくちゃあね。親爺は誰が何と言おうとマカヒキだろ」「だから、その相手探しに悩んでるんだ」


「ジャパンC」が終わると師走。7日の「大雪」を経て22日の冬至に。日は短く寒さは厳しくなる一方だが、美女達との会合は17日ぐらいか。疫病の類いは<羮に懲りて膾を吹く>心構えが必要。せめて年内は「GOTOなんちゃら」は控えて欲しい。


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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