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競馬コラム

心地好い居酒屋

2022年01月26日(水)更新

心地好い居酒屋:第113話

正月明けの「頑鉄」会食は、去年こそ辛うじて18日の月曜日、横山に言わせれば「AJCCの翌日」に開催できたのだが、今年は新型コロナの蔓延が止まる所を知らず、悪化の一途。「AJCC」前日の22日には東京で1万人、全国で5万人を突破―。これではさすがに行く気にはなれず23日には親爺に連絡「まさかマイネルファンロンが2着に来るとはなぁ」と二人してボヤきつつ「明日は遠慮するわ。今月の処方箋は郵送でお願いするよ。横ちゃんによろしく」と言っておいたのだが…。


翌24日の昼に携帯が鳴った。親爺からだ。「どうした?具合でも悪くなったの」「いやね。名護の市長選を見てビックリ。<現職の武豊(渡具知武豊)が勝つんだろうな>とは思っていたが、まさか5000票もの差がつくとはね。投票率も低かったみたいだし、結局は“長い物には巻かれろ”ってことか」。コロナの蔓延で店も閑散として、買い出しと料理は吉野任せ。親爺自身の最近はテレビを見たり、週刊誌や新聞を読む機会が増えたらしく、世間の動きに注目し、反応するようになったようだ。


「そうだな。“寄らば大樹の陰”でもあるな。いくら辺野古基地反対を訴えても国は権力で進めているわけだし、なら国の方針に従う市長を選んで『米軍再編交付金』を増やして貰った方が特だもん。子育て世代やコロナ禍で収入は減った住民にすれば医療費や給食費に保育料の無料化は魅力。この間の横浜市長選は民意がどうのこうのを肴にして盛り上がったが、名護に限らず、沖縄の場合はそんな単純な話じゃないんじゃないか」。元気な時に沖縄を旅行し現地の人からさまざまな違った意見を見聞きしているだけに、遠野も真面目に応える。


「伸晃(石原)が環境大臣時代、福島原発事故で出た汚染土の中間貯蔵施設を巡り『最後は金目でしょ』と住民を見下した発言をしていたが、そういう発想が権力者の権力者たる所以か。嘆かわしい世の中になったもんだ」。電話の向こうから溜め息が聞こえる。


「親子して税金で食ってきて、それでいて自分の政党支部では『緊急雇用安定助成金』を請求してたってんだから呆れて物が言えん」


「ハハッ。とのさんは昔から慎太郎嫌いだったしな」


「今の奴は知らんだろうけど『青嵐会』の立ち上げが昭和48年。角さんが総理で、俺自身は田中派所属の議員秘書時代。なんだろうな…。いや、メンバーの全部が全部という訳じゃなく何故か慎太郎には違和感があってな」


「今年が昭和97年…。もう半世紀も前の話じゃ誰も知らんわな。俺だって、とのさんの慎太郎嫌いは都知事になってからと思っていたぐらいで、とのさんと『青嵐会』との絡みは聞いてないし」


「別に隠してたり、当たり前だが俺が絡んでた訳じゃないけど…。親爺と二人だけだと、どうしても昔話が出てしまうな」。自嘲気味に含み笑いをする。「慎太郎はともかく『青嵐会』といえば中川一郎か。それにミッチ-こと渡辺美智雄ぐらいは俺も名前だけは知ってるぞ」


「そうだな。好き嫌いはともかく当時の政治家はそれなりに骨も信念もあったが、それに引き換え、今の議員ときたら」と嘆き水を飲んだ。


「情けなくて涙が出るよ。あの岸田ってのもどうしょうもねぇな。優柔不断、朝令暮改、支離滅裂の極みだな。どこが『先手先手』だ。嘗(かつ)てというか、その『青嵐会』頃だったか、オイルショックに見舞われ“アメリカが嚔(クシャミ)をしたら日本が風をひく”なんて言われたもんだが、コロナでは欧米が肺炎状態なのに他山の石とせず対岸の火事としか見てねぇんだから嫌になっちゃうよ」と零した後「とのさんには釈迦に説法だったな」と。ハゲ頭を叩く様子が目に浮かぶ。


「ワクチンはおろかPCR用の試薬、抗原検査キットも品不足ってんだから話にならん。一年半前に菅がほざいた『自助、共助、公助』が岸田の下で現実になるとはなぁ。そういやあ去年のうちから親爺『広島といえば“仁義なき戦い”』とか言って岸田を金子信雄扮する山守組組長に準(なぞら)えていたが、まさに言い得て妙。小狡さで巧く立ち回り最後まで生き延び、競輪だったか公営ギャンブル組合のトップに収まっちゃうんだから」


「えへっ。山守の話はとのさんが言ったんじゃなかった」「いやいや親爺だよ」「そうかなぁ」「どっちでも良いか。山守もそうだったけど岸田の要領を得ない、的外れの答弁と大きな顔を見てるとムカついてくる。チョッピリだけ期待してただけに余計だよ」


ここが「頑鉄」なら、お互いに「まぁまぁ」と言い、酌をしあって喉を潤す場面だが、今は水を飲むしかない。


「あの映画も確か昭和48年だったはず。そうだ!トイレットペーパーを買いに行かされた年だから間違いない」


年寄りは直近の事は忘れても昔の事は良く覚えている。しみじみ思う。


「岸田内閣がどうしょうもないと言っても代りがなぁ。立憲なんてのは、このまま中途半端な態勢で参院選に臨めば惨敗確実、むしろ維新の会が議席を増やすんじゃないの」


「橋下、松井、吉村のトリオは自分らの役柄を弁えているのが凄い。“悪名は無名に勝る”というが、イソジン騒ぎや大阪都構想で負けても屁の河童。今年の3連休前には“大阪いらっしゃい”キャンペーンを隣県にまで広げ感染拡大の要因を作ったにも拘わらず恬として恥じず、したり顔で『危機的状況です』と。大阪のコロナ対策こそ危機的状況だと思うぞ。現に人口の多い神奈川の死者が昨日時点で約1,300人に対し、人口の少ない大阪は倍以上の3,000人余り。普通に考えれば行政の酷さが分かるはずなんだが…。ところで今日も横ちゃんは来るの?」。


「うん。最近は吉野とも気が合って、土曜日は3人で酒盛りだったんだ。ま、その位の楽しみがなけりゃあな」


「そうかぁ。良かった良かった。今年は“横山”の当たり年かもな。親爺が関西馬で、和生はローカルで、そして武史が関東圏―。維新のトリオと違って、こちらのトリオは“買い”だな。そうそう、琉人も健闘しているし“横山株“は急騰、横ちゃんの予想と馬券も大化けするかもな。<期待してる>と伝えといて」


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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