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競馬コラム

心地好い居酒屋

2022年03月02日(水)更新

心地好い居酒屋:第114話

籠もってばかりじゃ埒があかない――。折角暖かくなったことでもあり晦日の28日に出掛けることにした。思いは一緒で「頑鉄」に電話すると珍しく井尻からも連絡があり“今年はまだ新年の挨拶もしていないし、ぼつぼつ遠野さんにお会いしたいな”とのこと。


まさに願ったり叶ったり。決まれば早い。老い先短い年寄りはなおの事で、遠野は日の明るいうちに築地に到着。4時チョイでは、さすがに早過ぎると思い築地川公園の入り口で車を降りた。突如の陽気に誘われたのか、見上げるとささやかにも蕾がほのめいていた。


<あの蕾が膨らんだ姿を今年も見ることができるだろうか>――。加齢と体調悪化とともに感傷的になってきたのだが、ロシアのウクライナ侵攻、コロナの蔓延。加えて直近の馬券不振が輪をかけたのか厭世観に包まれながらの散策と相成った。


落ち込んだ時は旨い酒と肴が一番。“5時なら大丈夫”で「頑鉄」に入っていくと、なんと先客が。いつもはゲーム屋さんが占拠してる場所には場外市場の珍味屋・大谷さん一行が4人、隣には税理士の城田さんと、荒天の非常時に遠野も利用させて貰ってる個人タクシ―の朝野さんが。さらに遠野の指定席側には木村さんと、その俳句仲間が2人。なんと9人も居た。


早速、大谷さんが「よう!とのさん元気だった?」と声をかけ、朝野さんは「いつもどうも」とグラスを上げ、「お久し振りです。ここでお会いできるとは」と木村さんが喜ぶ。遠野は笑顔で応え皆に頭を下げながら自席に向かった。


「らっしゃい」。親爺が上機嫌で迎える。「おいおい、こんな盛況ぶりは3年前の忘年会シーズン以来じゃないか。結構結構、こうした賑わいは人を明るくしてくれるもんだな」。遠野もさっきまでの“鬱”をケロッと忘れ早くも飲みモードに入った。仲居の木村さんも忙しく、手際よく動き回っている。


「嬉しいじゃん。市場の連中も、吟行で地方行きが多いパンちゃん(木村屋)たちも『ここでの飲食が最も安心』と言ってくれてな」。親爺満足げだ。確かに早くから“前日予約”を決行し怪しげな“GoToイート”やポイント付けには不参加、いい意味での“イチゲンさん排除”が常連の安心感を生んだのかも。「損して得取れ」だ。


「高歌放吟」はもちろんのこと「他座献酬」も御法度の「頑鉄」。とはいえ“生兵法”ながら俳句の話題で盛り上がったこともあり、パンちゃんが声をかけてきた。


「嫌な世の中になりましたねぇ。いったいどうなるんでしょうか?」。コロナか戦争かどちらを選択するか迷い「う~ん」と苦吟しながら「洗心」を呷り赤カブの酢の物を摘まんだ。


「去年の8月8日に感染者は100万人を突破、今年の1月1日が173万人。岸田は甘く見てたんでしょうねぇ。恐らく今日の発表では500万人超でしょ。つまりこの2ヶ月で330万人が感染したってんだから酷い。<過ちて改めず これを過ちという>。あ、いやいや、これは遠野さんに出過ぎた言葉を。失礼しました」と頭を下げた。


遠野は<そっちの方か>と了解。「昔、竹下登の答弁は“言語明瞭 意味不明”と呼ばれたもんですが、岸田は…そうですねぇ“言語しっかり いつも検討”かな。ワンフレーズに必ず“しっかり”が入るのに決断も実行もしないし」。遠野が応えると「なるほど。言い得て妙ですねぇ」。喜んでいる。「ワクチンの重要性が分かっているのなら人望はおろか実行力も能力もない堀内なんてのを担当大臣にしないでしょ。岸田が今すべきは、まず過ちを認めて国民に謝罪すること―。そこから始めないと国民は納得しないでしょ」。遠野が喋り終わり肝醤油に浸けた皮剥の刺し身を食した。


隣では鮟鱇鍋の準備が着々と進んでいる。パンちゃん達は鮟鱇鍋が定番だが、予約の時点では、今日が、まさかこんなに暖かくなるとは思いもしなかったはず。そんな遠野の気持ちに気付いたのか照れながら「鮟鱇も今年はこれで終わりですね」と。


「そうですね。桜もいつまで見られるか分からないし、皮剥だってそう。一日を大事にいきましょう、お互いに」。遠野が優しく声をかけると、パンちゃんはうな垂れ「今のコロナ対策を見てると、深沢七郎の『楢山節考』を思い浮かべましてね。自分達も若いやつに迷惑をかけたくないのはやまやまだが、かといって高齢者施設のクラスターやむなしの政策には腹が立つやら情けないやらで…。死者は神奈川の倍、東京よりも多いってんだから大阪の吉村や松井は何をしているのか」


パンちゃんが、やや興奮気味に遠野に話しかけた時に親爺がやってきて「木村さん『酩酊口論』はなしだよ、と昔から掲げている“酒道四戒”を指さした。因みに、もう一つは「乱酒乱行」である。


遠野はその手を引っ込めさせ「大丈夫大丈夫。貴重な意見を拝聴していただけだから」と言い「松井と吉村の腹の内もそうだけど、自分はプーチンの頭の中か脳ミソがどうなっているのかを知りたい」


「そうだよなぁ。例によって“専門家”らしきもんが、ああだこうだ言ってはいるがプーチンの行動は常軌を逸しているからなあ。ロシア国民か側近が『殿 ご乱心』と言って羽交い締めにするしか手がないんじゃねぇの」。親爺、達観している。


「それはともかく、まずはとのさんの元気な顔が見られて嬉しいよ」「俺もね」と言い合い、今年初めての乾杯となった。


「横ちゃんが『さすが遠野さん。パンサラッサの速さと強さはあそこまでだったとは』と驚いていたぞ。『有間記念』で穴に指名しただけはあるってな」「バカ言ってんじゃねぇ。馬券を買った時にこなくちゃ意味ないよ。そんなの褒め言葉にならないってな」「じゃあ昨日は?」「やられだよやられ。ところで城田さんと朝野さんがご一緒とは」「確定申告だよ。うちのも一緒にお願いしてるから毎年」「ふ~ん。ま、日頃真面目に申告してるんだから、こういう時は決済も早いんだろ」「なら、いいけど…お上の仕事は」


愚痴が始まりそうな時に井尻が入ってきた。梶谷が居ないのは不満だが後輩と酒を酌み交わすのも悪くはない。生きている証だ。


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源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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