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競馬コラム

心地好い居酒屋

2022年03月23日(水)更新

心地好い居酒屋:第115話

「ふ~ん。“尾生の信”かぁ。さすがとのさんだな」「へっ。そんなカッコいいもんじゃねぇよ。我が儘が通っているるうちにこそ、約束と礼儀だけは守らんといかんだろ」


外は霙交じりの雨。桜の開花宣言が出た直後で22日はまさに花冷えだ。そんな中、遠野は予約していたせいもあって都内のクリニックに足を運んだのだ。


「採血の予定もあったし、医者からも『火曜日は比較的空いてますから』と言われたし…。うん、そこは小児科もあり、ワクチン接種の指定医なんだが、接種日は月・水・金。本格的に春休みに入れば、子供達の患者も増えるだろ。諸般を勘案して先生が教えてくれたんだから、診療キャンセルで“処方箋お願い”とは頼めんよ」。遠野は真面目に応えた。「頑鉄」に入って5分もしない内にでてきた熱燗を飲む。チョイ甘みを増した「千寿」が喉を通過していく。「だいたい“尾生の信”なんてのは愛しい人が対象であってこそだからな」「例えば京子ちゃんやおまさちゃんとかかな」「その通り」と言って膝を叩き親爺にも酒を勧める。


「それにしてもビックリだよ。連休前から顔を出してくれるとは聞いてたけど、この雨と寒さだろ!それがいきなり『3時過ぎには着く』だもん。朝には横ちゃんから『今日は遠野さんは無理でしょうね』との電話があったし『とのさん来店』を伝えたら『すぐ行きます』。声が弾んでいたよ。追っつけ来るんじゃない」


「頑鉄」には“マンボウ”はほぼ関係ないが、解除初日のせいもあってか3組ほど予約が入ってるそうな。とはいえ仲居のき~ちゃんは出勤前。テーブル上の突き出し&摘まみは親爺自らが運んできたものだ。その一つホタルイカの酢味噌和えを口に入れた時、ドアが開き冷たい風と一緒に井尻と横山が入ってきた。


「ご無沙汰です。寒いっすねぇ」。二人してダウンを脱ぎながら挨拶をする。隣に井尻が、親爺を押しのけた形でその前に横山が座る。もっとも親爺は立ち上がり一式を取りに行ったし、戻ってきても半掛だが…。酒が揃うまでは三日間競馬の収支をなんちゃら話していたが、ふと思い出して遠野が口を開いた。


「ところで金山はどうした?2年前だったか甘方と一悶着あり“大阪に出向させる。覚悟しとけよ”なんて怒鳴られたとか言ってたが」「ああ。あれですか。直後にコロナ騒ぎで人の移動はどうの宿がどうので有耶無耶になり、いつのまにか何もなかったことに。局長にしても拳の降ろし所が難しかったわけですし、金山はホクホクだったでしょう」「そうか。コロナのお陰で助かった奴が居るってのも世の中理不尽だなぁ」。遠野が溜め息混じりにボヤキ手酌で残った熱燗を注ぎ切った。


そこへ親爺と吉野がセットを運んできた。吉野は「すぐ刺し身を用意します」と言って板場に戻り親爺は横山の隣に腰を降ろし、改めての乾杯となった。


「さっきチラッと聞こえたけど大阪のコロナが何だって?この間、パンちゃん(木村)が『大阪の松井と吉村のコロナ行政は酷い。“楢山節考”だ』なんて怒っていたけど、確かに大阪の死者はケタ違い。昨日時点では東京が4000人強で大阪は4500人弱。そのほとんどが高齢者ってんだから“姥捨山政策”と言われても仕方ないな」。親爺、憤慨しながらも酒はしっかり飲んでいる。


「マスク会食推進だけが自慢のハテナ?の黒岩が仕切る神奈川ですら2000人弱。維新圏でもある大阪のお隣の兵庫だって2000人を超えたんだろ。保健所を統廃合、病院を減らしたりで医療行政がなってないよ。松井と吉村がやったことは<イソジンの奨め>だけ。これで世論調査では“吉村は良くやってる”だからな。舌先三寸男でもテレビに出てりゃあ評価されるってんだから嫌んなっちゃうよ」。遠野にも鬱憤が溜まってるのだろう。珍しく饒舌だ。


「でも~」と恐る恐る井尻が声を出し、途中でビールを注いだ。「何?勿体ぶんなよ」「あ、いえ。お年寄りもそうですが、これからは幼児の感染が心配で…。今や10代以下の感染者が20%にも上るとか。5歳~11歳までのワクチン接種も始まりましたが、未熟な肉体で成長期ですからねぇ。どんな副作用に見舞われるか…」


「そこよ!俺らみたいな高齢者はともかく未来のある子供達が心配なんだ。“楢山節考”の後に“ハーメルンの笛吹男”が出現しなけりゃいいのだが」と言い首を傾げる。親爺はキョトンとし、横山はスマホを取り出した。井尻は――反応した。「でも、あれは街の人が約束を守らなかったからで…」「そうだな。街の人といったって約束をできる人間は結局は発言力のある奴。つまり政治家みたいなもんだろ。童話が童話でなくならないことを祈るよ」と言い、届いたばかりの山葵タップリの蒲鉾を食べた。サクサク感と鼻ツンの組み合わせが絶妙で思わず「旨い」そして「いい山葵使ってるなぁ」


遠野と井尻が話し、酒を飲み食ってる間に横山からスマホを見せられたか説明を受けたのか「そうだよ。最初は大人もチヤホヤしてたんだから子供は付いて行くよ。子供の責任じゃねえ。これはドイツの話らしいが今のロシアも酷い。“盗っ人にも三分の理”というが一分もねえ。盗っ人猛々しいとはプーチンのことよ。そんな盗っ人に追銭したのがアベゾ―。マレーシア辺りに行く暇と金があったらモスクワに飛べってんだ。フザケタ野郎はいつの世にも何処にでも居るってことだな」。親爺のハゲ頭にもストレス満載。言いたいことは沢山あるようだ。


「この三日競馬は二人して討ち死に。親方にもご迷惑おかけして…」「な~んも。軍師がいなけりゃ負けっぱなしなんだから」


 二人の掛け合いには心が和む。戦争もコロナも関係なく“いかった、いかった”


「で、『高松宮記念』はどうかな?」「いえいえ、自分なんかが畏れおおくて」「何言ってんの。俺が訊いてんの」。遠野がキツメに質すと「現時点ではメイケイエールにレシステンシアが有力で穴ならナランフレグ。ただ馬場が問題ですし、これ以上時計がかかるようだと外枠の馬を買いたくなりますね」「なるほど。覚えておこう。親爺は清水さん仕込みの“自助”と横山という“共助”があるけど、こっちは“自助”のみ。ハテナ?の黒岩なんて『インフルエンザの患者になったら、皆さん自主的に行動を控えて、医療機関に診てもらっている。オミクロン株も同じ向き合い方を』と」。フザけた奴よ。私は何もできませんで知事室にふんぞり返ってりゃあ仕事になるんだから政治家は楽で幸せだよ」


「競馬のハラハラ、ドキドキを知らん奴は幸せとは言えん」。親爺は偉い。


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源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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