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競馬コラム

心地好い居酒屋

2022年04月13日(水)更新

心地好い居酒屋:第116話

2月の晦日は桜便りが聞こえてくるほどの暖かさ。ところが、“尾生の信”で診察ついでに向かった前回の3月22日は冷え冷えとした雨。桜を愛でる余裕もなく早々と「頑鉄」に到着。電話していたせいもあって店に入るや、ものの5分も経たないうちに“とりあえず”の熱燗が。


そして今日(4月11日)はといえば、じっとしていても汗ばむ陽気で、何でも夏日とか。「三寒四温」と呼ぶにはあまりにも極端。昨今は世情どころか自然までもが優雅さを欠いているようだ。心が痛い。


しかし……。タクシーを降り「頑鉄」の前を見た途端、なぜかホッとした。割烹着を脱ぎTシャツ一枚になり煙草を吹かしていたのだ。旨そうだ。遠野の接近に気付いた親爺が「よう。らっしゃい」と手を挙げ「ショッポー(ショートホープ)じゃないけど一服する?」両切りピースの箱を差し出した。「フン。寝た子を起こすんじゃねぇよ」「ごめんごめん。やっぱり相当きついんだ。あれだけ旨そうに吸ってた煙草をピタッと辞めるんだから」。反省の態で、自分の軽口に詫びを入れたが、遠野が突き放した。「まぁな。他人の“痛い痒いに息苦しい”は100年我慢出来るって。ほざいていろ」。むろん本気で怒ってるんじゃない。


「でもよ~。いくらきつくても、肺気腫は昔からだし、それだけじゃなく、医者と家族に禁煙を約束したからってのが凄いよ」「いったいどうした?煽ったと思えば頭を下げ、その次はお世辞なんぞ宣りいただきまして…。ま、それはともかく家族との約束話は親爺しか知らんのだから」と言って指で口にチャックした。


店に入ると親爺は早速割烹着を羽織り、当たり前のように「洗心」とお通しと氷水を持ってきた。「おっつけ横ちゃんも来るけど、『今日だけは私に』と頼み込まれたし、そこん所はよろしくな」と頭を下げ遠野のグラスに、続けて自分のグラスに酒を注いだ。古い話ながら先日電話があって「高松宮記念」で大儲けしたそうだ。


二人して軽くグラスを持ち上げ一口飲み、もやしのナムルを食べた。「結構結構。ゴマ油の加減が絶妙だ。吉野君が居れば親爺はもう不要だな。作戦参謀には横山君が鎮座してるし、お嬢さん一家も元気なんだろ。指折り数えて里帰りを待ってるってところか」「お嬢さんって玉じゃねぇが、家族の話を知ってるのはとのさんだけだからな」「んなの分かってるさ」。お互い二人だけの約束があるようだ。


「そうそう。とのさんが言った寝た子じゃないけど、プーチンにかかればアベなんてのは“赤手”。赤児のてを捻るようなもんだな。多額の税金使って飲み放題、旅行し放題。北方4島なんて1ミリも動かず、むしろアベ時代にロシアの実効支配が進んだし、追銭もした。挙げ句『ウラジミール、君と僕は同じ未来を見てる』と。バカ丸出し、ケッてなもんだ」


侵攻直後にも「プーチンの頭の中、脳ミソを見てみたい」と吠えていたが、親爺の怒りは、もしかしたら人生最大かも知れない。娘一家は外国だし。


「親爺の罵りはごもっとも。でも赤児なら無邪気で可愛いけど、アベは脳ミソの少ないゲミュートローゼ。一般庶民には害でしかない。研究家、評論家、専門家、識者……。色んな奴が好き勝手言ってはいるが、隣のハンガリーの思惑やフランスも大統領選結果次第で、ごう動くか。どんな結末が待ってるか分かりゃあしない。まぁ俺等が何言っても始まらんがな」。自嘲気味に言い捨て酒を一飲み。


「その通りだけど、ゲミュー……。何ちゃらは?」「円楽(三遊亭)みたいに脳を使って失礼。ゲミュートローゼ。良心や罪悪感、羞恥心などを持ってない奴。簡単に言えば“恥知らず”ってこと」。ちゃんと説明してアサリと若竹の炊き合わせに箸を付けた。


横山がやってきたのは、新しい酒と刺し身が届いた時だ。「遅くなってすみません」。汗ビッショリだ。「お疲れ。まずは汗を拭いて」。遠野が言う。「恐縮です」と親爺から受け取ったお絞りで顔を拭く。「首まで拭ったら」「有り難うございます」


一通りのことが済んだところで、遠野が四合瓶も持ち上げ「おめでとう。と同時に申し訳ない」と言って酌をした。「いえいえとんでもない。いつもご馳走になってばかりで」。横山が手を振る。「あ、そうじゃなくてわざわざ訊いといて馬券外したので」「そ、そんなぁ」。横山が驚いて親爺を見た。


「だってよ。穴ならナランフレグて言ってたろ。ところがとのさんはナランフレグから買って抜けたらしんだ」


「悪い悪い。自分に単勝買いの習慣がないから……。馬連の1万3,560円はともかく単勝2,780円にビックリ。後で気がつく寝小便。横山君を信頼してれば、単勝を買っておくべきだったね。スマン」。遠野は正座して頭を下げた。すると慌てて横山も正座「勘弁して下さいよ」と言い、またまた親爺に目を向けた。


「こんな人だからとのさんは。外れても文句は言わんが教えて貰った馬で儲けた時は感謝感謝。もっとも滅多なことでは人に訊かないけど」


「いやいや。『皐月賞』も訊くぞ。現時点で気になるのは?別に当てに行こうとしないでいいから」。遠野がやんわり訊ねると若竹を摘まみ、酒を一飲みした。どうやら落ち着いたようだ。「3連続で1番人気を裏切った武史ですが、テン乗りで同じ舞台のGⅠ『ホープフルS』を勝ったキラーアビリティを軸にします」。どうやら落ち着いたようだ。 「“二度あることは三度あった”が“仏の顔も三度まで”か。なるほど。まさに駒が揃っているノーザン。『皐月賞』用のローテと踏んだわけだ」


「それに……。今年最初に遠野さんが仰ってたじゃないですか。『親父は関西馬で和生はローカル。武史が関東圏の本場で活躍しそうだな』って。武史の前3戦は中京、阪神、阪神。関東の中山なら」


「そうそう。ついでに平場は減量の横山琉が面白い。今年は横山株が大化けするかも、ってな。横ちゃんが大儲けしてもおかしくない訳だ」。親爺、一人で納得している。

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源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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