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競馬コラム

心地好い居酒屋

2023年02月15日(水)更新

心地好い居酒屋:第128話

1月20日の大寒を迎えた途端、日本列島は大寒波に覆われ、節分が過ぎた翌4日の立春以降はポカポカ陽気。<なるほど24節気とは良く言ったもんだ>とは思う。しかし、それも長くて1週間程度。“喉元過ぎれば熱さ忘れる”で連休明けの13日は雨水(19日)を待たずに冷たい雨。それでも梶谷や京子ちゃんが一緒なら「春雨じゃあ濡れて参ろう」など洒落るところだが、一人ではどうにもならぬ。タクシーを横付けにした。


換気のためチョッピリ開けている隙間に指を入れドアを滑らし「頑鉄」に入るとすでに親爺は立ち上がっていて「らっしゃい」と。どうやらタクシーの音で到着に気付いたらしい。読んでいたようで即売のスポーツ紙を手にしている。この日は横山も珍しくまだ来ていない。


「熱燗?」「いや、ボツボツ『洗心』を飲みたくなった」「あいよ!」で自らグラスと4合瓶を抱えて戻ってきた。お通しは切り干し大根の煮物と糠漬けの盛り合わせだ。とりあえずの酌でグイと飲み「ふぅ~。やっぱ旨いわ」。遠野が言うと「おまさちゃんも喜ぶぞ」「これで京子ちゃんも居れば3年前に戻れるんだがなぁ」。懐かしむように入り口を見遣りながら遠野が“タラレバ”を口にした。


「そうなんだ。マスクがどうの5類などお上はほざいちゃいるが、ホレ見ろよ」。手にしていた新聞を指しながら「“維そ新の会”の本拠地大阪なんてデタラメだ。吉村が『経験則で収束に向かう』と能書きを垂れた去年盆前の死者が5558人で暮れが6832人。この話は去年したよな。それが昨日の時点でこの通り8249人。2ヶ月で約1400人も増えてるんだぜ。どこが収束だ!ちゅんだ。こういう状況だから『完庶処』も規模縮小だし京子ちゃんも顔を出せないんだ」。善良な親爺が本気で憤っている。


「5類云々の言い出しっぺは関西。周りに碌な奴が居ない岸田は力を付けた“維そ新の会”の意向は無視できんのだろ。テレビを中心にメディアも“死者の97%が60歳以上”を喧伝。“高齢者はできるだけ手洗い、マスクで予防を”と。これからインフルや発熱などで医療体制はどうなんのかねぇ。どっちにしろ今ん所『姥捨て政策』は成功ってことだよ」。諦め気味に言って、吉野が「料理の前に」と持ってきた摺立ての山葵タップリの蒲鉾をパクリ。効いた。鼻にツーンときた。吉村は目から鼻に抜ける抜けめのない小賢しい知事だが、この山葵は上物。口から鼻に抜ける厳しさと凜々しさ。清々しさが残る辛さではある。


「それにしても各内閣が口にする“最重要課題”ほど実現したためしはないな。北方領土から拉致問題、福島の復興に今度は子育て支援。復興税を横流しして防衛費に回し、出産一時金の財源は年寄りの健康保険料の値上げをアテにするってんだからフザけた話よ。ま、それで一気に新生児が増えるんなら構わんが、そもそも結婚したくてもできない若者が多いのに何が子育て支援だ。もっとも菅も岸田もテメェの子育て支援には抜かりはねぇけどな」。二人きりだと親爺も良く喋る。


遠野がうんうんと頷き再び蒲鉾に山葵を載っけていると「上が乱れると下はもっと乱れる。鬼平じゃねぇが最近は嘗め役も急ぎ働きの悪党どもに嘗め帳を平気で売るー。今年は池波正太郎の生誕100年。健在なら何思うかねぇ」。ポツリと。


「確かに。血を厭わない急ぎ働きにはアングリだよ。“老人を殴れる奴”が人集めの条件ってのだから世も末だな」 「横ちゃんから聞いたんだけど『高齢者は集団自決すれば良い』とか言った奴が居るらしいけど、同調する若いもんが多いんだろうな」「ああ。俺も聞いた。高学歴が売りの成田なんちゃらだろ。幾つからが高齢者か知らんが色んなメディアに出てる有名人なんだから森(喜朗)や麻生(太郎)と公開鼎談でもやれば視聴率も取れると思うぞ。ま、こんな奴に限って時の権力者を前にすると媚びを売りがちだけどな」


噂をすれば何とやらで5時チョイ過ぎに、その横山が「遅くなりました」と詫びながら入ってきた。腰を落ち着ける間もなく「実は…」と切り出した。親爺が酌をしながら「どうした?」。訊くと「腹癒せですかねぇ。『競馬ブック』をバッグに詰め込みながら出かけようとしたら金山さんが『会社で購入している物を持ち出すのはどうかな。公私混同になりかねんぞ』なんてケチを付け始めまして」。親爺と遠野は黙って次を待った。横山は一口飲み「もちろん言い返しました。『私物ですよ私物。纏めて購入してもらってますが、自分の分はちゃんと払ってますから』と。金山さんは『本当か。素直に認めれば見て見ぬ振りしても構わんぞ』と」。「よほど<貴方の空伝票とは違います>と言おうとしたんですが…たまたま」「そこへおまさちゃんが通りかかったとか…」。親爺の突っ込みに横山は口を押さえてブフッと。


「“天網恢々疎にして洩らさず”か。ここぞとばかりにおまさちゃんがすべてを代弁してくれたんじゃない?」とは遠野だ。 「畏れ入りました。その通りです」。頭を下げるのみの横山だが「横山君のお爺さんは確か今年85だよね。親爺から聞いたけど成田の“自決”発言には頭きただろ」「はい。あんなのを平気で使うテレビ局にも納得できません。でも遠野さんが祖父の年齢を覚えてくれてるなんて」


「おいおい。あんまり神妙になんなさんな。ただ邦ちゃん先生(武邦彦)と同い年って聞いてただけだし、それより何より『男山』大吟醸が楽しみだからな。ま、それはともかく『フェブラリーS』は何から買う。俺も少しは頭に入れとかんとGⅠは買うかも知れんおまさちゃんから訊かれた時は困るからね」


「戸崎がドライスタウトに乗ることでレモンポップの評価が落ちそうですが、すでに16勝を挙げ売り出し中の坂井琉星なら心配ないでしょ」。競馬の話になると立て板に水。顔まで生き生きしてくるのだから立派。吉野と同様、親爺の若返りに十分貢献している。


「ただなぁ。次から次と外国人に短期免許を与えるのは如何なモンかな。競馬も500万下や1500万下を廃止。古馬のクラス落ち制度もなくして“力なき者は去れ”方式、つまり姥捨て政策に突入したが、じゃあ子育て=騎手育ては?。コロナ禍の2年半でさっきの坂井を始め横山兄弟に岩田望来、聖奈ちゃんら女性騎手がフィーバーしたのも外国人不在で騎乗機会が増えたからだと思う。規制なしの騎乗で稼ぎにくる連中を減らしてもらいたいな、俺は」

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源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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