サミットやら猿之助の心中騒動があってもいまだ大谷フィーバーは止まず。といっても大谷を含む日本人のメジャーリーガー報道は“大本営発表”。活躍した時しか放映しない。
「いやぁ驚いたわ。先週の木曜日、18日だったか昼のNHKを見てたら大谷は完全スルー。広島の警戒情報を熱心に伝えてたよ」「ふん。大谷が4―0の日だろ。分かりやすくていいんじゃないの」。親爺の問いかけに遠野が皮肉っぽく応えた。
「サミットだって大成功を連呼しちゃあいるが、具体的な成果と中身はサッパリ。結局はゼレンスキーだけが目立ち軍事支援を約束させられただけじゃん」
「幇間評論家あたりがしたり顔で解説してはいるが林(外務大臣)の『NATOの東京事務所設置を』発言は頂けん。いずれNATOに参加する積もりなのか!。あの安倍だって考えてなかったろう。自民党はもともと“憲法改正”が党是。だから憲法改正を声高に叫ぶのは仕方ない。でもな、“戦争できる国”は党是ではない。NATOが軍事同盟だってことぐらいは権力志向だけがずば抜けている岸田も知ってるだろうが…。戦車から野卑た顔を出しニタニタしてるのを見ると虫酸が走る。<そんなに戦争したいのか>てね」
横山はダービー特集のコラムを何本か任されたらしくまだ来ない。
「そういやぁ『完庶処』の有村社長が言ってたけど、プーチンやバイデンにトランプ、古くはブッシュを見てても『戦争を始める者は戦場にいないー』は至言だな」。親爺、焼酎でかなり酔ってたはずだが要点だけはしっかり捉えている。
「今日はおまさちゃんも来ないみたいだし、早くに仕上がってもいいだろ」と言って親爺が「洗心」を注ぐ。「ありがとう。ところで、これ早速始めたんだ。旨かったもんな」。
「完庶処」のお通し・ゴーヤと玉葱の酢の物だ。
「作り方(レシピと言わない所が親爺だ)は軽く聞いたけど、やはり材料だな。新タマじゃないと甘みがなくていいゴーヤじゃないと硬さと筋がなぁ。まぁ幾つになっても勉強だな」
「社長はこうも言ってたぞ。『せごどん(西郷)は戦争を始めて自ら戦場に出て自死。『賊軍』の汚名を着せられたが、これとて<濡れ衣を干そうともせず子供らが、なすがまにまに果てし君かな――>。勝海舟が読んだ通りで勝つ気で戦争をする積もりはなかった。日本の恒久の平和のために不満士族を結集させただけ。そこが今の陰険陰湿の政治家とは違う。そう思うでしょ』とな」
「うんうん。とのさんが上手に相槌を打つから社長の舌もなめらかだった。『ダービー』は馬券を買うからよろしくとも言ってたなぁ。ああいう人は本気だからおまさちゃん→京子ちゃん経由で俺達の目だけは伝えよう」「親爺は菖蒲と杜若相手にデレっとしてたのに、いやいや大した記憶だ」「酒に飲まれてたら居酒屋の親爺は務まらんよ」。僅かに胸を張ったように見えた。
「完庶処」での思い出話は尽きないが一段落着いたところに「今晩はぁ。ご無沙汰でした」と横山が入ってきた。こちらはニタニタではなくニコニコだ。
「駆けつけ3杯だ!」と遠野が言って酌をし、残った1杯は自分のグラスに。「親爺!前回差し入れしてくれた『男山』頼む」。横山は恐縮の態だ。
「こちらの都合で横山君ハブでごめんね。それはともかく『オークス』取ったんだろ。ルメール取捨の達人だもんな」「ええ一応」と新しい酒をグイと。「どうした?覇気がないなぁ」「はい。レーンにも気が有って」「そっかぁ。本線じゃなかったんだ。終わったことだし深くは聞きません。それより『ダービー』だ」「嬉しいなぁ。久し振りに遠野さんと競馬の話ができるなんて」。再びのニコニコ顔でグラスを呷り真鯛の刺し身を口にした。
「コロナの5類移行にサミット、猿之助の心中と代役騒ぎ…。1ヶ月ちょっと会わない内にいろんなことが起きては消えて」「聖奈ちゃんやまなみちゃんなど女性5人と大河の騎乗停止はまだ続いているし。これが一番の事件だろ」とは親爺。
「その通り。とはいえ今は陽水(井上)の“傘がない”でしょ」。遠野が古い歌を持ち出し、アスパラのロース巻きにかぶりついた。横山は怪訝そうに刺し身を摘まむ。ヤリ烏賊だ。
「横ちゃんが生まれる前の歌。要約するとだなぁ。“都会では若者の自殺が増えた”と新聞。テレビでは“我が国の将来の問題を誰かが深刻な顔をして喋ってる”。いろんなニュースを深刻にタレ流しちゃいるが。知ったことじゃない。今、自分にとって必要なのは“傘”ってこと。彼女と会う予定なのに外は雨。それでも〽行かなくっちゃ 君に会いに行かなくっちゃ。傘がない~。つまり俺達にとって重要なことは『ダービー』で儲けるってことなんだ」
「〽行かなくっちゃ の所に節を付けてくれれば聞いたことあります」「世情を皮肉った名曲だよ。いみじくも発売は1972年。日中国交回復の年ってんだから…。あの頃からテレビも新聞も進化、いや退化しちまった」。遠野が珍しく頭を搔きながら嘆いた。
「ほら!行かなくちゃ。じゃなく“当てなくっちゃ”だろ。とのさんも知恵を出しなよ。俺は『オークス』が終わった時点で決めた。リバティアイランドはキャリア4戦であの強さ。なら今度が4戦目のソールオリエンスで行けると思う。高配当なら相手だな。➂着までの括りで最高戦歴を持ち50過ぎの親父・典弘が乗るトップナイフと武豊のファントムシーフ。もう1頭加えるなら良馬場で負けていないホウオウビスケッツかな」。
いつもは素で名前は覚えてないのだが、何がともあれ「ダービー」。有村社長との約束もあって少しは昔を取り戻さなくてはなるまい。
親爺、いつの間に取ってきたのか「日刊スポーツ」のダービー特集号の馬柱を広げ遠野が言った名前をチェックしてる。
「あ、これはあくまで俺の参考意見、勘も入ってるしな。確率は横山君の正攻法の方が高いから気にしないで。それにさぁ気になる馬が居たら“枠連”でもいいんじゃないの。枠連時代にも『ダービー』で大儲けしたことがある俺が言うんだから間違いない。代役じゃなく代用品だったけど…」
「えっ。それ詳しく教えて下さいよ。親爺さんは知ってるんですか」「いや、初めて聞いた。いつの『ダービー』?」「さ~て。口にしたら味気ない」「けっ。鬼平じゃあるまいし」
源田威一郎
GENDA ICHIRO
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。